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    アルミ

    @arumi3aot
    進撃ライベル
    その他

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    アルミ

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    現代AUライベル(ベルトルト不在)
    アルミンやマルコ、その他104期も少しだけ出てきます
    マルコの一人称ですが、公式の場では僕、友達相手には俺を使ってるという見解なので、一人称に拘りがある方はお気をつけください。

    #ライベル
    rebel

    きみのハートに恋してる♡「…ライナー?」
    「よお」
    「あー、その、また来たんだね」
    「隣に座っても良いか?」
    「……僕移動するから、ここの席使っても大丈夫だよ」
    「おいおい、まだ飯の最中だろ?一緒に食おうぜ」
     その言葉に僕は露骨に顔を引き攣らせるが、ジョックは気づいているのかいないのか、つとめて明るく言葉を続けた。
    「お前の隣にいると落ち着くんだよな」
     そう言ってウインクまでしてみせると、この学校の王は食堂の隅で図鑑を開いていた日陰者の僕の隣に腰掛けた。
     人気者の彼の周りにはすぐに人が集まってくる。あっという間に僕とは住んでいる世界の違う人種がこの席を囲み、王を中心に騒ぎ始める。
     それはもう居心地が悪くて仕方なく、嫌な動悸が止まらなかった。

    ✴︎

    「何故かジョックが僕に話しかけてくるようになったんだ」
     結局休憩時間中はライナーやその取り巻きたちが騒いでいたおかげでまったく心も体も休まらなかった。
     僕は、本や漫画、アニメの話ならいくらでもできるし楽しめるというのに。スポーツに恋愛、周りのゴシップや、ヒストリアの家で開かれるパーティーの話なんかを延々と聞かされて、頭がおかしくなりそうだった。
     こんな生活が続くのなら僕は精神に異常をきたしてしまう。生命の危険を感じた僕は、同じゼミ仲間のマルコに相談することにした。
    「そういえば最近よくライナーと話してるよね。何か仲良くなるきっかけでもあったのか?」
    「きっかけなんて何も…思いつかないんだ。急にあんな陽キャに絡まれて、僕はどうしたらいいんだろう」
    「俺もライナーと話したことはあるけど…良い奴だと思ったけどなあ。同期なんだし、そんなに身構える必要ないよ」
    「良い人なのは理解してるよ。彼はそれこそ学校のジョックになれるくらい人気者だし、彼のいるところにもれなく明るい陽キャがどんどん集まってくるから。だけど陰キャの僕からしたらそれは恐怖でしかないんだ。緊張で心臓がバクバクしてくるし…」
    「あはは。じゃあライナーのことは嫌いじゃないんだろ?大勢の人がいて緊張するっていうなら、一度二人だけで話してみたらいいんじゃないか?案外仲良くなれるかもよ」
    「…そうか確かに。彼のこと自体は嫌いとか苦手って訳じゃない。今の状況では困惑が大きいんだ。…彼が僕に近づくのは何か他の目的があるのかも」
    「そう思うなら尚更話をしなきゃ。話してみないとわからないことってあるだろ」
    「そうだね。君の言うとおりだ。ありがとうマルコ。彼と話してみるよ!」
    「何かあったらまた声をかけてよ。俺じゃなくてもエレンやミカサにでもいいし」
     マルコの言葉にうなずき、覚悟を決めた僕はライナーの元へと向かった。
     二人だけで話をしたいんだ、と震えながらライナーへ声を掛けると、彼は驚きながらも嬉しそうに承諾した。そうして僕と彼は、使われていない空き教室の中で向きあった。
    「どうしたんだ?難しい顔をして」
    「単刀直入に聞くよ。スクールカーストの上位に君臨している君が、どうして僕みたいな底辺と関わろうとするんだい?」
    「なんだ急に。それに底辺とか上位って…」
    「上にいる人は気にしないのかもしれないけど、重要なことだよ。目的を何も知らないまま、下の者は上の者と関われないんだ」
     こちらの言葉に納得していない顔をしながら、ライナーは腕を組み、考えるようなポーズを取って見せる。
    「そうだな…ただお前と仲良くしたいからって答えじゃ駄目なのか?」
     本心を見せようとしないライナーの答えに苛立つ。
    「だから!そうなる理由がわからないんだ」
    「じゃあ正直に言うぞ。アルミン、お前と仲良くなって、側に居て、お前に触れられたらいいと思っているからだ」

    …………

     静まり返る室内。
     ドキドキドキドキと鳴る心臓の音がうるさい。
     アルミンは得意の思考をフル回転させても彼の言葉をうまく咀嚼できず、答えを導き出せなかった。というかしたくなかった。
     顔を青ざめさせ、だらだらと汗を流すアルミンに気づいたライナーは慌てて取り繕う。
    「あー、その、なんだ。今のはちょっと語弊が、」
    「スミマセン!スミマセン!僕、もう帰ります!!」
    「あ⁉︎オイ!ちょっと待ってって!」
     瞬時に全てを理解してしまったアルミンは、ライナーを置いてその場から脱兎の如く逃げ出した。

    ✴︎

    「……というわけで、ジョックは、僕の体目当てで近づいて来てたんだ…」
    「うーん?」
    「きっと僕がナヨナヨしてるから、御し易いと思っているんだよ…!怖い怖い怖い」
    「アルミン、落ち着いて」
    「ミカサの言うとおりだ。心臓に響くぞ。また倒れちまう」
     ミカサやエレンによしよしと慰められている中、マルコだけは不思議そうに首を傾げる。
    「ライナーって、ヒストリアと付き合っているんじゃなかった?」
    「は?そうなのか?」
    「え?クイーンビーと恋仲なのに、僕にまで手を出そうとしてたってこと⁉︎やっぱり陽キャなんて信じられない!」
    「アルミン。安心して。私の黒魔術でライナーを呪って、使いものにならなくしてあげるから」
    「ミカサお前、また変なことするなよ…」
    「さすがミカサだ!頼りになる!陽キャのヤリチンなんて僕らが一番嫌いな人種だ!やってしまってくれ!」
    「……うるっさい」
    「うわっ!アニ⁉︎」
    「なんだお前いたのか」
    「アニ、何か用?用がないなら帰って」
    「人の安眠を邪魔しといてよく言うよ…」
     ギャーギャーと騒ぐ声に、横のベンチで昼寝をしていたアニが目を覚ましたようだった。

    ✴︎

    「あのゴリラがアルミンのことを?」
     ことの顛末をあらかた聞いたアニは、怪訝な顔をしてぽつりと呟いた。
    「……全然似てないけど、まあそういうこともあるのかもね」
     アルミンをまじまじみつめた後の意味深なアニの発言に、アルミンは目敏く食いついた。
    「アニ?もしかしてこの状況を打破できる何か知っているのか?もしそうなら、助けて欲しいんだ」
    「え?あんたが今話したことってそんなに大層なことなの?私には何のメリットもないし…本人に直接嫌だって言えばいいだけでしょ」
    「また直接話になんて行ったら、次こそアルミンは無事に帰って来れないかもしれないだろ!」
    「そんな、いくらゴリラでも取って食ったりはしないよ…多分」
    「アニ。お願い、方法があるなら教えて」
    「…アンタ、さっき私に帰れって言ってなかった?」
     アニはハァと面倒くさそうにため息をつく。
    「あんたら、私がそんなお人好しの良い人に見えるわけ?」
    「アニがここで俺たちを助けてくれたら、俺たちにとって良い人になるよ。同期のよしみでアルミンのこと助けてくれないか。本当に困ってるみたいなんだ」
    「マルコまで…」
     アルミンやエレン、ミカサだけでなく、マルコにまで頭を下げられたアニは唇を噛む。
    「た、頼むよアニ…僕ストレスで…これ以上心臓に負担をかけられたら…しんじゃう…」
    「アルミン!」
     アルミンはそう言うとその場にへたり込んでしまった。エレンとミカサが血相を変えて駆け寄り、アルミンのことを支える。
     その様子を見て「心臓…」と呟いたアニは顔に暗い影を落とした。…そういうことか。合点が入ったアニはついに折れて、語り始めた。
    「……いいよ。私が知ってることなら、教えてあげる」


    ✴︎

     日曜の早朝、教会の中、重いドアがぎいと開かれる音にライナーは振り返る。
    「…アルミン?」
    「やあ、…ライナー」
     開いたドアの前にアルミンが立っていた。
    「日曜日はいつもここにいるって、アニから聞いてね」
    「アニと仲が良かったなんて初耳だな」
    「僕も、君がこんなに信心深い人だとは思ってなかったよ」
     週末は毎日パーティーで、日曜の朝なんて昼まで寝てるようなタイプだと思っていたから、なんて正直に言うとライナーは笑っていた。
    「信心深いとはちょっと違うんだがな…」
     寂しそうに言葉を切ったライナーの隣にアルミンは腰掛けた。
     隣に座ったアルミンには顔を向けず、ライナーは謝罪の言葉を口にする。
    「…この前は悪かったな。二人で話した時、あんなことを言っちまって、気分を害しただろ」
    「え?あぁ…あの時はビックリしたけど、その、今は大丈夫。それに、僕も話の途中で逃げちゃってごめん」
     アルミンはひとつ深呼吸をしてから言葉を続けた。
    「……それで、今日僕がここに来たのは、あの時の君の話の続きを聞くためなんだ」
     そうしてチラリとライナーの方を見るが、未だライナーがこちらに顔を向けることはなかった。
     沈黙が続き、アルミンはゆっくりと立ち上がる。
    「…まだ僕には言えないみたいだね……また来週ここに来るよ」
     そういって踵を返し、ドアノブに手をかけたところで、小さくライナーが話し始めた。
    「……俺が毎週ここに来るのは、少しでも許されたいからなんだ」
     振り返ると、学校では見たことのないような弱った顔で贖罪を求めるライナーと目が合った。
     きらきらとした王なんかではなく、こちら側と何ら変わりないひとりの普通の人間に見える。
    「……俺だけが助かったんだ。あの時、どうしたら良かったか。どうすればアイツを守れたのか。ずっと考えちまうんだ」
    「……」
     アルミンを見ているようで見ておらず、どこか遠くを見つめながらアルミンの知らない話をぽつぽつと語っている。
    「日が経つにつれて忘れていってるんだ。アイツの声も、匂いも、体温も、眼差しも。何にも感じなくなって思い出せなくなっていくのが、怖いんだ」
    「僕は、」
     震える声で語ってくれたライナーの言葉を聞き、アルミンも緊張した声音で話し始める。
    「話したことも顔も見たことのない人だけど、僕は命の恩人の彼にずっと感謝してる…でも彼の友だちの君が、そんな顔をしてたら、居た堪れなくなるよ」
     ライナーは黙ってアルミンの話を聞いている。
    「彼だってそうだ。今の君を見たら彼はずっとずっと後悔してしまう…なんで君を置き去りにしたんだろうって。だから、君にとって彼が大事な人だったのなら尚更、生き残った僕らは…彼に生かされた僕らは、胸を張ってこれからの人生進んでいくしかないんだよ」
     アルミンは項垂れて座り込むライナーの元へ歩み寄り手を差し出した。
    「……立ってよ。ライナー」
     ライナーが顔を上げた。目を見開き、幽霊でも見ているかのように顔色が悪い。
    「ここでお祈りするのもいいけど、耐えられなくなったら、僕に…いや、彼に触れたらいい」
    「…………いいのか」
    「……頻繁にされたら困るけど、たまになら」
    「…………ありがとう、アルミン」
     差し伸べられたアルミンの手を、ライナーは掴んで立ち上がる。
    ……記憶に残る〝アイツ〟のとは違う小さな手。
     そうして立ち上がったライナーは、アルミンの左胸へと自身の手を添えた。
    「…………動いてる」
    「……うん」
    「……生きてる」
    「……うん。彼のおかげだ」
     ライナーはそのまま僕の左胸へと彼の耳を押し当てるとずるずるとしゃがみ込んだ。
     僕が着ていたシャツは、ライナーがぼろぼろと流す涙に濡れてしまったが、そのままにさせておいた。


    「     」


    ✴︎

     
     後ろから轟音と誰かが叫ぶ声が聞こえ、振り返ると暴走したトラックが迫ってくるのが見えた。
     俺の後ろを歩いていて、一瞬早くその状況を理解したアイツは、咄嗟に俺のことを押し退けたのだ。

     ――怒号と悲鳴の響く中、俺は見失った彼を探した。彼と同じ服装の人が倒れているのを見つけ、助け起こすために駆け寄った。だがそのひしゃげた頭や変な方向に曲がった腕や脚を認識した途端、目の前が暗くなって、何の音も耳に入らなくなった。

    ……ご家族の方以外のお立ち入りは規則で禁止されて…

    ……遺体は損傷が激しく、ご覧にならない方が良いと…

    ……臓器提供のご協力ありがとうございました。


     ドナー登録をしていたという彼の臓器が、誰かに移植されたという話を聞いた。

     葬儀と埋葬が終わって、もうこの世に彼は存在していない。そんな絶望の淵に立たされていたライナーは、まだ彼の心臓だけはこの世に存在しているのだと知った時、嬉しくて涙が出た。

    ――ずっと、ずっと、探していた。やっと、見つけた。


    ✴︎


     ……確かに僕は心臓が悪くて、昔、心臓の移植の手術を受けた。
     その移植された心臓が、彼のものかどうかは誰も分からない。少なくとも僕は知らない。
     そういった情報は開示されない決まりだった。
     僕の胸に残った手術の痕、それをたまたま見かけたライナーが何を思ったのか。
     ライナーは、ベルトルトの心臓を探し続けているらしい。二人の幼馴染の、アニから聞いたことだった。
    「…………ベルトルト……」
     未だ僕に縋り付き、彼の名を口にするライナーに、真実を話すことなんて僕にはできなかった。
     それでも僕の身体の中の誰かの心臓は、どくんどくんと鼓動を刻んでいる。
     ……彼が呼びかけるたびに。返事をするように。力強く。


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