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    エリンギ

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    エリンギ

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    フォロワーさんとの記念で書かせてもらいました!
    🐯(25)×🐶(10)のパロ
    🐯が🐶を監禁する話(メリバ?)
    監禁にしてはぬるいので温かい目で見てください。

    #虎トウ

    狭い部屋と幸せの話ストックホルム症候群
    誘拐や監禁などにより拘束下にある被害者が、加害者と時間や場所を共有することによって、加害者に好意や共感、さらには信頼や結束の感情まで抱くようになる現象。

    刑法224条 未成年者略取及び誘拐。3か月以上7年以下の懲役。未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3ヶ月以上7年以下の懲役に処する。






    「また会えたなトラ。」
    「トウマ…。」
    「一緒に帰ろうよ。」
    「トウマ、俺は、」

    弧を描く唇をただ眺めるしかなかった。






    ──自分の存在価値とは何なのだろうか。御堂虎於とは、何なのだろう。
    産まれた時から周りに愛されて、可愛がられていた。家の末っ子で、ある程度容姿も整っていたのだから周りが余計放っておかなかった。自分の容姿についてはそこまで意識はしていなかったが、学年が上がるにつれ、家や親族だけでない他人と関わるようになってから認識した。父親に言われていた言葉がようやく分かった瞬間でもあった。

    大切なのだから危険なことはするな、その趣味は似合わない。俺へ向けられる言葉は俺を思っていたものだとしても、俺にとってはただ苦しくて辛い縛る言葉。飼い殺されているなんて、誰が言ったんだろうか。それすらも思い出せない。

    鬱屈した毎日、ぼんやりとした思考。だけど周りは変わらない。胡乱な目を向けている俺に気がつくことも無い。誰も俺を見ていないんじゃないか?

    「──!…──!」
    「──!!」

    何処からか怒号と悲鳴の混ざった声が聞こえる。気の所為であろうと思えば思うほど、歩みを進めれば進めるほど耳を劈く。気の所為でもない、現実のことが目の前で繰り広げられている。
    目の前で幼い男の子が男に腕を引かれている。癇癪を起こした子供への躾…には見えないし、躾だとしても行き過ぎている。その事に対して自分も何か思えるんだから、まだ、大丈夫だ。
    2人の傍に寄ると、幼い男の子の濡れた眼差しが自分を射抜いてきた。助けを、求められている。俺を、求めている。
    そう認識した瞬間、自分はこんな力を発揮できたのかと思うくらいに強い力で男の子を掴んでいた男の腕を捻りあげていた。呻き声と共にその場に崩れ落ちた男を尻目に、男の子を担いでその場を離れる。

    息が苦しくなるくらいに、肺から全ての酸素が無くなるくらいに走り抜ける。抜けた先の人気のない公園まで来たところで漸く男の子を下ろす。何故かイケナイコトをしたような気分になり男の子と目を合わせられないでいると、高い声が下から聞こえてくる。


    「お兄さんはヒーローみたいだ!」

    涙で潤んだ瞳は夕焼けに照らされてキラキラと輝いていた。声色に恐怖なんてものはなく、憧れが滲んだような、喜色を帯びたモノ。鬱血してしまった腕を擦りながらこちらを見上げてくる。

    「これ?だいじょうぶだよ。慣れてるから。」

    そう言って笑う瞳は先程までと違い憂いを帯びていて、表情は何処か大人びて見えてしまった。本当に幼い子供なのかと錯覚してしまう。赤みがかった瞳が臙脂色の髪の隙間から見える姿に、一瞬だけ見せたその表情に、魅入られたのか目の前から立ちされない。この子も立ち去ろうとしない。

    「お兄さん、名前は?」
    「御堂、虎於…。」
    「虎だなんてカッコイイな!」

    さっきまでの顔とは違う、またキラキラした幼い顔を魅せる。表情が、変わる。ニコニコと楽しそうにしている純粋な様子に、この子なら俺の話を聞いてくれるのだろうと思ったのか、紡がれた言葉は、




    「お兄さんの家、広い。」
    「まぁな。」

    働く為にさすがに一人暮らしをしたいと思い、住むことになったマンション。不動産関係に強い親族から与えられたソコは、環境が整いすぎていて住みにくい。それでもこの広い自宅にたった1人でも招き入れたという事実に震える。この子は、見てくれるのだ。

    「お兄さん、」
    「名前で呼んでくれ。」
    「虎於さん、今日はありがとう。」

    にこやかに笑いながら、自分の服をいきなり脱ぎ始める様子に驚愕してしまう。上半身だけ裸体を晒しながら微笑む姿は幼さなんてものは微塵もない、あの時見せたような大人びた表情と妖艶に笑う姿。しかしそんな顔とは裏腹にやはり顔の作りも体つきも子供であるし、身体中には、

    「火傷のような…痣…?」
    「虎於さん、変だと思う?」

    そんなことはない。これはこの子が今まで頑張ってきた証なのだろう。火傷と痣だらけの身体を見せながら、今度は悲しそうに歪んだ表情を魅せる。本当に、この短時間で色んな顔を見せてくれる。

    「お前は俺が守るから。」

    今までされてきたことを思い、そっと自分の上着を掛けて抱きしめる。嬉しそうに笑う姿はやっぱり幼いものだった。言動や表情が時々大人びていても、やはりまだ幼い子供なんだ。

    「虎於さんはヒーローだ!」


    身体の痣や火傷の痕は酷いものであったが、それでも性暴力の被害はないようだ。その事実に何処か安心めいたものを感じる。汚されていない身体を、心を自分が汚してしまわないように注意を払わなければ。




    それからの日々は穏やかで幸せなもので。トウマは俺に何かがあれば優しく話を聞いてくれる。肯定してくれて、俺の欲しい言葉をくれる。トウマが俺を撫でてくれる手が心地よくて、トウマが紡いでくれる幼さの残る声が愛おしくて、トウマと過ごす日々が幸せだ。

    「トラ、大丈夫だよ。俺がいるぜ?」

    いつからか呼んでくれるようになった、特別な愛称。最初はなんだと思ったが、その音は他には無い音だから、心地好く感じる。
    トウマの身体もあれから徐々に癒えて行くことにも安心する。火傷の痕も暴力が見える痣も薄くなっきている。正しい手当は何かを模索しただけある。

    トウマはずっと俺を見てくれている。あの日見えた憂いを帯びた瞳はもう見せない。俺がトウマの拠り所になれているのだろうか。あぁ、いや俺の拠り所がトウマなのかもしれない。
    トウマは俺が出かける時も大人しく待ってくれている。出ていきたいだなんて言わないでいてくれる。本当はどう思っているか分からないけれど。時々窓の外を見つめているけれど。

    今日もおかえりと言ってくれるから、別に構わないよな。

    「トラと一緒にいるのが幸せだから。」

    本当にそう思ってくれているのだろうか。憂いを帯びた瞳は見えなくなっても、いつ来るか分からない痛みに怯えての言葉ではないよな?でも、トウマはそんなことは思わないから大丈夫だ。

    「トラがくれたこれ、すっごい大切にする。」

    トウマの細く白い首に似合う、俺のものという証が部屋のライトで鈍く光る。風呂の時だけ外すそれは、俺とトウマを繋ぐもの。

    「トラ、風呂に入ってもいい?」
    「いいぜ?今日はトウマの好きな入浴剤を入れてやる。」
    「やった!」

    トウマが風呂に入っている間に、トウマの好物を用意する。肉料理が好きだから、今日はハンバーグにしよう。良い肉が実家から贈られてきたから、トウマに食べてもらいたい。こういう時に家から贈られる物を使わないテはない。
    挽肉にする為に包丁を取り出し、肉を刻んでいく。どうせだから肉々しい方が食べ応えもあっていいだろう。少し大きめに刻んでいく。
    粗方切り終わったところで繋ぎと混ぜ合わせて形を整える。トウマはきっと大きい方がいいだろう。食べ盛りなんだ、沢山食べて大きくなって欲しい。出会った時と比べて肉付きも良くなってきたしな。
    全て丸め終わり、フライパンで焼いていく。肉の焼ける匂いに食欲が唆られる。

    「トラ、良い匂いする!」
    「こら、髪をしっかり拭いてこい。」
    「へへ、トラ拭いてよ。」
    「仕方ないな。…拭き終わったら、出来上がるまでいつもの場所で待ってろよ。」

    肉の焼けるまでのわずかな時間だがトウマの髪を拭いてやる。小さく丸い頭が可愛いのだ。トウマのおかげで、今までの自分が報われているように感じる。俺が俺のままでいていいように感じる。幸せな、毎日。


    は、簡単に壊れる。


    さらに月日が流れた時、自宅のインターホンが押される。トウマに腕枕をしながら添い寝をしている時だ。起こさないようにそっと腕を抜き取り、玄関を開けるとそこに居たのは、

    目の前で繰り広げられる光景をただ眺めるしかなかった。世界が、モノクロに変化していく。

    「俺はトラの味方だからな。待ってる。」



    ▷▷



    長い年月を1人で過ごしたおかげで、過去の過ちを後悔することができている。あの時の甘美で、蕩けるような穏やかな時間はもう手に入らないが、きっとトウマにとってもそれが良かったかもしれない。もしかしたら身体の傷は癒えていたかもしれないが、知らない男に監禁されるというものは恐怖にしかならないだろうし。
    俺はトウマに暴力行為やわいせつ行為を働いていなかったがもちろんのこと法の下に裁かれた。
    こんな犯罪者の俺に対して、流石の実家も縁を切るのではないかと思えば、擁護するような内容の手紙を送ってくるのだからどうしようも無い。いっそ非難してくれればどんなに楽だっただろうか。出所したら実家に帰ってこい、やはり一人暮らしは良くなかったんだ。そんなこと無いに決まっているのにな。誘拐事件なんてテレビで報道してしまうものなのに、一切なかったらしい。トウマの親も万が一暴力をふるっていた事を世間に知られたら不味いと思って、両家共に報道を取り下げるように動いたらしい。それもまた馬鹿げているな。
    トウマからの手紙は一通だって来やしなかったのに、実家からは毎日のように届くのだから目眩がした。



    刑期が終わり出所した俺は宛もなくさ迷っていた。実家に帰る気にもなれないし、借りていたマンションは引き払われているだろう。どうしてやろうかと思案していると何処かで見た事のある少年とすれ違う。

    「トラ、迎えに来たよ。」

    あの時の面影を残したまま、幼い子は成長して大人びた姿をしている。痩躯にサラリとした臙脂色の髪、鋭い目付き。あの子が成長するとこうなるのか。トウマだと認識した瞬間、吐き気と目眩が身体を巡る。もしかして自分はこうやってまた会えることを期待していたのだろうか。また、トウマに癒されたいと思っていたのだろうか。後悔なんてしていなかったのだろうか。

    「トラになかなか会えないからあの時癒えた傷はまた膿んでしまったぜ?」


    それは俺がずっと刑務所にいたからなのであるが、そこをトウマもわかっているはずだ。それよりも、今まで連絡の1つも寄越さなかった癖に何を言っているのだろうか。

    「なんにしてもさ、トラ、一緒に帰ろうよ。」

    トウマが俺に触れようと手を伸ばしてきた。指先が目の前、鼻先に触れそうにまで来たところで俺の意識は途絶えた。

    「トラの為に大きなゲージを用意したんだぜ?そこで一緒に暮らそう。あと俺がつけていたみたいな首輪もあるんだ。」

    あの時の生活の続きをしようぜ。うっすらと聞こえてきたのは甘美な誘い。

    これから待ち受けているは、あの時よりもグチャりと歪む、愛し合う関係。

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