「虎杖、お前も制服頼むか?」
「ん? 俺今日破いてないし大丈夫だけど?」
「ああ、それなら昨日丁度五条さんに注文頂いてますよ」
「え、そうなの?」
「ええ、ワンサイズ大き目のものをご要望頂いております」
「なるほど。言われてみれば最近肩回りきつかったかも? 伏黒もそう思ったって事だよな。よく見てんね。ありがとな」
「別に。じゃあ伊地知さん、俺のだけ宜しくお願いします」
「はい、かしこまりました」
バックミラー越しのちょっとしたやり取り。久々に伊地知さんにピックアップしてもらい、俺と伏黒は高専まで送ってもらった。
そこそこ距離があったため、道中報告書をまとめつつ、さっきまでの任務とは裏腹に車内は始終和やかな雰囲気だった。
高専に着くと、負傷ぎみの伏黒は家入さんの所へ。無傷の俺は報告書を出しに職員室へそれぞれ向かった。
「あれ、五条先生じゃん! 珍しいね」
いつもガランとした職員室に、背凭れにふんぞり返って書類を見ている五条先生を見つけ声をかける。
「やあ悠仁。その様子じゃ、今日の任務はおちゃのこさいさいだったって訳かな」
「応、無問題! でも途中二手に分かれたんだけど、伏黒はちょっと相性悪くて今家入さんとこ!」
「そっか」
「そう言えば先生、俺の制服頼んでくれてたんだって?」
「ああ。多分二、三日したら届くんじゃない?」
報告書を差し出せば、紙ではなく手首を掴まれ、あっと言う間に先生の膝の上。
「僕の所為で悠仁のおっぱいが大きくなっちゃった訳だしね」
そう言って先生が俺の胸元に顔を埋めて抱き締めるから、反論したい気持ちはちょっと置いといて、俺も報告書を机の上に置いて先生の背中に腕を回した。
「っは~、最高」
「人を温泉みたいに。もしかしなくても先生お疲れ?」
「癒してくれる?」
ゆっくり顔を上げた先生の唇をちょこんと攫えば、凄い勢いでアイマスクをずらした先生の青が瞳孔をかっぴらく。
「ちょ、怖えって。続きは帰ったらな」
「まったく恐ろしい子に育ったもんだ」
「へへっ。ここだけじゃないからね、先生に育てられたのは」
「んもぅ! ゆーじ大好き!」
二人きりをいい事にじゃれ合っていたら、ピシャリとドアが閉じられた音が響く。
振り返り硝子窓に見えるシルエットは、ツンツンヘアー。
「あ、伏黒⁉ 待って、俺も行く……って先生! ちょっと、もう終わりだって、何どさくさにまぎれて制服の下に手突っ込んで、ちょ、やめ」
折角無傷だった俺の制服は、先生の馬鹿力の所為でボタンがはじけ飛んでしまったのであった。