神奈備大忘年会において 憂鬱でもなければ楽しみでもない。ただ無心で引いた籤には「漫才・ツッコミ」と書いてあった。裏にはでかでかと「神奈備大忘年会」のロゴが印刷されてある。忘年会に本気を出す謎の一団があるようだが、薊はまだそれが誰かを知らない。
「これポジションまで指定されるんですね」
半分笑いながら隣の上司に声をかけた薊は、苦節十数年そういえば漫才、当たった事がないなと「漫才って今までありましたっけ」と続けて聞いた。
「あったろ。お前酔うの早いから知らねえんだよ」
「後半なんですね」
「初っ端にやっても誰も笑わんからな」
「やめるという選択肢はないんですね」
で、どっち? と薊が持つ籤を区堂が覗き込み、その文字を見て「一旦中止」と怒鳴った。苦節十数年、区堂さんそんな大声出るんだ、と薊はびっくらこいた。講堂はザワつき、おじが転び、お姉様は消え、数珠が弾けてばらばらと転がる音がした。
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