aumabc
PAST引用知識↓「鬼神が降伏した標にイチイの木で作られた笏を天皇に献上した伝説」
「イチイは長寿・不死を象徴」
「イチイの種や枝葉にはタキシン毒が含まれる」
「イチイとカツラの樹洞内にて蝙蝠糞を発見。しかし調査をすると寝床に利用しているのはカツラの木のみ。」
イチイソレは、突然目の前に現れた。
信頼している最高の相方が、美味しそうに口に運び、当然のように勧めてくる艶のある丹を輝かせた忌々しい実。
ユーダリルにある親戚の家で生まれて初めて目にした美しいスカーレットは、俺の体の奥深くまでその毒の根を下ろした。
「なんで、」
その実を口にしているのか。いや、何故それが我が家にあるのか。
結界が壊された形跡はない。つまりアンジョーが自らこの家に運ばない限り、居間の机に存在することはまず有り得ないわけで、つまり。
お前まで、俺を。
室内にいるというのに悪寒が止まらない。
背中に嫌な汗が伝うのが、考えたくもない思考が巡るのが、止まらない。
こいつは今までのヤツとは違う。俺らは仲間で、相方で、親友で、戦友で、だから。
1000信頼している最高の相方が、美味しそうに口に運び、当然のように勧めてくる艶のある丹を輝かせた忌々しい実。
ユーダリルにある親戚の家で生まれて初めて目にした美しいスカーレットは、俺の体の奥深くまでその毒の根を下ろした。
「なんで、」
その実を口にしているのか。いや、何故それが我が家にあるのか。
結界が壊された形跡はない。つまりアンジョーが自らこの家に運ばない限り、居間の机に存在することはまず有り得ないわけで、つまり。
お前まで、俺を。
室内にいるというのに悪寒が止まらない。
背中に嫌な汗が伝うのが、考えたくもない思考が巡るのが、止まらない。
こいつは今までのヤツとは違う。俺らは仲間で、相方で、親友で、戦友で、だから。
リノリウム
DONE🐺と🦇のいちばん楽しい記憶。寿命が違う仲良し煩悩組のあれこれ。連作その6。
※各々の寿命の設定については完全に捏造。捏造ありきの創作物として大目にみてください。
リフレイン・メモリー⑥ 夢か現かなにもかも曖昧な境界に、俺は立っていた。
隣にはコーサカが居る。長らく使い込んで塗装が少し禿げてしまった黒の棺桶の上に彼は座り、他愛もないことをずっと話している。
ここはどこだっけな。記憶の底にうっすら存在するどこか懐かしい匂い。あるいは忘れたままにしておきたかった苦い経験。喜びも悲しみも、たくさんの思い出がこの部屋にはある。――あ、思い出した。相場より格安で借りれたのに、家賃を稼ぐことに二人して必死になっていた、あの御茶ノ水の2LDKだ。
コーサカが何を喋っていたかは分からないが、ずっとニコニコと楽しそうに笑っていた。
すると突然、何か大きな物体がこちらに向かって落下してきた。ヒュウ、と風を切る音がどんどん近づいてくる。
8755隣にはコーサカが居る。長らく使い込んで塗装が少し禿げてしまった黒の棺桶の上に彼は座り、他愛もないことをずっと話している。
ここはどこだっけな。記憶の底にうっすら存在するどこか懐かしい匂い。あるいは忘れたままにしておきたかった苦い経験。喜びも悲しみも、たくさんの思い出がこの部屋にはある。――あ、思い出した。相場より格安で借りれたのに、家賃を稼ぐことに二人して必死になっていた、あの御茶ノ水の2LDKだ。
コーサカが何を喋っていたかは分からないが、ずっとニコニコと楽しそうに笑っていた。
すると突然、何か大きな物体がこちらに向かって落下してきた。ヒュウ、と風を切る音がどんどん近づいてくる。
リノリウム
DONE🦇の態度がよそよそしくなった理由。④の裏話。これのみ一人称視点です。やっとメイト全員喋ったぞ…!
寿命が違う仲良し煩悩組のあれこれ。連作その5。
※各々の寿命の設定については完全に捏造。捏造ありきの創作物として大目にみてください。
リフレイン・メモリー⑤ アンジョーが倒れてから五日あまりが経った。
インフルエンザとか色々流行ってるね。そろそろ年末年始で病院も閉まるし、俺たちも気をつけないと。アンジョーが三十九度の高熱に倒れたのは、テレビを見ながらそんな世間話をした翌日だった。ほら言わんこっちゃない。噂をすればなんとやらというやつだ。
俺もアンジョーも最初はそう高を括っていた。最初は高熱だけで、アンジョーもぽつぽつとながら喋る元気があった。
けれども丸三日経っても熱が全く引かず、頭痛も併発している様子でなかなか寝付けなさそうでいる。四日目の昼にようやく三十七度五分まで下がったが、今度はゴホゴホと激しい咳を連発し始めた。咳のし過ぎで時折えずくように喉をヒューヒューと鳴らして、苦しそうだ。
8039インフルエンザとか色々流行ってるね。そろそろ年末年始で病院も閉まるし、俺たちも気をつけないと。アンジョーが三十九度の高熱に倒れたのは、テレビを見ながらそんな世間話をした翌日だった。ほら言わんこっちゃない。噂をすればなんとやらというやつだ。
俺もアンジョーも最初はそう高を括っていた。最初は高熱だけで、アンジョーもぽつぽつとながら喋る元気があった。
けれども丸三日経っても熱が全く引かず、頭痛も併発している様子でなかなか寝付けなさそうでいる。四日目の昼にようやく三十七度五分まで下がったが、今度はゴホゴホと激しい咳を連発し始めた。咳のし過ぎで時折えずくように喉をヒューヒューと鳴らして、苦しそうだ。
リノリウム
DONE🐺と🚬のイッパクフツカ旅行記。髪切った白髪が生えた云々は癖です。イケオジっていいよね!
寿命が違う仲良し煩悩組のあれこれ。連作その4。
※各々の寿命の設定については完全に捏造。捏造ありきの創作物として大目にみてください。
リフレイン・メモリー④ 『人間は幾つになっても中学生のところはのこっています』と、先人の残した偉大な言葉がある。
曖昧漠然とした物言いで、それが何のことを指すのか、小さい頃はまったく理解できなかった。
年齢を重ねれば重ねるほど、心身が少しずつ磨り減っていく。善悪さまざまな胸三寸に遭遇し、数え切れないほど傷つき、そのうち万物は絶えず流転すると理解し、理想の生き方を妥協し、自分自身を守ろうとする。そして子供心が一体どういうものだったのか、だんだんと忘れていく。
ゆえに、純粋な幼心を鮮明に描けた瞬間、感動はひとしおというものだ。近いようで遠い、友と呼ぶにはおこがましくも感じてしまう、けれどもずっと大好きな仲間と一緒に分かち合えたら、殊更に。
9824曖昧漠然とした物言いで、それが何のことを指すのか、小さい頃はまったく理解できなかった。
年齢を重ねれば重ねるほど、心身が少しずつ磨り減っていく。善悪さまざまな胸三寸に遭遇し、数え切れないほど傷つき、そのうち万物は絶えず流転すると理解し、理想の生き方を妥協し、自分自身を守ろうとする。そして子供心が一体どういうものだったのか、だんだんと忘れていく。
ゆえに、純粋な幼心を鮮明に描けた瞬間、感動はひとしおというものだ。近いようで遠い、友と呼ぶにはおこがましくも感じてしまう、けれどもずっと大好きな仲間と一緒に分かち合えたら、殊更に。
リノリウム
DONE6周年おめでとうございます!をたくさん込めてパーティーの準備をしたり昼間からのんびりする🐺と🦇の二人
ケセラセラ「ここからどうすりゃいいんだぁ……?」
こぢんまりとした作業部屋に、大音量のパソコンの排気音と溜息のようなアンジョーの唸り声が響きわたる。
27インチのモニターにはびっしりとアイコンが並んでいて、その真ん中には雪だるま型の簡素なオブジェクトが映し出されている。
椅子の上で胡座をかきながらアンジョーは悩む。ここからもっと人間の形に近づけられないだろうか。腕を生やせばいいか、それか先にテクスチャーを貼り付けてみようか。どう作業を進めるべきか、と画面をじっと見つめてみるが、驚くほど何の埒も明かない。
デュアルモニターの右側から、ラフ画の金髪女子がこちらに微笑みかけている。ミディアムボブの彼女は眼鏡の向こう側におっとりした雰囲気を纏わせていて、三面図から女性らしいまろやかな身体のラインが分かる。自らの嗜好をふんだんに取り入れた、我ながらよくできたデザインだと思う。
6913こぢんまりとした作業部屋に、大音量のパソコンの排気音と溜息のようなアンジョーの唸り声が響きわたる。
27インチのモニターにはびっしりとアイコンが並んでいて、その真ん中には雪だるま型の簡素なオブジェクトが映し出されている。
椅子の上で胡座をかきながらアンジョーは悩む。ここからもっと人間の形に近づけられないだろうか。腕を生やせばいいか、それか先にテクスチャーを貼り付けてみようか。どう作業を進めるべきか、と画面をじっと見つめてみるが、驚くほど何の埒も明かない。
デュアルモニターの右側から、ラフ画の金髪女子がこちらに微笑みかけている。ミディアムボブの彼女は眼鏡の向こう側におっとりした雰囲気を纏わせていて、三面図から女性らしいまろやかな身体のラインが分かる。自らの嗜好をふんだんに取り入れた、我ながらよくできたデザインだと思う。
リノリウム
DONE娘ーサカルートの一幕。こうあればいいなという妄想。二年生の夏の思い出。艶やかな浴衣姿の彼女がふと見せる弱みと素直さ。
彼女のギャップを知るのは俺だけでいいんだ。
星花は空に降り注ぐ「……ねえ○○。花火がどうして生まれたのか、知ってる?」
くいくいとTシャツの裾を引っ張られたので隣を見遣ると、思い切り眉間を皺を寄せ口をへの字に曲げる娘ーサカがじっとこちらを見つめていた。
今日は八月一日、皆が待ち望んでいた花火大会当日。
町で一番広い河川敷で毎年開催されている、地域住民に向けた祭りだ。駅から河川敷に続く道路沿いには、かき氷やたこせん、射的といった屋台が二十ほど並んでいる。あくまで地元に根付いた祭りなので、規模こそ大きいとは決して言えないが、ここはとりわけ娯楽に飢えた田舎だ。年に一度の祭りを待ち望んだ町中の人間が大挙し、駅から続く沿道も人という人でごった返している。
今宵の祭りに誘ってきたのは娘ーサカのほうからだった。
5451くいくいとTシャツの裾を引っ張られたので隣を見遣ると、思い切り眉間を皺を寄せ口をへの字に曲げる娘ーサカがじっとこちらを見つめていた。
今日は八月一日、皆が待ち望んでいた花火大会当日。
町で一番広い河川敷で毎年開催されている、地域住民に向けた祭りだ。駅から河川敷に続く道路沿いには、かき氷やたこせん、射的といった屋台が二十ほど並んでいる。あくまで地元に根付いた祭りなので、規模こそ大きいとは決して言えないが、ここはとりわけ娯楽に飢えた田舎だ。年に一度の祭りを待ち望んだ町中の人間が大挙し、駅から続く沿道も人という人でごった返している。
今宵の祭りに誘ってきたのは娘ーサカのほうからだった。
リノリウム
DONE #MZMart🦇と🐺の二人が心配で仕方ない🎲の話。
🚬をちょっぴり添えて。情と義に厚い🎲さんは素敵。
寿命が違う仲良し煩悩組のあれこれ。連作その3。
※各々の寿命の設定については完全に捏造。捏造ありきの創作物として大目にみてください。
リフレイン・メモリー③ それがたとえ定められた運命だったとしても。大切な友をひとりきりで、時の流れに置き去りにすることなんて出来ない。叶わぬのならせめて、側で寄り添わせてくれ。彼の気が済むまでずっと。
***
連休を前に街中はどことなく浮き足立ち、華金の酩酊を今かと待ち望む雑踏で大通りが埋め尽くされている。
そこから一本入った筋に佇む、青いのれんが軒先に吊り下がっている居酒屋。店主とその女房、お手伝いの三人で営むその店は、手頃な値段にもかかわらず料理の味はピカイチで、それらに合う酒も多数取り揃えられている。普段は人通りも少なく静かだが、今日は流石に常連客で賑わっていた。
誰にも教えたくない、とコーサカが言い切ったその店に呼び出されたのは、司とホームズのお馴染みのメンバー。店内に一角だけ存在するボックス席を三人で囲み、ようやく運ばれてきたビール片手に小気味よく乾杯した。
12903***
連休を前に街中はどことなく浮き足立ち、華金の酩酊を今かと待ち望む雑踏で大通りが埋め尽くされている。
そこから一本入った筋に佇む、青いのれんが軒先に吊り下がっている居酒屋。店主とその女房、お手伝いの三人で営むその店は、手頃な値段にもかかわらず料理の味はピカイチで、それらに合う酒も多数取り揃えられている。普段は人通りも少なく静かだが、今日は流石に常連客で賑わっていた。
誰にも教えたくない、とコーサカが言い切ったその店に呼び出されたのは、司とホームズのお馴染みのメンバー。店内に一角だけ存在するボックス席を三人で囲み、ようやく運ばれてきたビール片手に小気味よく乾杯した。
リノリウム
DONE深い森の奥で出会う🐺と嬢の話。REDDの世界観が癖だ!生誕ライブ本当によかった。まだ反芻してる。
嬢が見下ろすポジションなのは私の手癖です。
花弁はけものの頬に落つ チチチ、と小鳥の囀る声だけがこだます、見渡す限りの深い森。
枝葉の陰にいくつか仕掛けた罠を確認するが、そのどれにも獲物はかかっていなかった。それなりに策を講じて仕掛けたはずだったが、どれも見事に空振りだ。成果は何も得られなかった、と虚しさで身体が一気に重くなる。アンジョーは木陰に蹲り、大きなため息をついた。
「見え透いた罠だっていうのかな。……はあ。久しく食べてないな、肉」
懐からリンゴを取り出し、もしゃりと齧り付く。瑞々しい果汁が喉を湿らせていくが、それだけだ。腹はまったく満たされない。血の色と同じ真っ赤で艶やかなフォルムなのに、香りも味もなにもしない。
無味無臭の虚無の前に、アンジョーは半ば諦めたくなってきた。ここ数日間小動物の肉すら食べていない。果実で誤魔化していた空腹は既に限界に達していた。
3405枝葉の陰にいくつか仕掛けた罠を確認するが、そのどれにも獲物はかかっていなかった。それなりに策を講じて仕掛けたはずだったが、どれも見事に空振りだ。成果は何も得られなかった、と虚しさで身体が一気に重くなる。アンジョーは木陰に蹲り、大きなため息をついた。
「見え透いた罠だっていうのかな。……はあ。久しく食べてないな、肉」
懐からリンゴを取り出し、もしゃりと齧り付く。瑞々しい果汁が喉を湿らせていくが、それだけだ。腹はまったく満たされない。血の色と同じ真っ赤で艶やかなフォルムなのに、香りも味もなにもしない。
無味無臭の虚無の前に、アンジョーは半ば諦めたくなってきた。ここ数日間小動物の肉すら食べていない。果実で誤魔化していた空腹は既に限界に達していた。
リノリウム
DONE🐺と🦇が一緒に曲を作ったり感傷に浸ったりする話。新曲っていいよねえ。
寿命が違う仲良し煩悩組。連作その2。
※各々の寿命の設定については完全に捏造です
リフレイン・メモリー② ひとりきりで見るには長すぎる夢も、陽気な歌声と一緒なら慰めには充分だ。終わりない道でも歩み続けられる。今は、まだ。
***
「アンジョーさぁ、本ッ当に馬鹿でかくなっちまったよなあ」
わざとらしいぼやきが部屋中に響き渡るのと同時に、ぱちん、と弾けながらグラスの中の氷が溶けていった。
目の前の課題に没頭していたアンジョーはその大声にただ驚き、意味を汲み取るところまでには至らなかった。
「わ、びっくりしたあ。……俺が大きい?」
「ガキはあっという間にでかくなるから、どう加減すりゃいいのかわかんねぇって話」
相変わらず捻くれた口調でごちるコーサカの意図が分からず、アンジョーは大きく首を傾げる。
「俺が大きくなったのは、コーサカが美味い飯をいっぱい食わせてくれたからだよ?」
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「アンジョーさぁ、本ッ当に馬鹿でかくなっちまったよなあ」
わざとらしいぼやきが部屋中に響き渡るのと同時に、ぱちん、と弾けながらグラスの中の氷が溶けていった。
目の前の課題に没頭していたアンジョーはその大声にただ驚き、意味を汲み取るところまでには至らなかった。
「わ、びっくりしたあ。……俺が大きい?」
「ガキはあっという間にでかくなるから、どう加減すりゃいいのかわかんねぇって話」
相変わらず捻くれた口調でごちるコーサカの意図が分からず、アンジョーは大きく首を傾げる。
「俺が大きくなったのは、コーサカが美味い飯をいっぱい食わせてくれたからだよ?」
リノリウム
DONE🐺と👊がフェスで一緒に歌った後の話。仲良し煩悩組が種族間の寿命の違いについて向き合う連なった話その1。
少なくともあと5作は続く。
各々の寿命の設定については完全に捏造です。
その他の要素なんかも捏造設定ありきでの創作物なので、細かいところは目を瞑っていただけると助かります!
リフレイン・メモリー① スポットライトを一身に浴び空気が震えるほどの歓声に包まれるこの瞬間、少なくとも俺たちだけは、この幸福が永遠に続くのだと心から信じていた。
***
キャッチーなオケに乗せ、精巧かつ仕掛け心に溢れたバンドサウンドが会場中を揺らし、煽るようなボーカリストの歌声が皆を熱狂で震わせる。
とある年の瀬、海に面した音楽フェス会場にて。一夜限りの夢の宴に期待を膨らませる一万人の観客がアリーナとスタンドをすべて埋め尽くし、こぞってステージ上の激しいパフォーマンスに夢中になっていた。
ここはステージの奈落。二人ほど入れる暗く狭いスペースで、アンジョーとメイカは意識を集中させ自分たちの出番を待っていた。
「うお、ラスト一曲だ」
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キャッチーなオケに乗せ、精巧かつ仕掛け心に溢れたバンドサウンドが会場中を揺らし、煽るようなボーカリストの歌声が皆を熱狂で震わせる。
とある年の瀬、海に面した音楽フェス会場にて。一夜限りの夢の宴に期待を膨らませる一万人の観客がアリーナとスタンドをすべて埋め尽くし、こぞってステージ上の激しいパフォーマンスに夢中になっていた。
ここはステージの奈落。二人ほど入れる暗く狭いスペースで、アンジョーとメイカは意識を集中させ自分たちの出番を待っていた。
「うお、ラスト一曲だ」
リノリウム
TRAINING🐺と🦇がバッチバチに魔族バトルしている。喧嘩じゃないよ。欲情もそこまでしてない。バトル描写の練習。まだ本気モードに狂ってる。
(この話の前後にもエピソードがありますが書くかはわからん)
バトルしようぜ! 天に映る裂目を目指し、アンジョーはひたすらに宙を蹴りビルの谷間を突っ切って行く。
一蹴りする度に、黒金色のオブジェが猛スピードで視界へ現われ抜けていく。人とは全く異なる彼のスピードに、風も暴力的なまでに反抗する。頬を撫で付ける風が今やかまいたちのようだ。
目的地である“空”に一メートルでも近づくため、目にも留まらぬ疾駆を繰り返していると、アンジョーはあるはずのない衝撃が足底から全身へと幾度と突き刺さっていくのを感じた。限りなく狼に近い身体でもその負荷に抗うことは難しい、と頭の片隅で思考する。
すると突然、裂目を中心に時が一変する。
緞帳が一気に下ろされると、空一面が真っ赤に染まり、この世の一切が静止した。たった一フレームだけ切り取られたかのように、車道を走る車も人の息遣いもタバコを燻らす炎でさえも、何もかもが凍りつき営むことを止めていた。
4732一蹴りする度に、黒金色のオブジェが猛スピードで視界へ現われ抜けていく。人とは全く異なる彼のスピードに、風も暴力的なまでに反抗する。頬を撫で付ける風が今やかまいたちのようだ。
目的地である“空”に一メートルでも近づくため、目にも留まらぬ疾駆を繰り返していると、アンジョーはあるはずのない衝撃が足底から全身へと幾度と突き刺さっていくのを感じた。限りなく狼に近い身体でもその負荷に抗うことは難しい、と頭の片隅で思考する。
すると突然、裂目を中心に時が一変する。
緞帳が一気に下ろされると、空一面が真っ赤に染まり、この世の一切が静止した。たった一フレームだけ切り取られたかのように、車道を走る車も人の息遣いもタバコを燻らす炎でさえも、何もかもが凍りつき営むことを止めていた。