②雨天、横並び、一歩半 今宵も天は暗く、雲が厚く覆い被さっている。
降り続ける雨は辺りの音を掻き消し、景色がぼやけさせ、まるで世界に一人で立っているような錯覚に苛まれる。
「……」
震える片手を抑え込む。これは暫く止まないのだろうな、そう考えながら家路とは反対の方向へと足を向けた。
夕方から続いている雨が草木を揺らす音に視界を上げる。
傘越しに見える景色は相変わらず薄暗く、まるで深い森の中に迷い込んだかのようだった。
此処がどこかと問われれば、町外れにある自然公園だ。彷徨っている内に敷地内に潜り込んでいたらしい。足を動かす度に整備された硬いコンクリートとぶつかる音が雨音に混じって聞こえる。
一本道に沿って周りは自然豊かに樹木が生い茂り、少し視線を横にずらせばどこまでも走り回れそうな広い原っぱが広がっている。
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