好きになった時『大変だったな』
――大変……?だった…?
『お前だってまだガキなのによぉ』
――でも…、俺は……。
『日向も兄貴頑張ってんだな』
――…そうだ……俺、ずっと頑張ってるんだ…。
闇に迷い込んだあの日以来、日向は初めて自分を認めてもらえた気がした。出会って間もない、まだ名前しか知らないこの男に。
オレンジ頭の柄の悪い男が放つ言葉は、不思議と瞳の奥を熱くし、日向の内側にあったボロボロの堤防は決壊する。
こんなにも脆く、危ういところにどれだけの物を詰め込んでいたのか。幼い頃から溜め込んでいたものが一気に外へと噴き出し、キツく蓋を閉めていたはずの寂しいという感情も、気づいた頃には吐き出されていた。
一度爆発したそれは日向自身にも止め方がわからず、まだあどけない少年の顔を盛大に涙と鼻水で汚していく。
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