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    きよせ

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    きよせ

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    唯玲 無配にし損ねた分です 誕生日を迎える前のキミ

    #唯玲
    reiLing

    1225「玲司くん、誕生日になにか欲しいものはある?」
    「いや、その気持ちだけで十分だ」
    「そっか」

    唯臣の問い掛けに玲司は迷う事なく即答した。
    玲司の事は貪欲な人間だと思っていた。だがその対象は遥か先を見据えてのもので、目先のものにはまるで興味が無いと言わんばかりに。
    きっと自らの事に対してはそうなのだ。
    唯臣にはそれがとても不思議で、妙に好奇心を煽られるものだった。
    どうしたら喜ばせる事が出来るだろうか。
    どうしたら、この表情を、感情を揺さぶる事が出来るだろうか。

    唯臣から見た玲司は、平静を装っている割には思いの外表情豊かであって、きっとそれに一番気付いていないのは本人だ。

    現に、問いかけに答える玲司の表情は普段よりも柔らかく見えた。
    きっと気にかけてくれた事自体は嬉しかったのだろうと思う。

    「この場合、本当に何も渡さないのが正解なのかな…」

    空に問い掛け直しても、誰も答えてはくれない。
    考えよう。他でもない玲司の事だ。
    “友達”はどうしてたっけ。
    以前は失敗してしまったから、今回こそは間違えないようにしよう。

    “形のあるもの”だから要らないのかな。
    それなら“形のないもの”ならどうだろう。

    唸りながらじっと見つめてくる唯臣の視線が、玲司に痛く刺さった。
    せっかくの気持ちを無下にしてしまっただろうか。唯臣の気持ちを他所に、玲司は玲司で眉間に皺を刻んだ。
    それを見た唯臣はきょとんと不思議そうに首を傾げる。
    なんでそんな顔をするのだろうか。
    唯臣にはわからなかったが、胸がざわりと騒ぐ感覚に任せ玲司との距離を縮めていく。

    「どうした?」
    「どうしたんだろうね?」
    「聞き返すな」
    「ふふ」

    怯む玲司に構わず、唯臣はその両手で玲司の頬を包んだ。
    血が通っているのかわからない程冷えた指先に、玲司が顔を顰める。
    もっと見たい。もっと見せて。

    「ッ、つ」

    そのまま鼻先に噛み付いてみる。
    身を引こうとする玲司を許さず引き寄せ、今度は噛み付いた場所へ口付ける。
    ビクッと体が跳ねた。

    「っ、おい、なにして…」
    「何もいらないなら、僕がもらおうと思って」
    「何を、意味のわからない事を」
    「ねえ、ちょうだい。18歳になる前の玲司くん」

    唯臣の親指が玲司の頬に食い込み、マリンブルーの奥深くから囚われる感覚に陥る。
    逃げられない、と。
    鮮やかなマゼンダが揺れると、唯臣は恍惚の笑みを浮かべる。

    間違いであっても、きっとこれもひとつの“正解”なのだと。

    「ねぇ、玲司くん」
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