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    リノリウム

    @lilinoleilil

    ごった混ぜ
    🐺🦇ですが深く考えないほうがよい

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    リノリウム

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    🐺と👊がフェスで一緒に歌った後の話。

    仲良し煩悩組が種族間の寿命の違いについて向き合う連なった話その1。
    少なくともあと5作は続く。

    各々の寿命の設定については完全に捏造です。
    その他の要素なんかも捏造設定ありきでの創作物なので、細かいところは目を瞑っていただけると助かります!

    #MZMart

    リフレイン・メモリー① スポットライトを一身に浴び空気が震えるほどの歓声に包まれるこの瞬間、少なくとも俺たちだけは、この幸福が永遠に続くのだと心から信じていた。

     ***
     
     キャッチーなオケに乗せ、精巧かつ仕掛け心に溢れたバンドサウンドが会場中を揺らし、煽るようなボーカリストの歌声が皆を熱狂で震わせる。
     とある年の瀬、海に面した音楽フェス会場にて。一夜限りの夢の宴に期待を膨らませる一万人の観客がアリーナとスタンドをすべて埋め尽くし、こぞってステージ上の激しいパフォーマンスに夢中になっていた。
     ここはステージの奈落。二人ほど入れる暗く狭いスペースで、アンジョーとメイカは意識を集中させ自分たちの出番を待っていた。
    「うお、ラスト一曲だ」
    「次だね」
    「へへ、すっげえ燃える」
     骨組みの隙間から射し込む色鮮やかな照明を見遣りながら、メイカは濁さずはっきりと答えた。オレンジ色のライトに一瞬照らされた横顔には、闘志が漲り不敵な笑みがくっきりと映し出されている。
     隣人のその姿が緊張の張り詰める場に不釣り合いなものだから、アンジョーは目を丸くさせ単刀直入に尋ねた。
    「ビビんないの?」
    「何で?」
     いつもの調子を崩すことなくメイカはあっけらかんと答える。
     震い立たせるような力強いバスドラが奈落まで大きく鳴り響き、耳にする者全員の心臓を深く震わせてくる。肌がヒリヒリと粟立つ感覚に逸る気持ちを抑えられず、アンジョーは再度強く問いただした。
    「だって俺とメイカくん、今夜限りのユニットでしょ。しかもサプライズ。客席の反応がどうなのか、全然想像つかなくない?」
    「……ちっちっち。アンジョーさん、それは過小評価ってもんですよ」
     そう言い返しメイカはまたにやりと笑った。その声色は歓喜と興奮を色濃く滲ませている。
    「アンジョーと歌衣メイカ、俺らが出ることは事前に告知してる。ここは決してアウェイじゃあない。それにリスナーのみんなから望まれて誕生したユニットやろ、俺ら?」
    「そうだ……けど。新曲どころかユニットをやること自体もまだ言ってないでしょ。流石にちょっとドキドキしん?」
    「そこは出たとこ勝負、ってことで」
     自分の口から出た根拠のない自信が妙に可笑しく、わははとメイカが口を丸まらせながら砕けたところで、ようやくアンジョーも肩の力が抜け、つられて一緒に噴き出した。
    「メイカくん、ぶっつけ本番に強いタイプ?」
    「人並みくらいには。でも今日は俺だけじゃない。“俺ら”や。ここぞというときのアンジョー砲がありますし」
    「ええ! 俺ぇ?」
    「アンジョーの瞬間火力って言うん? ありゃ誰にも真似できひんよ。爆発するみたいなボーカルもやし、客席の隅から隅まで自分の虜にするそのパフォーマンスも」
     歯に衣着せない褒め言葉の羅列に、アンジョーは慄きながら一言だけ「アザス」とちゃらけた謝辞を述べた。
    「そこまで褒められると恐縮するよ」
    「……それ、天然でやってるならほんまコワイわ」
     誰にも聞かせない程度の小声でごちたところで、落ちサビのテンションに任せたクラップがステージの向こう側から鳴り響く。そして割れんばかりの大歓声が会場全体を覆い尽くした。
    「歌衣さん、アンジョーさん。スタンバイお願いします」と事務的なアナウンスに促され、二人は持ち場で息を整える。
    「行くぜ、アンジョー」
    「一曲目ってアレだよね。バンドソング。泣かせのギターリフから始まる……」
    「そう。第一声がアンジョーのシャウトのアレ」
    「うっわ、ドキドキするな~。メイカくん、後の主旋律んとこはよろしくね」
    「あたりめぇよ。今夜だけは俺ら二人が会場を揺らせまくる。いてこましたれ、アンジョー!!」
    「よっしゃあああ!!」
     暗闇と期待に包まれた会場に、誰もが知っているギターフレーズが鳴り響き、ボルテージが一気に上がっていく。
     歌と歌が激しくぶつかり合い、深く遠くまで共鳴する。今からこの会場をプリミティブに支配するのは、誰もが知り得ない高みへ上り詰めるのは、誰でもない俺たちだ。
     迫り出しから勢いよく大ジャンプし目を見開いた二人を迎えたのは、刹那激しくスパークする特効、そして驚愕と興奮に満ちた観客の大歓声だった。

     ***

    「おつかれっしたーー! カンパイ、アンジョー!!」
    「乾杯。ホンマにおつかれ!」
     時は少し経ち、広いバックステージにて。
     瓶ビールに瓶コーラ、それからケータリングのカレーや揚げ物、麺類等々。長テーブルにご馳走の数々が所狭しと並べられていて、キャストもスタッフも全員幸せそうにありついている。キン、とガラス瓶同士がぶつかる音色があちこちで鳴り響く。
     自分たちの出番を終えたメイカとアンジョーの二人はビールとノンアルビールをそれぞれ片手に、冷めやらない至福を舞い上がる気持ちで振り返っていた。
    「いや~~やったったな」
    「凄かった! お客さんドッカンドッカンで。あぁ、楽しい!」
     ステージ上で浴びた一体感を思い出し打ち震え、声を裏返してまで思いの丈をぶちまけるアンジョーの姿が珍しく、メイカも一緒にケラケラと笑った。
    「何がってまずはあれよ。のっけのアンジョーの超高音シャウト。ほとんどデスボみたいな! あれで会場をガッと掴んだな!」
    「あれめっちゃ緊張したぁ。滅多にやらんから、声が出なかったらどうしようって内心めちゃくちゃ怖かった」
    「ほんまに? スピーカーを破壊しそうなほどのボリュームやったやん。スクリーモバンドのエースよ、ありゃあ」
     あは、とアンジョーは額に伝う汗を拭い、はにかみながらもすぐにこう続けた。
    「でも、メイカくんが隣にいなきゃあのパフォーマンスは出来なかったよ」
    「そうなん?」とはっとした表情で見つめてくるメイカに向けて、感謝の意と心身を満たす充足感を伝えるため、アンジョーは言葉の一つ一つを慎重に選んでいく。
    「メイカくんのハイトーンボーカル、声量もキーも安定してて落ち着くっていうか。一緒に演ってると背中を押してくれる気持ちになるんだ。……あ、ラストの曲のCメロ! めちゃくちゃキー高いのにあんな泣かせるビブラート……沁み入るね。隣でずっと聴いていたい」
     落ち着きを払いながらも心のうちを隠さずに語るアンジョーの瞳は爛々と輝いていて、その口から柔らかく発せられる称賛の言葉が嘘偽りでないことを裏付ける。自分が言及される番になると顔が燃え上がりそうになるな、とメイカは無意識に頭を掻く。
    「バカ照れる、なんか」
    「あとさ、ギター! めちゃめちゃカッコよかった! いつの間に練習してきたん、君も忙しいのに」
    「へへ、上手い人のところへ短期集中で弟子入りしとった。今日のために!」
     メイカは誇らしげに鼻を鳴らし、記録用にと撮影したレッスン風景の動画をアンジョーに見せた。
    「え、モリゾノさんじゃん。やば」
    「マジでやばい。モリゾノさんに追いつきたくって俺も必死やった」
     過去にギターを嗜んでいた時期もあった、と話には聞いていたが。それでも先人に教えを請うだけで、ステージ上から観客皆を魅了させるパフォーマンスにまで到達できるというのか。ならば彼はどれほど血の滲む努力をしたのだろうか。レッスンを始めてからそう長い期間は経っていないはずだ……。
    「……すごいね、メイカくん」とアンジョーは口元を覆う。「歌も楽器も、もちろん普段の配信も。色んなことに臆せずチャレンジして、夢を叶えて、キャリアを着実に積み上げていく。出会ったときから君はそうだ。いくら歳をとっても君の精神は全然変わらない。かっこいいよ。……俺も入れ直さなきゃな、気合い」
     自分にも言い聞かせるように小さな声で呟く。それはまるで渇望であり、羨みにも似ており。
     少しの静寂の後、「……何言ってんだ、アンジョー?」とメイカが不思議そうに首を傾げた。
    「出会ってからたった三年かそこらやろ、俺ら。なんなら年端で言うならアンジョーの方が全然若いやん。いきなりジジくさなってどないしたん」
     ――――酔いが回ったのか? ノンアルコールなのに?
     三度ほど反芻したがメイカの言うことが全く理解できず、アンジョーは行き場のない視線を宙に揺らした。

     
     メイカくんの言う通り、出会ったのは確かに三年前だ。当時の日記にも残しているから間違いない。
    『アンジョーって言うん? よろしくな!』
     初めて出会った時から彼は飾らない表情でよく笑い、友好的な態度で手を差し伸べてくれた。
     それは俺に限った話でなく、老若男女誰に対しても壁を作らず、進んで交流を広げていくのが彼という人物だ。加えて大人数での企画進行も自ら買って出るほどの胆力の持ち主だ。
     だから彼には友人が多いのだろう。コーサカと馬が合うというのにも納得だ。
     一方で自身のスキルアップに余念がない人でもある。普段よく行うトークや麻雀のスキルに留まらず、歌唱力や楽器の演奏技術、企業まで巻き込んだ一大イベントの運営に至るまで。たゆまぬ努力を密かにこつこつと積み重ね、自身のキャリアへ着実に反映させている。
     確か彼は、出会ったときからそうだった。面倒見のよさの中にも大きな野心をギラつかせていた。
     “かっこよくて背中の大きいアニキ”として、ずっとずうっと、俺は彼に大きな憧れを抱いていたんだ。
     
    『コーサカから聞いたけど、アンジョーって歌がめっちゃ上手いんやろ?』
    『上手い、ってほどでは。歌うのが好きってだけで』
    『……好きってだけで、あんな楽器みたいに色んな歌声出せるようになるん? スゴイな自分! まだ中学生かそこらみたいやのに』
     そうだ。三年前のメイカくんは、毛もしっかり生え揃っている、遙か年上のかっこいいアニキで、それは今も全く変わらない。変わらないどころか、持ち前のバイタリティに呼応して進化を続けている。
     かたや俺は、彼に憧れを抱きつつもひそかに、“若い人間の吸収力とアグレッシブさ”に羨ましさのような感情を持ちはじめていた。
     彼は『たった三年』と称した。けれどもそれは俺にとっては凄まじい密度で『気が遠くなるような三年』だった。
     成長痛と声変わりに苦しみ、大人の体を得て都会に飛び出し、サブカルを知り、酒とタバコが毒だと知り、女を知り、自分の歌が武器になることを知り、さまざまなエンターテイナーと出会い。
     紆余曲折、笑うも泣くも数え切れないほどの経験をした。どれもこれも懐かしく、すべて昨日のように思い返せる、かけがえのない思い出だ。
     それをメイカくんは、『たった三年』と言いきった。
     その三年の間に俺は、心身共にピークを迎え、それからして今まで通りだとうまく行かなくなり、衰えによる違和感を明確に覚え始めていった。それこそ力任せに歌を響かせてきた喉が、限界を訴えているような気がしてならないというのに?
     ――――まるで、時の流れ方が全く違うような。
     あっけらかんとした言葉を耳にした瞬間、目に見えないがはっきりとした隔たりのようなものを感じた。


    「……ンジョー? おーい、アンジョー?」
     目の前にひらひらと手を振りかざされ、アンジョーはようやく我に返った。呼びかけに応え視界を正面に向けると、メイカが心配そうに覗き込んでいた。
    「どうした? 間違えてビール飲んじゃったか。休む?」
    「え……いや、大丈夫。ちょっと考え事しちゃっただけ」
    「そうなん? アンジョーが一人で考え事なんて、寂しいもんやなあ」とメイカは言い、手にしていたビールを一口煽った。
    「わ、ごめんて。そんなに時間経っちゃってた」
     宴に水を差してしまったと狼狽するアンジョーをよそに、メイカは意に介さずカラリと答えた。
    「いや、全然。でも楽しんでる最中に突然一人ぼっちにされるのはちょっとびっくりしたなあ」と、ほんのちょっぴり皮肉を交えながら。
     相手に非が全くないものだから、「うう、ごめんよお」と謝り倒すことしかアンジョーは出来ずにいる。
     その姿に根が真面目なやつだな、とメイカは感心する。理屈でなく、彼の持つ空気に安心していた。
    「ほなそのお詫び……ってわけでもないけど。また一緒に歌おな、アンジョー!!」
     高らかな宣言がバックヤード中に響き渡り、その大声に驚いた何人かがこちら側へと振り向いた。何事かと奇異を見るような視線を気にすることなく、メイカは屈託のない目を細めて、くしゃくしゃと満足そうに笑った。
     開けっぴろげの主張を真正面から食らったアンジョーは、その凄まじい迫力に少しうろたえたが、彼の態度からそれが嘘偽りでないことをすぐに読み取り、真剣な面持ちで返した。
    「……メイカくん。俺でいいの?」
    「謙遜もほどほどにしいや、自分。アンジョーやないとアカンから言うてんねん。俺はアンジョーともっともっと色んな歌を歌って、一緒に遊びたい!」
     身を乗り出してまで語る姿は、相手に釘を打ち込みたいという熱がほとばしっている。
    「まああんまり連れ回すと、コーサカが『何で俺も入れねぇんだよ!』ってキレそうやしほどほどに、やけどな」
    「それは確かにそうかも」とアンジョーは肩をすくめ、緊張をほどくようにくすりと笑った。

     
     幼かったかつてのアンジョーは興味本位で手に取った本で、狼男という種族の寿命が長くて二十年ほどだという事実を知った。
     大多数を占める人間と比べ、狼男は歳をとるスピードが三倍以上速く、それは言うまでもなく自分自身にも当て嵌まることだと、物わかりのよかったアンジョーはすぐに理解した。
     理解した瞬間、アンジョーの中に悲しみとも怒りとも言えない激しい澱みが沸き起こっていた。
     皆がいろんな娯楽に興じているそばで、俺一人だけあっという間に老いて見送られていくのだろうか。
     綺麗なロングヘアーをした隣のお姉さんも、歌の教室で一人飛び抜けて背の高いお兄さんも、そのうちあっという間に追い越してしまうのだろうか。
     寿命が異なる以上体感時間も恐らく異なるのだろう。だとすれば友達を作ったとて、皆と思い出や楽しみをまったく同じ感覚で共有することは叶わないんじゃないのか。
     どうして俺だけが、短い時間の中で生きなければならないのだろうか。
     俺だって一人ぼっちは嫌だよ。友達とずっと一緒にいたい。
     それに……コーサカはどうして、俺が狼男だということだけを教えて、肝心の寿命については触れなかったのだろうか。
     コーサカだって見送る側のはずなのに。
     そういえば。俺が狼男だと告げたときのコーサカの表情は、翳りを帯びていて目線がちっとも合わなかった気がする。
     どうしてなのか、どれだけ考えても、どれほど歳を取っても分からない。……分からないならそのままで、不必要に踏み込むべきではないのかもしれない。

     けれども。だとしても。
     音楽に夢中になっている時の充実感や、仲間との共鳴が無限大に広がって震えるあの快感は、嘘なんかじゃない。
     目の前にいる共演者――親愛なる仲間が、自分と同じ表情で陽気に笑っている。心が通うその瞬間を嘘なんかと言わせない。
     違った時を生きていても、音楽を通して繋がる刹那だけは、全く同じ時を生きて、同じ目線で見る輝く光景に同じく感動し、一緒に余韻に浸れるのだ。
     愛おしくかけがえのない一瞬を、アンジョーは一つも逃したくなかった。指の隙間から簡単に零れ落ちていく水滴を、ずっと両手いっぱいに抱えて生きていたかった。
    「サプライズは何度だってあったほうがいい。みんなだってそう言うはずだ。……一緒にやろうね。必ず、また」
     縋る想いで絞り出したアンジョーに向かい、まるで心配するなと語りかけるようにメイカは表情を明るくさせ、「おうよ」と固く拳を握った。
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    Replies from the creator

    リノリウム

    DONE※左右とくに定めてませんが製造元は🐺🦇の幻覚を見がち

    もし🐺の日常が🦇ごと全部ひっくり返ったら?
    イマジナリー兄弟回の🦇一歳弟妄想から着想を得ている
    BLかもだいぶあやしい🐺のサイケデリック話ですが、肉体関係あり前提なので_Bタグです。
    とある木曜日のイマジナリー そりゃあ俺だって一人よりは二人のほうがいいと思うさ。
     一人じゃ抱えきれない強烈な不安が目の前にあったとしても、誰かと折半して互いに勇気づけ合えるならどうにか堪えられる。それに同じ楽しみも誰かと共有できるなら、その喜びは何倍にも膨れ上がっていく。
     〝自分ではない誰か〟という存在は何にも代えがたいものだ。かつての狼のコミュニティでは言わずとも当然の共通認識であったし、東京というコンクリートジャングルに出てきてからもその恩恵に何度何度も救われていた。
     コーサカという男が俺にとってのその最たる存在なのは事実だ。何やかんやでずっといちばん近くでつるんでいる。彼を経由して俺自身も知人友人が増えていく。
     そんな毎日が楽しくて仕方ない。刺激に溢れている。飽きる気もしない。それでいて安心して背中を預けられる。感性が一致している。自分の生き様に誠実だ。言葉交わさずとも深く信じている。
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    リノリウム

    DONE #MZMart

    🦇と🐺の二人が心配で仕方ない🎲の話。
    🚬をちょっぴり添えて。情と義に厚い🎲さんは素敵。
    寿命が違う仲良し煩悩組のあれこれ。連作その3。
    ※各々の寿命の設定については完全に捏造。捏造ありきの創作物として大目にみてください。
    リフレイン・メモリー③ それがたとえ定められた運命だったとしても。大切な友をひとりきりで、時の流れに置き去りにすることなんて出来ない。叶わぬのならせめて、側で寄り添わせてくれ。彼の気が済むまでずっと。
     
    ***

     連休を前に街中はどことなく浮き足立ち、華金の酩酊を今かと待ち望む雑踏で大通りが埋め尽くされている。
     そこから一本入った筋に佇む、青いのれんが軒先に吊り下がっている居酒屋。店主とその女房、お手伝いの三人で営むその店は、手頃な値段にもかかわらず料理の味はピカイチで、それらに合う酒も多数取り揃えられている。普段は人通りも少なく静かだが、今日は流石に常連客で賑わっていた。
     誰にも教えたくない、とコーサカが言い切ったその店に呼び出されたのは、司とホームズのお馴染みのメンバー。店内に一角だけ存在するボックス席を三人で囲み、ようやく運ばれてきたビール片手に小気味よく乾杯した。
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    DONE2023年6月、私は自分のスマホの機種変をした。これはその記録、というより自分のための覚書のつもりだった。
    しかし「二次創作にしたら書いてて楽しいのでら?」
    と思ったので霊幻新隆に機種変させることに。
    結果的に私の機種変の正確な記録ではなくなったけど(コツコツとコピペで移したのはメモアプリではなく、いつも二次創作小説を書いてるPencakeというアプリ。有料版しかデータ移行できん!)良しとしよう。
    霊幻新隆のスマホ道 モブに持たせていたガラケーをスマートフォンに買い替えたのは、モブが事故にあって色々大変なことになった後だ。
     律からは「どうせならiPhoneを」と勧められていたようだが、モブは俺の副回線契約だったので必然的にAndroidスマホになった。(あの頃、codomoはiPhoneは扱ってなかった。というかあんな高いオモチャ、中学生に預けられるか!)
     幸い中古市場もすでに充実していたので、モブには当時の最新のから一年前の機種をほぼ新品で渡すことができた。カメラ機能もガラケーのよりだいぶ良いし音楽や動画も再生できる。中学生には十分だろ。お店の人に聞いてインターネットはフィルタリングかけておいた。あいつもお年頃だからな、当然エッチな言葉で検索もかけるはずだ。俺なんかは国語辞典や広辞苑を開いてエッチぽい単語を延々と調べたものだ。中学は人生で一番辞書を読んでいた時期だ。(お陰でそんな読書しないわりには語彙もそこそこ増えた。)モブが俺の渡したスマホから不健全な情報を得てるとなったら親御さんらに合わせる顔がない。どうしても知りたいことがあるなら正しい性知識の本を用意して読ませてやるからな、ネットでデマや変なこと吹き込まれるんじゃねーぞ、と遠回しに注意してスマホを渡してやったのが10年前、ついこないだのことみたいだ。
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