【君の心を聴かせて】
「⋯⋯ねぇアスラン。なにか僕に隠し事してない?」
「⋯⋯なんの事だ?」
たまたまミレニアムに用事が出来て着艦許可を貰い、メイリンと共にやって来たのは数刻前。
機体調整をしていたキラがようやく終わったのか執務室に戻って来た。
「⋯⋯なんで今日ミレニアムに来たの?」
「来たらダメだったのか?」
「ダメじゃないけど、何でかなって⋯⋯」
アスランは何か勘づいているキラの顔を見て、はぁーと息を吐く。
「何となく分かっているんじゃないのか?」
「⋯⋯」
「キィーラ」
「⋯⋯ごめん⋯⋯」
素直に謝って来たキラを無言で抱き締める。
「⋯⋯本当に、お前は」
何度言ってもキラは無理をする事を止めない。本人は無理をしているつもりは無いのかもしれないが、目の下に出来た隈を見れば身体に不調を来たしているのは分かる。
「⋯⋯で? 今度は何を抱えているんだ?」
「⋯⋯僕って、何なのかな⋯⋯」
キラの問い掛けに眉を寄せる。
「僕は、准将っていう肩書に見合う事は出来てないと思う。僕よりも凄い人はたくさんいる⋯⋯アスランも、カガリも、ラクスも、シンも僕よりも遥かに凄い⋯⋯」
「⋯⋯誰に言われた?」
「⋯⋯言いたくない」
抱き締められたまま首を横に振るキラに、アスランは背中をポンポンと叩いてやる。
「⋯⋯お前も充分に凄いだろう。あのシンが懐いているのがいい例だぞ?」
「⋯⋯シンはいい子だもん。僕の部下には勿体ないと思う」
「⋯⋯それ、シンに言ってやるなよ? 多分落ち込むから」
あんなにもキラさんキラさんと忠犬のようにキラに真っ直ぐなシンは、キラの部下である事に誇りを持っている。アスランの下にいた時とは全く態度が違う。
「⋯⋯うん」
「⋯⋯嫌な事は寝て忘れてしまえ。仕事は終えてるんだろう?」
「⋯⋯それは、そうだけど⋯⋯」
なおも言い訳して動こうとするキラを動けないように抱きしめる力を強める。一定のリズムで背中を叩いてやると、腕を掴んでいた手に力が抜けていくのが分かった。
「大丈夫だキラ。今は俺が居る。このまま寝てしまえ」
「⋯⋯アスラン⋯⋯」
「⋯⋯話したくなったら聞くから。今は寝ろ」
「⋯⋯う、ん⋯⋯」
小さくキラが呟いてそのまま身体から力が抜けていくのを感じて、しっかり抱き締める。
「⋯⋯全く⋯⋯」
仕方がない。
スヤスヤと眠ったキラの体を抱き抱えて、ベッドに横にしてやる。
よくよく見ると目の下の隈は色濃くて、どのくらいきちんと眠れていなかったのかと考える。
「⋯⋯いつになったらお前の心の内全てを教えて貰えるのか⋯⋯」
キラの抱えているもの全てを知りたいと思うが、キラが望まないのなら無理に聞くつもりは無い。無理やり聞き出せばキラは頑なになるだろう。
以前のような事にならない様に、ミレニアムのクルー達はキラの事を気を付けてくれる。シンやルナマリアも益々キラの事を気にかけてくれて、今回のアスランのミレニアムの乗艦もシンから頼まれたのだ。
『キラさん、また眠れてないみたいだ。俺じゃやっぱりダメで⋯⋯だから、アスラン頼む⋯⋯』
何処かアスランに対してライバル意識を持っているシンからのヘルプ要請。いつもキラの傍に居てやれないアスランでは気が付かないキラの不調も、シンが真っ先に気が付いてくれたからこのくらいで済んでいるようなものだ。
「⋯⋯さて、一体誰がキラに対してそんな事を言ったのか⋯⋯」
眠るキラの前髪をサラリと触る。
「⋯⋯お前の憂いは俺が払ってやる。お前にばかり負担は掛けさせない」
だから
いつかお前の心にある想いを聞かせてくれ。
どんな想いでも受け入れてやるから。