悠仁はキスが好きだ。
否、僕だって悠仁とするキスは好きだ。シてる最中も、悠仁はよくキスをねだる。自分のタイミングで勝手にしてくればいいのに、悠仁は必ず僕にお伺いを立てるから、結果僕からその甘い唇を迎えに行く。
別にそれ自体に不満はない。甘えてくれる姿は可愛いし、素直に嬉しい。
だから、キスしたいんだなって時の『せんせぇ』は、すぐに察知出来る。触れ合い、顔を離せば、ちょっとびっくりしつつ、照れ笑いを浮かべる悠仁はとてつもなく可愛い。たまに気付かない振りをして、悠仁の口から発せられる『ちゅー』の言葉欲しさに、僕の耳へご褒美をやる事もある。
どちらにせよ、可愛い恋人の一挙一動にいつも僕の理性は試されていた。
「先生、いい加減ちょっと恥ずかしいんですけど」
夕飯を食べ終え、ソファーで寛ぐ横、悠仁がやっと僕を見る。
最初はちゃんと一緒に画面を見てたよ? でも、隣で楽しそうにしながら時折揺れて触れる体温に、まんざらドキドキするのは時間に解決される事でもない。
まともな恋愛が初めての僕としては、好きな子との触れ合いはいつだってドキドキするのだ。
「ねぇゆーじ」
艶を含ませ、名前に湿度を持たせる。
悠仁にも分かりやすくわざと唇を突き出せば、戸惑いつつも、はにかんだ笑顔で距離を縮めてきた。そのままゆっくり瞳を閉じる。しかし欲しかった感触は待ちわびた場所ではなく、擽るように鼻先へと添えられ、見開き飛び込むは悪戯な笑顔。
「ふふ、ひっかかった」
「お前ね」
こんな些細なじゃれ合いさえ愛おしい。でも僕を弄んだ悪い子にはお仕置きが必要かな?
悠仁の意識はもう完全にテレビから僕へと移いみせたのを確信し、僕等はソファーを軋ませた。