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    随分とサボってしまった...ここから第二章〜Eden出会い編〜真面目に書く!!!

    #ひよジュン
    Hiyojun

    九尾の日和と人の子ジュン「うわぁ〜。雰囲気のある社っすねぇ。」
    某日、日和とジュンは凪砂の手紙にあった———日和が昔住んでいた社に来ていた。日和の話では村のはずれにあった社と聞いていたのだが、近くに人の住む気配はなく、社自体も苔が生えつき、鬱蒼と茂る木々が重々しい雰囲気を醸し出している。本当にここに人(正確に言えば人ではないが)が住んでいるとは考え難い。
    隣に立つ日和は先程から一言も話さず、自慢の尻尾もぺたんと地面に着いてしまっている。出かける前に入念にブラッシングしてやったのだが、これは帰ってからまたブラッシングを要求されるなとジュンは小さく息をついた。
    「おひいさん。大丈夫ですって。相手の方も会いたいって連絡してきたんでしょう?ほら、いきますよ。」
    「・・・うん。」
    頷いたのを確認して日和の手を引いて歩き出す。社の中にはどうやって入れるんだろうかと考えながら、なんとなしに右方向へ進んでいくと、くいっと日和に繋いだ手を引かれる。
    「こっちだね。」
    どうやら右か左か半分の確率を外してしまったらしい。踵を返して左へと向かうと、すぐに入口が見えた。入口は引き戸になっていてジュンの語彙では到底表しきれないのだが、社の他の場所とは全く違った印象で、例えるなら空気が澄んでいるとかそういう類の場所だと思った。

    「入っちまっていいんですかね?神域?ってやつでしょ?おひいさんはともかく、オレは呪われちまったりしませんかねぇ?」
    「大丈夫だね。・・・というか、ジュンくんは御本の読み過ぎだね。入ってきたくらいで神さまは人を呪わないよね。それは人が勝手に作った、いわば"設定"だね。まぁ、そのお陰でぼくたちは居所の中までは荒らされずに済んだんだけど。それでも、そんなに心の狭いものだと思われているのは心外だね。」
    うわ、こえぇ。美人の真顔は怖いって燐音先輩がこの間遊びに来た時に言ってたけど、まさしくこの事っすねぇ。と、感想が声に漏れ出なかった代わりにごくりと息を呑む。あまりの緊張で表情の抜け落ちた日和がつらつらと話しだすとやはり迫力がある。

    「やぁやぁ!ようこそいらっしゃいました!お客様を招くなど、初めてと言っていい程の一大行事でありまして!お迎えにあがるのが遅れてしまって申し訳ない限り・・・ああ、申し訳なさで地面に減り込んでしまいそうです!おっと、失礼。どうぞ、中で閣下がお待ちです。」

    スパァン!と勢いよく開いた扉からこれまた勢いよく飛び出してきた青年がその勢いのまま、たっぷり20秒ほどを使って大袈裟に語り出したのを日和とジュンは驚きで動かなくなった瞼を閉じる事もできずにただ見つめ、話し終えた青年がこちらの出方を伺っているのか貼り付けた笑顔をキープし続けること約5秒。瞼とともに開きっぱなしだった口を閉じた勢いで発声する。

    「・・・誰っすか?」
    「知らないね。」


    青年は見事な敬礼と胡散臭い笑顔で名を「七種茨」と名乗った。名乗られたならこちらもと自分の名前を言おうとすると「巴日和殿下と人間の漣ジュン氏ですね!勿論、存じておりますとも!ささ、そんな事より中へとどうぞ!」とあしらわれた。なんだよ「人間の漣ジュン氏」って。いけすかねぇ奴。とジュンがむっすりしていると隣の日和からもイラっとしたオーラが感じられた。・・・緊張してても腹はたつもんなんすねぇ。

    小さく「お邪魔します」とお辞儀をして中に入ると、そこは社の外観からは考えられないほどに広く、優美・・・優雅・・・いや、ジュンがこれまで本で得てきた語彙では語れないほどに美しい場所だった。てっきり神社なのだから和風だと思い込んでいた内装はアンティーク調の洋装で落ち着いていて、昔、絵本で見たお城みたいだと遠い記憶が呼び起こされた程だ。
    ジュンが目に入るものひとつひとつに驚いていると、隣で大きく深呼吸した日和が繋いだ手を離して意を決したように奥へと進んで行く。「おひいさん」と漏れ出そうになった声を邪魔しちゃいけないとぐっと呑み込んで、日和の後に続く。———いや、足が動かない。脳は確かに動けと伝達しているのに、まるで何かに縛られているかのように動かせない。ならばと、今度こそ「おひいさん」と呼ぼうと口を開いたが声も出ない。

    待って、置いていかないで。どうして、なんで動かないんだ———!!はっと気配を感じて自分の足に視線を落とすとそこには白蛇がジュンの足を締め付けるように這っていた。ジュンの思考が半ばパニックに陥りかけた時、ねっとりと獲物に擦り寄る蛇のような雰囲気と共に声がかけられる。
    「貴方はこちらでお留守番です。ジュン氏。」



    「・・・日和くん?」
    あぁ、この声。ぼくが突き放してしまったのに焦がれて止まなかった声。
    「凪砂くん、」

    銀髪の麗しい、凪砂と呼ばれた青年は座っていた椅子からゆっくりと立ち上がると、そのままのスピードで日和の元へと進む。間もなく触れられるかといった所で右手を伸ばした凪砂に日和が深く頭を下げる。
    「凪砂くん、ごめんなさい。ぼくはあの時、恐怖に駆られて何よりも守らなきゃ、大切にしなきゃいけなかったきみを置いて逃げてしまったね。・・・ぼくが、もう一度きみに会いたいだなんて、そんなこと願っていいはずがないのに・・・!!それでもっ、ぼくはきみに会いたかった」
    日和が言い切るのを待ってふわりと凪砂は日和を抱きしめる。
    「・・・日和くん、きみは何も悪くない。あの時、最優先されるべきだったのは私ではなくて君の心。・・・私は、君が無事でこうして生きていてくれてることが何よりも嬉しいよ。」
    「凪砂くんっ・・・」
    数百年の時間を埋めるように二人は強く抱き合った。

    「・・・そういえば日和くん、とても良いパートナーを見つけたみたいだね。ふふ、ジュンっていうの?私も会ってみたいな。」
    「勿論!凪砂くんにあって欲しくて今日も一緒に来てもらってるね!ジュンくん、彼が凪・・・あれ?ジュンくんどこに行っちゃったの?」



    「だぁ〜っ!うぜぇ!なんなんすかこの蛇!ちょっと茨ぁ、アンタの仕業でしょう?解いてくださいよこれ!」
    「あっはっは!そんなに強い式ではありませんのでジュン氏の力で解いていただいて構いませんよ!」
    「だぁ〜かぁ〜らぁ〜!そんな力ねぇって言ってますよねぇ?!アンタの耳は飾りか何かなんですか?!」
    「ご名答!本来、蛇に耳はありませんので、人間の姿でいる時の"耳"は飾りのようなものですね!まぁ、振動を使って感知する為、ジュン氏のような人間よりは優れているはずですがね!」

    「・・・ふふ、はしゃいじゃって。よっぽどジュンと会えたのが嬉しかったのかな?かわいいね、茨。」
    日和と凪砂が部屋を出て一番手前の客間まで戻ると、そこにいたのは白蛇に身体中を締め付けられたジュンとその隣で愉快げに笑っている茨だった。
    「え、かわい?!・・・って言ってる場合じゃないね!この毒蛇!ジュンくんを離しなさいっ!」
    翳した日和の手から放たれる光りにジュンを締め付けていた白蛇がパラパラと紙になって床へと落ちていく。日和はそのままばたばたと客間を駆けて急に締め付ける力が無くなり、バランスを崩して倒れかけたジュンを抱き留める。
    ジュンくん大丈夫?!と、身体中を今度はぺたぺたと日和に触診のように触れられるのを大丈夫なんでとやんわり断って立ち上がる。先程まで自分を使って大層楽しそうにしていた茨はどうやら今度はかわいくない!撤回しろ!と凪砂に噛みついているようだ。ジュンはやれやれと振り返って日和の顔を確認する。どうやら憂いごとは解消されたようでここに来た時よりも幾分か顔色がよくなっている。———よかった。少し前までのジュンなら、日和と凪砂の会合をここまで喜べなかったかもしれないが、日和の過去を聞いてから今日まで散々愛されて愛を囁かれて、自分に向けられた重すぎるくらいの愛情をしっかりと受け止めた今、この状況を心の底から喜べた。
    「おひいさん、よかったですね。」
    柔らかく微笑むジュンに照れくさそうにはにかんだ日和が頷く。

    ふわっと日和の尻尾が揺れた。
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    パイプ

    PROGRESSひジ
    怪我をしたジュンくんが今と過去の怪我をとおして日和からの愛を自覚する話。途中。とても途中だけど、長めのお話は連載形式にしないと筆が進まないマンなのでぽい
    怪我の功名、愛に触る「ねぇ、ジュンくん。ぼく、怒ってるの。だからね、」
    今日からその怪我が治るまで、ぼくが君のお世話をしてあげるから存分に反省するといいね。


    とあるバラエティ番組の登山企画で手を滑らせた共演者を無理な体制で庇ったジュンは右手首の筋を損傷してしまい、技師に誂えてもらったサポーターをつけて最低でも一ヶ月の安静を言い渡された。
    Edenとしては新曲のフリ入れ期間でもライブ前のレッスン期間でもなかったし、個人としても冬の寒い時期は身体を張った企画はそう多く入ってこないので、仕事で迷惑をかけることは少なく済んだのが幸いだったのだが、右手首を動かしてはいけないというのは日常生活において不便なことばかりだ。
    医者には痛みは徐々に引いていくと言われているものの、昨日怪我したばかりのそこは未だにうっすら熱を持ち、ジクジクと痛みを訴える。身体が動かせないのだから英語の勉強をしようとペンを持っても指への力の入れ方次第では手首まで痛んでしまうのだからもうお手上げだ。
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