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    kikhimepmop

    @kikhimepmop

    ゲ謎のはらすです。

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    鬼水で猫の日。鬼太郎は成長済。エロではないけど水木が喘ぎます。

    #鬼水

    ずっと猫でもいいですよ水木が目を覚まして最初に思い浮かんだのは「自分は猫だ」という認識だった。同時に、少し前まではおっさんだったという自覚もあった。仕事を終えて帰宅し、飯と晩酌のかたわら新聞を読んでいたはず。飲酒の途中で寝落ちすることは珍しくないが、普通は起きた時に寒いだけだ。風邪をひくことがあっても猫になることはない。
    自分は猫だという強烈な自我と、細波のように寄せてはかえる違和感に戸惑い、じっと手を見た。
    卓の上には可愛い肉球、ではなく成人男性の節くれだった指が並んでいた。おかしい。自分は猫だというのに。
    困り果てた水木が動揺のままその場に立った瞬間、襖が勢いよく開いた。暴走に近いスピードで動いた襖がスパン! と大きな音を立てる。爆音に驚いた水木は畳の上に屈んだ。本当に猫だったら毛が逆立っていたかもしれない。
    「水木さん! 大丈夫ですか?」
    襖の音に負けない大きな声で呼びかけながら部屋に入ってきたのは鬼太郎だった。
    「変な妖気を感じて、急いでき……た……んです……」
    勢い込んで部屋の中に踏み込んだ鬼太郎は水木を見つけるなり急に声がおとなしくなり、水木を見つめたまま動かなくなった。宙で停止した腕が泳いでいるみたいだ。
    かわいい……。
    思わず漏れ出た呟き以外は固まったまま、鬼太郎は水木を見つめ続けた。動くことさえも今はもったいないらしい。全神経を集中し、水木を観察していた。いや、愛でていた。
    「にゃ……にゃぁ……」
    本当は鬼太郎に文句を言うつもりだった。急いできたなんて大見得を切るぐらいなら、固まってこちらを凝視していないで助けてほしい。なんせこちとらおっさんなのに猫の自覚があるのだ。
    だのに呼びかけた声は言葉を紡がず、かわいい鳴き声にしかならない。
    「にゃ、にゃあにゃあ! にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ! にゃあ!」
    水木の鳴き声で金縛りが解けたらしい鬼太郎は部屋を横切り水木のそばに立った。手を伸ばし、頭に手を当てる。以前の水木なら感じないはずの突起に、鬼太郎の指を感じた。そうだ、俺は頭上に耳があるじゃないか。猫なんだから。
    「水木さん、なんて可愛い姿になったんですか」
    うるせえ。俺はおっさんだぞ。猫だけどおっさんなのに可愛いだなんて繰り返すんじゃねえ。おまえはいつも俺のことを可愛い尊い愛らしいだなんて不似合いないことを繰り返すが今日はまた一段と酷いじゃねえか。俺がどうとかこうとかはいいから、早く喋れるようにしてくれどうせ妖怪のせいなんだろ。
    にゃあにゃあと言葉にならない訴えを平然と聞き流す鬼太郎は、水木の耳から手を離さなかった。いつも通りに表情は薄いが、頬は少し赤いかもしれない。
    「水木さん、こんなに可愛くなって」
    ゆっくりと語りながら、鬼太郎は水木をなぜ始めた。
    「このピンと立った耳も」
    ぴゅ!と毛が逆だった。耳は敏感だ。
    「しなやかなしっぽも」
    「にゃ!」
    尻尾は指の圧を感じるだけでなく、下半身が痺れるような不思議な感覚がした。同時にギュッと腹筋がすくむ。なんか、漏らしそう。
    このまま尻尾を握られ続けるのは不安だったが、鬼太郎はするりと撫でるように手を離した。気持ちよさに水木はグッと手を握り、すぐに安堵した。ほう。
    鬼太郎は水木の背中を撫ぜ、首を辿り、頬を軽く撫ぜてから両手で包んだ。かわいいです、と真正面から水木を見つめ手を離した。
    「それに、なんといっても素敵なお髭もある」
    「ゃ……にゃ♡」
    思いがけない甘い鳴き声が漏れ、水木は驚いて跳ね上がりそうになった。猫が混じっている今なら天井まで跳べそうだ。
    「もしかして気持ちいいです?」
    もしかしなくても気持ちがいい。敏感な性感帯のように触れられるだけで髭を中心に快感が全身をつたった。正直、ちんこよりも断然いい。
    へえ、と興味深そうに呟いた鬼太郎は微笑んだ。その日、驚いても萌え狂ってもはしゃいでも、あまり表情を変えなかった鬼太郎が悪戯好きの小鬼のように嬉しそうに笑った。
    「にゃ……♡ にゃにゃっ……っ」
    鬼太郎が喜んで髭をなぞるたびに水木は背中を震わせて悶えた。気持ちいい。恥ずかしい。でも気持ちいい。
    「にゃにゃっ……にゃっ……にゃぁぁぁぉ!」
    「あ、やっぱり尻尾も気持ちいいんですね?」
    さっきはなんだか反応がおかしいなって思っていたんですよね……。
    嬉しそうに尻尾をさする鬼太郎は、なぜだか少し恍惚としていた。
    「にゃ………ぁ……ぁんゃ……♡」
    鬼太郎の腕が上下するたび、鬼太郎の爪先が髭を弾くたび、水木は甘く切ない鳴き声をあげて悶えた。
    「かわいいなあ……水木さん……」
    うっとりと噛み締めるように呟く鬼太郎の手は、口調とは逆にせっせと水木の尻尾を撫ぜ、髭を揺らし、猫耳の毛並みを味わっていた。悶える水木が暴れるが、見た目にそぐわぬ幽霊族の強腕で器用に抑えつけていた。
    「ずっと猫でもいいですよ」
    囁く鬼太郎の声が耳から脳にじわじわと浸透していく。もうこのまま猫でもいいのかも、気持ちいいし楽しいし、鬼太郎もずっとここにいる。猫でもいい猫でもいい猫がいい気持ちがいい。
    「にゃっっっ!」
    快感に曇った思考の隅でおやじの自分が不平を漏らした。煙草も吸いたい酒も飲みたい風呂も入りたいし何より鬼太郎とちゃんと言葉で話したい。
    水木の叫びは言葉にならなかったが、否は鬼太郎にも伝わったらしい。鬼太郎は困ったように眉毛を下げ、水木の目尻に浮かぶ水玉を眺めていた。が、しばらくして微笑んだ。
    「じゃあまあ、もう少しだけこのままでいてください。朝になったらこの妖怪を追い出しますから」
    慰めるように猫耳を覆う鬼太郎の手は珍しくあたたかくて、優しかった。どんな姿の水木さんも大好きですよ。


    そして水木は一晩しっかり弄ばれた。優しさは優しさ。欲は欲。
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