それは遠雷の様に静かな夜が更けていく。
文明の発達の影響で街が眠らなくなるのは遠い先の未来。
科学がもたらした文明の明かりがあるとはいえ、太陽と共に目覚め、太陽と共に眠る。そんな生活を送っている者も珍しくない。
そう、だから誰も気づかない。
不自然すぎる程に、深い眠りに落ちている事に。
眠っているすぐそばで、『普通』とはかけ離れた者達による、超常の宴が繰り広げられている事に。
「———————ッ!!」
幾重にも重なって響く、甲高く空気を切る音一つ一つに神経を研ぎ澄ます。
音と共に飛来する鉄の襲撃者を躱し、逸らし、防ぎ、迎撃する。
一つ一つはそこまで脅威では無い。
込められた神秘も、仕込まれた魔術も汐俐に致命傷を与えるには至らない。
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