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    あもり

    @34182000

    二次創作小説置き場です。
    現在格納済み:fgo、遙か3、バディミ、スタオケ、水星の魔女、マギなど色々

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    あもり

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    永久凍土帝国アナスタシア配信6周年おめでとう〜〜〜!配信時間には普通に遅れましたが4日中に投稿自体は間に合ってよかった…
    カドアナに囚われて6年、これからもよろしくお願いします。いつも通りの糖度低めな本編開始前のふたりです!

    #カドアナ
    cadiana

    絵画異聞帯ロシア、その中央に聳える宮殿にはかつての栄華の名残が山のように、されどひっそりと人知れず遺されていた。彫刻、絵画、工芸、音楽、書物と多岐にわたる遺物たちは王侯貴族たちがありとあらゆる文化を用いて、己が栄光と名誉を末世の子孫にまで語り継ごうとした証の数々。
     美しい、と思う。けれど、カドックは本質までそれらを理解できるかと言われれば否定する。自分は貴族ではない、ただの平民だ。本質を知らないのであれば、ここにある全てもただの美しい"だけ"のことだ。美しいまま、永遠に降り続ける雪の中に埋没していく。忘れられていく。まるで凍土における自分たちのようだ、と自嘲する。意味をつけるのはいつだって、所有者の理解だ。
     そして、と改めて埃を被った油絵たちを見上げる。廊下にずらりと飾られた額縁の中は、どれも人間の顔ばかりだ。
    ーヤガの顔を残しているものは、何一つこの宮殿の中にはない。
    「遅かったわね」
     まるで目の前の絵画から抜け出したような姿をしたアナスタシアが、ごく自然に霊体化を解いて隣にふわりと現れた。遅れて彼女のドレスにつけられた宝飾品の音が鳴る。
    「部屋で待っているんじゃなかったのか」
    「退屈で仕方がないもの」
     淡々と返事をするキャスターはこちらをチラリと見た後、廊下に飾られた絵画たちへ視線を映した。
    「つまらない顔ばかりね」
    「……そうだな」
     特に話すこともなく、続ける話題もない。何か言うべきだろうだがと悩んだが、生憎カドックに手持ちのカードがない。召喚してからこの方、カドックからは雑談めいた場を避けていたのに、と内心頭を抱えていた。何を話せばいいのかさっぱりわからないからだ。そもそも、話すために彼女を呼んだわけでもない。
     そうして選んだ沈黙の中で、轟々と背後の窓から軋むように鳴る外の音が嫌でも耳につく。今日はいつもに増して風が強い。嵐のようだ。
    「あなたがさっき考えていたこと、当ててあげましょうか」
     そんな中、決して大きくはない彼女の声が聞こえたのは、どういう訳なのかよくわからなかった。魔力でも篭っていたのかと視線をやれば、アナスタシアはこちらをただ静かに見ていた。
    「どうしてヤガが飾られていないか。ー違うかしら」
     言葉を失ったままでいると、続けてキャスターは口を開く。
    「ヤガたちにとって自分たちは残すべきではなく、恥ずべきものだったのかしら」
     ー私はヤガみたいなものだもの、と言った言葉が脳裏に過ぎる。
     召喚の影響でアナスタシアの欠落を時折目の当たりにする度、魔術師としての自分の身勝手さを突きつけられるようだった。彼女はその事に関して何も言わない。何も言わないのをいい事に勝手に痛む体は何なのか。幻覚で痛みに酔っているのか、自己保身なのか、自分に他人を慮るような感性が残っていたのか。カドックには最早わからなかった。
     それでも、生来の姿から歪んだとしても。自分には今、目の前にいるアナスタシアが必要だったのだ。

    「僕は君がヤガだろうが、人間だろうが、幽霊だろうが、恥ずべきものだろうが、どんな顔をしていようがーどうでもいい。必要として呼び、君はそれに応えた。互いに為すべきことがあるから、ここにいて協力し合っている。違うか?」
     誰が非難しようが、例え彼女自身が否定しても、自分だけは今の彼女の在様を肯定する。
    義務ではない。これは必然だ。
    「……そうね。あなたの言う通りだわ」
     ふ、と和らいだようにキャスターは表情を緩ませる。それはカドックが見る、初めての笑顔のようなものだった。
    「それでも、一枚もヤガたちの皇帝の絵がないと言うのは威厳に欠けるわね」
     やはり彼女もこうした「誰かに見せる」感覚を当たり前に持っているのは、骨の髄から皇族なのだなとしみじみと実感する。
    「……なら、絵を描かせる職人を育成するところからだな」
    「あら、手始めにほら、あなたが持っているスマホとやらを貸しなさい。簡単に絵が撮れるでしょう」
    「あんなものでいいのか?」
     威厳と言ってた割にインスタントだな、と思わず呆れた声が出る。
    「あなたの好きな効率化ってやつでしょう?私、じっとしているのは嫌いなの」
     言ってることはめちゃくちゃだ。絵を寄越せ、ただし迅速に。それも皇族らしいというのか。
     でも、まぁ、今すぐであれば取り急ぎーテストで行うくらいはいいだろう。急かされて端末をポケットから取り出す。ほら、と渡せば非難がましい目で見られた。
    「自分で撮れっていうのかしら?」
    「……わかりましたよ、皇女サマ」
     渋々カメラを構えれば、画面越しに見る彼女は何か考えたように俯いている。そしていいことが思いついた、というようにこちらのカメラ越しに向かって口を開いた。
    「ねぇ、折角なのだからちゃんとした所で撮りたいわ。こんな適当な所ではなくそうね、例えばー」
    「わかった、わかったよ!君のお眼鏡に適うところで撮るから、連れて行ってくれ」
     率直に言えば今ここは彼女が撮りたい場所ではないということだ。カドックは両手を上げて早々に降参する。
    「じゃあ、とっておきの場所があるから連れて行ってあげる。ついてきなさい、マスター。とびきりの私を撮らせてあげるわ」
     やっと上機嫌になったキャスターは青いマントを翻し、足取りも軽く歩き始めた。ふと、カドックが当たり前に彼女と必要以外のことで話せていた事にこの時初めて気づいた。
     そして自分の前を歩くキャスターの後ろ姿は、どこにでもいる女の子にしか、この時ばかりは見えなかったのだった。
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    あもり

    PAST24年3月17日春コミで出した、無配ペーパーの小話再録です。そのに。
    2のこちらは、ムーとティトスです。新刊準拠の話ですが読んでなくても「本編最終章終了後、ジュダルが行方不明になったので単独で白龍がレームへ訪問しにきた後の二人の会話劇」とさえわかってれば問題ないです。
    私の割と癖が強く出た話となりました。こっちはしっとり目です。ノットカップリング。
    受け継がれるもの 練白龍が去った後、次の面談先へと元気よく歩くティトス様とは裏腹に、色々と考えあぐねてしまう自分がいた。練白龍は割合、裏表がない青年だ。今回の訪問もどちらかと言えば公人としての彼ではなく、私人としての立場に近いのだろう。だからこそ、あそこまでさらけ出したともいえる。しかし、自身が腹の内を掻っ捌いたようなものだからと言って、それを、同じだけのことを相手に求めさせるのはあまりにもリスクが高すぎる。落ち着いたと思ったが全くそんなことはない。やはり練家の男だと、かつての紅炎を思い出す。
    「ムー」
     くるりとティトス様が振り返った。丸い瞳をこちらに向けてじっと見、そして俺の顔に手を伸ばそうとしていたためすぐに屈む。なんでしょう、と言えば少しだけ笑って口を開いた。
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    あもり

    PAST24年3月17日春コミで出した、無配ペーパーの小話再録です。そのいち。
    アラジンと白龍、2人のデリカシーゼロな話です。
    カップリング要素は白龍とジュダルですが、この話にジュダルは直接出てきません。あとアラジンと白龍はカップリングではありません。2人は飲み友マックスハート!って感じです。そうかな?
    めちゃくちゃ楽しく、カラッとかけました。
    デリカシープラスマイナス お酒というものは、人が普段理性で押さえている様々な箍を外してしまいやすい。アラジンは滅法それに強かったが、対面に陣取る白龍はめちゃくちゃに弱かった。お酒の席はある程度まではご愛嬌。その中で繰り広げられる、馬鹿らしさも面倒くささも、味ではあるのだが。

    「白龍くん飲み過ぎだよ」
    「今日は全然飲んでませんよ」
    「後ろの空の酒樽みてから言ってくれる?」
    「大体こんなに飲みたくなるのはあいつが悪いんです」
    「ジュダルくん?」
    「そうです」
     また勢いよく杯を空ける。あーあーと思いながらも、アラジンは黙って眺めていた。ここまで勢いに乗った白龍の、お酒を止める方が面倒だと経験則でわかっているからだ。
    「俺はずっとアイツがいつ遠征から帰ってきてもいいように色々と準備をしていたんですよ、こっちは!それなのにアイツときたら勝手に色々と初めておいて、」
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    あもり

    PAST先日のたかやま先生ぴくちゃ~日向南ズが空港だったこと、自分が同人誌に書きおろし収録した日向南のふたりの話の舞台も空港で、おまけに「これからの始まりにワクワクするふたり」だったよなあと…。終わりに向けての書き下ろし絵が日向南の2人が空港だったこと、たまたまの巡りあわせですがぐっと来たので期間限定で再録します。当時お手に取っていただいた方、そして今から読む方もありがとうございました!
    ホームスタート、隣には 窓の下、鮮やかな夕日が静かに夜へ落ちていく。小さい窓に張り付いている幼馴染の肩越しにその光を見たとき、ああ僕らは故郷を出ていくんだと実感した。

    ***

     やっとのことで地元の空港のチェックインカウンターに辿り着いたのは、予定時間ぎりぎりのことだった。いざ出発するとなったらどこから聞きつけてきたのか、高校の同級生やら近所のお好み焼き屋のおばさんやらであっという間にわいわいと取り囲まれて、遠慮なく別れを惜しんでくれた。といっても本拠地は相変わらず日向南だというんだけど、みんな勘違いしてないかこれ。そのうち単位交換ではなくて転校したという話に切り替わってそう、というか後半そんな感じで近所のおじさんに言われた。ただもう説明する回数が多すぎたので最後の方の対応はもう拓斗にやや放り投げてしまった。
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