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    重ーかさねー

    🟦⛓のngroの小説をちみちみと書いてます。

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    重ーかさねー

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    ワンライの再録です。

    脱獄後のhkhの謎時空。(高三くらいをイメージ)
    最後はご想像にお任せします。

    #ngroワンライ再録

    悪魔と天使の運動会 本日快晴。まさに運動会日和である。
    「レオー、無理ーとけるー」
     ……たった一人を除いて。この時期にしては、例年よりも暖かい……というよりは暑く、日差しも強い。後からくっつき虫状態の凪は、暑い、暑いと言いながらこちらに軽く体重をかけてくる。
     そんなに暑いならくっつかなければいいのにと思いつつ、心地よい体温と重みに凪と一緒にいる感じがして口をつぐんだ。
     お手製のレモネードを凪に渡しつつ、プログラムを確認する。今は一年生の大玉転がしが行われているので、あと二種目終わったら昼休みにはいる。俺も凪も午前の参加競技は終わっているのでのんびり観戦モードだ。
     じゃれついてくる凪の手をそっと握り込みながら雑談をしていると、いつの間にか残りの競技も終わったらしく、昼休みのアナウンスがはいる。わらわらと生徒たちが校舎に戻るのを見送りながら「なぁぎ」と後に声をかける。
    「俺、弁当作ってきたんだけど一緒に……」
    「食べる! レオの手作りめちゃくちゃ嬉しい!」
    「じゃあ、教室よってからいつもの屋上行こうぜ!」
     食い気味で返事をしてくれた凪の頭を撫でつつ手を引いて移動を始める。凪は嬉しそうにおそらく自作のお弁当の歌を口ずさみながらついてくる。可愛い。
     教室経由で屋上に行くといつも通り人はおらず、お弁当を広げると手を合わせて食べ始めた。もぐもぐしてる凪が面白くてちょこちょこ食べさしていたら、お返しのあーんがきたのでおずおずと口をあける。恥ずかしくて凪を見上げつつ芋の煮っころがしを口に含むと「ゔっ……」と凪が胸を抑えてこちらを睨んでいたので首を傾げる。
     咀嚼してから凪に声をかけると、肩をガシッと掴まれた。
    「レオ、絶対に俺以外からあーんされても食べちゃっだめだからね」
     と、いつになく真剣な顔で言うので、大人しく頷いた。まぁ、確かにあまりマナー的にはよくないしな。子供と凪にする場合は除いて。
     お弁当を食べ終わった後は、眠いと言う凪に膝を貸しつつ、最近買った電子書籍を読み始める。穏やかな時間を過ごしていると午後の部の開始五分前のアナウンスがかかったため、凪を起こす。
     午後の部の最初のプログラムは紅白の応援合戦のため、そこまで急がなくていいが応援が終ったら、部活対抗リレーがあるため準備がある。ちなみに、凪がアンカー。
     教室に荷物をおいて、俺たちは部室に着替えにむかった。


     部活対抗リレーは俺のバトンを受け取った凪の活躍により一位でゴールできた。部員たちと喜びを分かち合い、凪を撫で回す。後日、焼き肉食べに行くことを約束し、凪をつれて生徒控え用のテントの下に戻る。
     昨今は日差しの強さや、熱中症対策にこういう野外イベントではテントを用いている。
     盛り上がる騎馬戦を観戦しながら凪を構っていると、俺の参加する競技の集合アナウンスがかかったため、凪と分かれて集合場所に向かう。
     俺が参加するのは仮装障害物走。仮装に関しては事前にくじを引いた上で演劇部の衣装係全面協力のもと、オーダーメイドで用意されている。ちなみに、仮装の内容自体は知らされておらず、着替える時に初めて自分の衣装を知るかたちだ。
     一応、競技に支障のない衣装になっているそうだが、過去にクラシカルメイド服や振り袖等あったとのことなので信用ならない。ちなみに、その衣装は柔道部と陸上競技部のムキム……がたいのいい方々が着られたそうだが、色々とすごかったとのこと。色々と。
     障害物走自体は普通で、跳び箱、平均台、昇降台、ぐるぐるバットでゴールとなる。地味に最後のぐるぐるバットが厄介で、立てたバットを軸におでこつけた状態で十周回ってから走るため、一位だった走者が最終的にはビリになることはよくある。なお、綱くぐりがないのは仮装が引っかかることが多いためである。
     醜態をさらさない様にだけ気をつけねばと、気合を入れていると前の競技の騎馬戦が終わったらしく、歓声が響く。入場のアナウンスがかかり、スタート位置に移動する。さて、凪にいいところみせねば。


     結果から言おう。俺は大健闘したと。
     衣装は走りやすい服装だったし、思ったよりもぐるぐるバットで目を回さなかったのでゆうゆうとゴールできた。黄色い声援とかももらったりした。問題は、仮装の衣装である。
     丈が短すぎたっ。衣装自体は天使と無難だったのだが、丈が太ももの半分ほどしかなく、脇のところも広めにあいているので、すごく心許ない。特に、臀部が気持ち短めで少し腰を曲げるだけで太ももの付け根付近までみえてしまう。運営委員の方から下着の丈の指定が入ったときはなにも気にしてなかったが、なるほど、これは指定しないと事故るよなと納得してしまった。
     黄色い声援、時々茶色い声援と常時感じる鋭い視線。仮装は運動会終了までそのままという掟があるため、後二競技をこのまま耐えなければいけないかと思うと精神的にきつい。こういう服装はもっと適任がいるだろうに。
     話しかけてくる同級生や後輩を笑顔で躱しつつ、目立ちにくい場所の椅子に腰を掛ける。仮装障害物走の後は、凪の出場する仮装借り物競争だ。無理難題を出すことで有名な上、こちらは走りやすさを一切考慮しないという。まさに外道。しかも、毎回走者毎にテーマが決まっており、時期も相まってハロウィン系統の衣装が多いらしい。いや、俺の衣装も十分ハロウィンだけど。
     仮装借り物競争第一走者のテーマは日曜朝の戦う女の子たちの三代目シリーズの衣装だった。走者の何人かは泣いていた。お気持ちお察しいたします。
     様々な悲鳴を響かせながら走者はすすみ、ついに凪番がくる。なんとなく、ドクロを背負っているような雰囲気を醸し出している凪に首を傾げつつ、声援を送る。走り出した凪は、颯爽と衣装を手に取ると着替え用のブースにはいる。
     やや時間をおいて出てきた凪は、黒を基調としたシックな服装、頭にヤギの角、背中に蝙蝠の羽、臀部から伸びる黒く先の尖った尻尾。他の人も多少のタイプは違うものの同系統の衣装で作り手の好みが若干わかる気がする。
     少し走りにくそうにしながらも、借り物の紙をとり、中を確認するとこちらにダッシュしてきた。おそらく、俺が貸せるものを引いたのだとは思うが、鬼気迫る速度でこっちにくるので若干怖い。若干。
    「レオ、俺と一緒に来て」
     いいよの言葉も聞かず、凪は俺を抱き上げると即座にゴールに向かい走り出す。周囲にいた生徒たちが一連の行動に何故か拍手したり、お礼の言葉が飛び交わせる。なんで。
    「一応確認して」
     ずいっと係の生徒に借り物の紙を突きつける凪。下ろせばいいのに、俺は未だにだっこされっぱなしだ。監獄の面子の前ならいざ知らず、学校の生徒の前でだっこは恥ずかしいからできればやめてほしい。
    「文句なしです。一位おめでとうございます」
     何故か嗚咽を漏らしながら判定を告げる係の生徒に首を傾げながら、借り物の紙を覗きみる。そこには『七つの大罪または七つの美徳』と書かれていて余計に混乱する。どこが俺なのか全く理解できない。まぁ、クリアしてるからあえて何も言うまい。
     いつまでもだっこしている凪の肩を叩きおろしてもらう。おろす際に若干不服そうな顔されたが、俺だって鍛えてるし結構重いと思うのだけれど。先程のくっつき虫のように後からじゃれつく凪と談笑しながら、他の走者のゴールを待つ。
     余談だが、一番の難題の借り物は『五十年前の初恋』だった。教頭の甘酸っぱい奥さんとの恋物語は涙なしでは聞けなかった。


     全ての競技が終了し、結果発表、閉会式のため集合のアナウンスがかかるが、俺は凪に手を引かれ教室にいた。紅チームの喜びの声が窓の外から聞こえる。
     俺は凪のジャージを腰に巻き付けて、帰り支度している凪の背中を見つめる。閉会式の後はそこで解散となるので、ここで早めに帰宅しても特に問題はないのたが、凪がこんなに手早く動く姿はあまりは見ないのでびっくりしていた。
    「レオ、帰ろう」
     手を差し出す凪の姿は夕日に照らされて、何処となく幻想的だ。人のいない教室というのもあって、まるで悪魔と契約しているみたい。 
     もし、悪魔と契約できるなら凪と……。
     俺は凪の手を握り、帰宅する。玄関を出ると丁度解散の挨拶の声が聞こえ、凪はやばっと小さく漏らすと少し早足でばぁやの待つ正門まで向かう。ばぁやへの挨拶も早々に車に乗り込み、車が動き出すと同時ぐらいに楽しげな生徒たちの声が聞こえて小さくなっていった。
     手を繋いだまま、暗くなり始めた窓の外を眺める。車に乗ってからというもの、先程の夕日に照らされる凪の姿が頭から離れず、正直凪の方を恥ずかしくてみれない。例え隣からじっとこちらを見つめる視線を感じてもだ。
     凪の手が強弱をつけながら俺の手を握り、時折親指で手の甲を撫でる。掌を擦り合わせたり、指の股から側面を磨り上げたりしてくるので、その度に小さく体が弾む。やめさせようと握り込むが、一緒に握り込んでくるのでどうやっても止められない。
     意を決して隣を見上げると、満足そうに微笑む凪の姿。凪は小さく口を開くと俺の耳元で囁く。

     翌日、俺は久しぶりに寝坊した。

     完
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