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    warabi_hq

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    付き合いはじめてすぐくらいのいちゃいちゃ

    #治北
    theNorthOfTheCountry
    #おさきた

    あめ沛然と軽トラックの天井を打つ雨の響き。
    ガラスの向こうの景色はひっきりなしに打ちつける雨粒でぼんやりとした抽象画のようになっていた。

    なんとなく流していたラジオの声もかき消され、この狭い空間に二人、取り残されてしまったようだ。

    忙しなく動くワイパーの動きも追いつかず、仕方なく治は路肩に車を寄せ、ハザードのボタンを押した。

    助手席で心配そうにフロントガラスいっぱいの抽象画を眺めていた北信介もその判断に賛成らしく、一旦シートベルトを外すと、ゴソゴソと作業着のポケットを探りはじめた。

    「この様子ならすぐに止むやろ。飴ちゃん、食うか」
    「いただきます」

    出てきたのは熱中症対策であろう、真新しい塩飴。
    (相変わらずちゃんとしてはんのやな)
    微笑ましい気持ちで受け取り、袋を開け口に放り込んだ。

    「支度して待っとるやろし、早よばあちゃんにおっちゃんとこの梅届けてやりたいけどな。これはしゃあないな」

    言いながら自分の分も探しているのであろう、ゴソゴソしていた信介のポケットから出てきたのは、封が開けられ、空になった袋。
    そういえば、さっき梅を分けてもらいに行ったおっちゃんとこのちっちゃい子にも飴ちゃんあげてはったな。
    子どもには袋を開けてからあげたのだろう。手持ち無沙汰に空袋を両手で小さく折りたたみながら、何事もなかったかのようにシートベルトを締め直して窓の外を眺める信介のことが急に愛おしく感じられた。

    雨はまだ止まない。

    治は助手席に身を乗り出すと、信介の肩を半ば強引に抱き寄せ、驚いて見上げる信介と唇を重ねた。
    二人の間でコロコロと転がる塩飴と信介の舌を心ゆくまで堪能した後、ゆっくりと見つめる。

    突然口移しに塩飴を返された信介は、驚いて目を丸くしていた。

    「半分こしましょ」

    「あほ、こんなとこで、誰かに見られたらどうすんねん」

    「俺らラブラブですー言うて、最高の笑顔を返したりますよ」

    顔を真っ赤にした信介が恥ずかしそうに目を逸らし、何かに気付いて徐に空を指さした。

    いつの間にか空は晴れ、虹が渡っていた。

    「さて、ゆみえさんが待ちくたびれてますね。早よ帰って梅仕事、頑張りましょ!」

    田畑の真ん中でうずくまるように停まっていた軽トラックは、軽快に走り出した。
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    warabi_hq

    MAIKING途中書きのどんきつねさん的なきたさん。
    まだようやく両片想いになったくらいの段階。
    治はこの頃お店の2階に住んでいます。
    小さなキッチンに見合わない大きな冷蔵庫を置いていて、部屋は和室なのでテーブルじゃなくちゃぶ台で食事。
    お店が軌道に乗ってきて、時間的にも金銭的にも余裕ができてきたらもうちょっと広い近所のマンションに引っ越します。
    白狐宮治にとって『飯を食う』という行為は、人生の中で1番の幸福な時間であった。ところがこの数日、落ち着いてその至福の時間を過ごせていない。

    おにぎり宮の営業を終え、一人暮らしにしては立派な冷蔵庫のある部屋に戻り、一日頑張った自分のために拵えた夕飯の並んだちゃぶ台の向こうに、ちょこんと正座する想い人、北信介の姿があった。いつもと変わらない服装のそのひとには、本来あるはずのない、狐のものと思われる真っ白いふわふわの尻尾と、頭の上にはツンと立ち上がった同じく白くふわふわの三角形の耳が存在していた。彼は治が食事を摂る間、きちんと正座をしたまま、じっとその様子を見守っている。

    これが、治がここ最近落ち着いて至福の時を過ごせていない大きな理由だった。そもそも実家で農業を営んでいる彼が、こんな時間に街中の治の部屋にいるはずがないのである。
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    小さなキッチンに見合わない大きな冷蔵庫を置いていて、部屋は和室なのでテーブルじゃなくちゃぶ台で食事。
    お店が軌道に乗ってきて、時間的にも金銭的にも余裕ができてきたらもうちょっと広い近所のマンションに引っ越します。
    白狐宮治にとって『飯を食う』という行為は、人生の中で1番の幸福な時間であった。ところがこの数日、落ち着いてその至福の時間を過ごせていない。

    おにぎり宮の営業を終え、一人暮らしにしては立派な冷蔵庫のある部屋に戻り、一日頑張った自分のために拵えた夕飯の並んだちゃぶ台の向こうに、ちょこんと正座する想い人、北信介の姿があった。いつもと変わらない服装のそのひとには、本来あるはずのない、狐のものと思われる真っ白いふわふわの尻尾と、頭の上にはツンと立ち上がった同じく白くふわふわの三角形の耳が存在していた。彼は治が食事を摂る間、きちんと正座をしたまま、じっとその様子を見守っている。

    これが、治がここ最近落ち着いて至福の時を過ごせていない大きな理由だった。そもそも実家で農業を営んでいる彼が、こんな時間に街中の治の部屋にいるはずがないのである。
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    TRAINING🍙の気持ちが、双子から離れて🌾さんに寄っていく過程はどんな感じだったんだろう?という妄想。
    二人もう付き合ってます。
    大人になって二人とも実家を出た前提で、何かの用事で帰ってきてるときの二人の会話。
    兄弟喧嘩「なぁ、ツム」
    「なんや、サム」
    「北さん、今頃何してはんのやろな」
    「…………」

    治の問いかけへの侑の返答はなく、雑誌をめくる音だけが静かに響いた。

    高校を卒業し、双子が二人とも実家を出た今も、実家に顔を出せば部屋にはあの頃と同じ2段ベッドが待っていた。双子が成長したからと言って、家の間取りが変わるわけではない。

    「なぁ、ツム」
    「なにて」
    「北さ「もうわかったわ!!!」」

    声と同時に上段に横になっていた侑の腰のあたりの床板が、急に盛り上がり始めた。二枚に分かれた床板の継ぎ目の部分を下段の治が器用に両足を使って押し上げているのだ。

    「こらこらこらこら!やめえや!!」

    侑が地元を離れて数年。いつの間にか、北さんこと北信介と双子の片割れ治が良い仲になっていた。いつの間にか、と言っても全く心当たりがないわけではない。おにぎり宮を開業するにあたって、いろいろと相談を聞いてもらっている様子だったし、おにぎりに北さんの育てたお米を使わせてもらうことはもちろん、稲刈りの手伝いや、田植え、野菜の収穫、最近では北さんのおばあちゃんのゆみえさんに店を手伝ってもらっていることすらあった。
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