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    yuno_tofu

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    yuno_tofu

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    ハウルが買い物しているのに気づいて様子を見に来てくれたシェイムさんとの話。
    (※途中で出てくる植物(フェディキア/黒絣草)は創作です!)

    買い物「あとは…」

    そんなことを呟き脳内のメモを辿りつつ、両手で抱えていた箱とその上に乗る風呂敷に包まれた結望へのお土産と果物達を落とさないようにしながら天満あまみの大通りを進んで行く。

    残りの用事はあと2件。
    元々の予定では問題なく終わる…はずだったけれど、まさかシェイムの弟と間違えられたり弟子と知っている人達から果物やらなんやらのお裾分けを頂くことになるとは思っていなかった。勿論有難いことではあるけれど、持てる量には限界がある。

    「(1回その辺の路地で転移魔術使うか…?いやでもさっきくれた人達とまたすれ違った時疑問に思われるよなぁ)」

    うーんと唸って考えるけれど、中々妙案は浮かばない。
    …勿論レージュとナコに手伝って貰うというのは無しだ。ただでさえいつも俺を守ってくれている2人にそんなことまでさせられない。あと2人の身長だと人の流れに流されてはぐれそうだし…。
    なので肩掛けカバンの中で本姿のレージュが(多分)「手伝おうか?」と言わんばかりに暴れても「大丈夫だよ」とだけ小さく声を掛けたし、ナコが宿っている指輪は……まぁいつも通り無反応だ。

    「(俺もアヤと菫みたいに仲良くなりたい…)」

    切実にそう思うくらい、ナコの態度は素っ気ない。
    完全にビジネスライクな付き合いだ。まぁ付喪神は製作者の意思も継ぐらしいし、そう考えるとナコの態度については非常に心当たりしかないのだけど…。

    はぁ、と小さく溜息。
    けれどいつもならすぐ頬を両袖で挟んで「どうしたの?」とでも言いたげな目を向けてくれる悪魔らしくないレージュは(天満の氏神様に許可を貰ってはいない手前)カバンの中な訳で、一方こういう時のナコは当然我関せずと姿を隠したまま─

    「……え?」

    気づくと目の前に金魚姿のナコがふよふよと漂っていて思わず足が止まる。だっていつもナコは俺が呼んでも十中八九姿を見せてくれない。なのに。

    「ナコ?どうし…」

    「おや、こんな人通りの多い場所で足を止めると危ないよ」

    突然馴染み深いそんな声が頭上から降ってくると同時に肩に手を置かれ、ビクッとしつつそっと振り返る。そうすれば勿論そこにいたのは。

    「シェイ、ム…」

    「やぁ。買い物かい?」

    「う、うん。シェイムは…お使い?」

    ゆっくり揺れる白と黒の尻尾にいつものにこやかな笑顔…いや愛想笑いを浮かべるシェイムの腕の中には小さめの年季が入った箱があった。大きさ的に多分中身は茶碗とかかな。
    そう思いながら聞いてみると、シェイムはコクリと頷いて。

    「あぁ。曰く付きだと持ち込まれた物だが何も宿っていないようでね。弥琴の指示で質屋に持っていくところだ」

    「なるほど…。じゃぁここの近く…なら、柳通りの?」

    「いいや、あそこには行かない。弥琴が妬いてしまう」

    「…え?」

    「こっちに来ていたのはついでに新しく来たらしい商船の様子を見に行っていただけだ。君は…随分沢山買ったようだ」

    話を逸らされた上にそう言ってシェイムは笑っていたけれど、明らかに「後先を考えなかったのかい?」という言葉が付いてきそうだった。…誰が久々に歩いた街でこんなにお裾分け貰うと予想できるんだよ。

    「……半分以上は買った物じゃなくて、シェイムの弟子だからってお裾分けして貰った物だよ…」

    「おや、それは失礼した。なら少し手を貸そうか?」

    「え、良いのか?柊さん待ってるんじゃ…」

    「弥琴なら今は寝ている。他に頼まれていた用事は済んでいるし、1時間程度ならまだ起きないだろうから問題ない」

    「ないんだ…」

    一応現在時刻は午後1時半なのだけど…まぁアヤも柊さんはよく昼寝するって言っていたし、シェイムが大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。多分。
    そう思っている間に、シェイムはひょいと俺の荷物を半分どころか8割程を軽々片手で持ってから反対の手でナコを優しく撫でていた。…どうやらナコが急に出てきたのはシェイムが近くにいる気配を感じたからだったらしい。少し傷つく。…まぁそれは今に始まったことでないけども。ともあれ今は用事を済ませよう。

    「えっと…質屋から行く?」

    「いいや。先に君の用事を済ませた方が効率が良い」

    「分かった…。それじゃぁまずは四橋の所の本屋に行くよ」

    「了解した」

    シェイムが返事をすると同時にナコはスッといつものように姿を消し、それを確認してすぐシェイムは迷いなく目的地に歩き始めたので俺も置いていかれないように隣に並ぶ。

    「新しい本でも買うのかい?」

    「いや、納品だよ。宗一郎さんの…えーっと、」

    夢見草くらみかやの本屋の店主だろう?」

    「よく知ってるな…」

    「弥琴に関係するモノは全て記憶している」

    「流石…。まぁえぇと今回は宗一郎さんの体調が良くないみたいで、どうせ俺が翻訳した本な訳だし代わりに納品に来たんだよ」

    「なるほど。用はそれだけかい?」

    「いや、港近くの花屋さんにも行く予定。こっちはただの買い物」

    そう言うとシェイムは素っ気なく「へぇ」と呟いたけれど、少し尻尾が揺れていた。もしかしたらシェイムは花が好きなのかな…。柊さんの家でたまに庭の柊木やサルビアの花を見ている姿を見かけるし。けれどそれを聞くより先にシェイムが首を傾げた。

    「結望君へのプレゼントかい?」

    「あー…いや、前に教えてくれた麻痺薬の素材にフェディキアって薬草があっただろ?あれの絵をノートにメモしてたんだけど、それを見た結望がこの草見たことあるって言ってて…」

    「ふむ、それは不思議だね。この国の気候では育たないはずだが…」

    「そうなんだよ。でも結望は異国との交易が始まるよりも前に行商人さんが持ってるのを見たって言っててさ。ということで、もし花屋さんで見つけられたら買って今度シェイムに見せてみようと思って…」

    「なら手間が省けたじゃないか。結望君からその植物の名前は聞いているのかい?」

    黒絣くろがすり草って言ってた」

    「…確かに葉の特徴に合う名前だ」

    「だろ?まぁ近縁種だとか見た目が似てるだけって可能性はあるんだけど…それはそれで効能とかがどうなるのか気になってさ」

    「良い心掛けだね」

    ポン、と軽く頭に手を置かれる。それが俺にとっては堪らなく嬉しくて、勿論褒められたくて調べに来た訳では無いけれどついつい頬が緩んだ。けれどすぐに手は下ろされ、そのままそっと押すように背中に添えられる。

    「だがまずはここでの用事を済ませてくると良い」

    「あ、うん!すぐ戻る!」

    シェイムの言葉でようやく本屋に到着したことに気づいて慌てて店内に入る。それから奥の部屋で店主に事情説明しつつ宗一郎さんからの手紙と翻訳した本達が入っている箱を渡して、流石に「折角ならお茶でも」と言われたのは苦笑いで断ってから店の前に戻…ろうとした。

    「…あれ」

    店の奥の部屋から店内に戻ればシェイムが片手で荷物を抱えたまま器用に本を立ち読みしていて思わずポカンとする。けれどシェイムは顔を上げるとニコリとして。

    「もう済んだのかい?」

    「う、うん。えっと…荷物、持つの代わろうか?」

    「いいや、構わない。それよりこれと、それからこの本は1度読んでみると良い。君の翻訳の助けになるはずだ」

    「え?」

    渡されたのは和の国の歴史書と旅行記。確かに読んだことの無い物ではあるけれど…と思いつつペラペラ捲るとなんとなくシェイムの言いたいことが分かった気がする。

    「言葉選びと説明が上手い本だな…」

    「君の翻訳は正確でこの国の者達にも伝わりやすいよう上手く言い換えが出来ていた。けれど作者の感情をよく捉えている一方で学術書のような言葉の固さを感じる時がある」

    「言い換えについてはアヤに助けられてる面が大きいよ。学術書ぽいのは……ぐうの音も出ない…」

    なんせ今まで読んできた本の大半が学術書だし…。勿論学術書の翻訳をする時なら問題は無いだろうけれど、それ以外でも言葉が固くなってしまっているのは意識出来ていなかった。なのでこうして指摘して貰えるのはとても助かる…が、よくよく考えてみれば。

    「…あれ、俺が翻訳した本読んだのか?」

    「弥琴が気になると言っていてね」

    少し意外に思いつつ聞いてみたけれど、予想外の返しに思わず「え」と声が出る。だってまさか柊さんが気にするとは思わなかったし…。けれどそれならそうと、やはり評価は気になる訳で。

    「えっ、と…柊さん、何か言ってた…?」

    「たった数年でよくここまで和の国について学べたね、と言っていた」

    「…!良かった…」

    酷評だろうと甘んじて受け入れる覚悟はしていたけれど、それでも認めて貰えると嬉しいものは嬉しい。勿論1度認めて貰えたからってそれにかまけて緩むようなことはしないようにしなければいけないけれども。

    「文が固いとも言ってはいたが、内容は充分伝わる。今のままでも問題は無いだろう」

    「いや、折角貴重なアドバイス貰えたんだから活かすよ。学術書ぽいのは人によっては読みにくいだろうし。教えてくれてありがとな」

    「あぁ」

    「…あっ、でも薬学の勉強も怠らないから!」

    「その心配はしていない」

    あっさりそう言われて少しキョトンとしてしまったけれど、シェイムは構わず俺から本を取り上げるとさっさと店員の元に歩いていく。それを見てすぐ会計をしようとしているのだと理解して慌てて払おうとはしたものの、その前に良い笑顔で荷物を押し付けられ両手でなんとか抱える間に会計は終わっていた。…優しいんだか優しくないんだか。いや、優しいは優しいのだけども。

    「さ、行こうか」

    そんな声と共に荷物を全て回収され、代わりに支払い済みの本2冊を渡される。同時にお礼を言う間もなくシェイムはさっさと店の外に向かってしまったので急いで鞄に本を入れつつ後を追った。

    「シェイムっ、ありがとう…。でも支払い良かったのか?」

    「構わない。君が学べば翻訳の質が良くなる。それで異国からの本も増え、結果的に弥琴の役に立つ」

    「そ、そういう…。というか柊さん本好きなんだな…」

    「怠惰だが学ぶことには案外積極的だ。でないと異国の商人相手に取引は出来ない」

    「あー…」

    確かにシェイムが通訳を出来たって、柊さん自身がある程度は異国の文化について知っていないと円滑な取引は難しい…か。
    アヤが「面倒臭がりだけど博識でやる時はやる人」と評していた理由がよく分かった。

    「期待に添えられるよう頑張りまーす…」

    言いつつ苦笑い。これはもう少し色々勉強しないとダメそうだ。
    まぁ本を読む時間はシェイムに速読術を教わっているからなんとかなるけれど、本屋に行く時間も必要だし…。なんて考えていると、不意にシェイムがこちらに顔を向けて。

    「あぁそれと」

    「…ん?」

    「もし黒絣草が売っていた場合の購入も私がしよう」

    「えっ」

    「その代わり、次回の勉強会までに観察したレポートを提出するように」

    「……ハイ」

    非常に爽やかな笑顔で言われ、もうそう言うしか無かった。
    けれど結望とは無理をしない約束をしているし、ここは落ち着いて1つずつこなして行くのが良さそう…かな。

    ともあれそれから花屋さんに着くまでの時間は主に今までシェイムから貰った本の内容についての一問一答をしたり、養生所でのバイトについて報告したり。…血は今でも苦手ではあるけれど、ちょっとは改善されたと思う。

    「多少の怪我であれば前に邪鬼に襲われた時に身をもって「このくらいなら死なない」て実感したから…最近は少しマシだよ」

    「ふむ…。しかし君はアヤと同じく自分を蔑ろにする傾向がある。あまり怪我には慣れない方が良いだろう。君の目的はあくまでも戦闘自体の回避だ。目的を見誤ってはいけないよ」

    「気をつけます…」

    そんな会話をしつつ歩いていけば、ようやく目的地の花屋さんに到着。そして着いて早々、俺達は目当ての草を見つけ…る前に。

    「おぉ、白虎の兄ちゃん!前に買った花はどうだ?」

    「お久しぶりです。とても綺麗に咲いていますよ。あの節は─」

    にこやかに。それはもう本当ににこやかに、シェイムは店主と話していた。…アヤも大概だと思う時はあるけれど、やっぱりシェイムの演技力は凄いと思う。こう見るととても愛想の良い好青年にしか見えない。まぁ普段から優しいとは思うけど。

    「(…とりあえず今のうちに見てみよう)」

    すっかりシェイムは店主に捕まってしまったし、その間に黒絣草を探しながら他の植物も眺めた。大抵は見た目の良い花を中心に売っているようだけれどたまにこの辺りでは珍しい植物が鉢で売っていてついつい目移りしてしまう。

    「(これは…実がつく前のウルフベリーかな。確かこっちだと枸杞くこって言うんだっけ。薬にもそのまま料理にも使えるし庭で育ててみても良いかも…)」

    「何かあったかい?」

    「わっ!…お、おかえり」

    気づくといつの間にかシェイムが隣に居て肩が跳ねる。
    俺の注意力が散漫なのか、シェイムの気配が薄いのか…。うーん、どっちもかなぁ…。

    「えっと、ごめん、まだ黒絣草は見つかってないよ。枸杞があったから珍しいなって思って見てた…」

    「そうか。それも買おうか?」

    「え、でも」

    「枸杞の薬効は」

    「…疲労回復、胃腸を丈夫にする、貧血、あと眼の諸症状」

    「1日の摂取量は」

    「10から20粒程度。でも血圧が低い人はもっと少量で」

    「正解だ」

    そう言うとシェイムはヒョイと鉢を片手で持ち上げそのまま店内を歩き出す。…これは「正解したから買ってあげる」ということだろうか。なら甘えて良い…のかな?
    ちなみに店主はシェイムが荷物と鉢を片手ずつで器用に持つのを見てもあんまり驚いていなかったので多分前回来た時もこんな感じだったのだと思う。となれば買ったのはやはり…。

    「サルビアはここで買ったのか?」

    「そうだよ」

    「シェイムってサルビア好きなんだなぁ」

    「サルビアに限らず植物全般を好んでいる。しかしあのサルビアは弥琴が買ってくれた物だ。私の誕生花だからね」

    「あ、なるほど。ちなみに赤と青のサルビアな理由は?」

    「青は弥琴の好きな色、赤は私の好きな色だ」

    「そういうことか〜」

    そりゃ熱心に眺める訳だ。柊さんの誕生花は柊木だってアヤが言っていたし、あの庭は本当に「2人の場所」なのだろう。お互いの誕生花とお互いの好きな色を並べて…なんだかとても微笑ましい。
    …勿論そう思ってニコニコしていたらシェイムに若干怪訝な顔をされたけれど、流石におしどり夫婦ぷりに和んでいたことは黙っておこう。

    「えっ、と…あ、黒絣草売ってるかどうかって聞いた?」

    「あぁ。丁度今君の後ろにある」

    「へっ?!あ、これ…?」

    言われてハッとして振り返れば確かにフェディキアそっくりの草がありとりあえずしゃがみこんで観察してみる。分かってはいたが本当によく似てるな…。

    「何か差異は見つけられるかい?」

    「うーん…」

    フェディキアは熱帯の植物であり、大きめな濃い緑の葉に黒いかすり模様がある。寒さが苦手だが直射日光も苦手。それから葉には毒性があって触れるのは問題無いが摂取すると強い痺れを起こす。

    そんな本の中の情報を思い出しつつ眺めるが、強いて言うなら前にシェイムに見せてもらった物よりも2回り程小さいのと、茎の形が少し角張っているような気がする程度しか差異が見つからない。けれどそれは生育の問題と言われてしまえば差異とも言い難いし…。

    「見ただけじゃなんとも…。1度葉を切って麻痺治しの薬に浸して反応を見るだとか、あと根の形も確認してみたいな。それから太陽に当てた時にフェディキアと同じように絣模様が変色するかどうかも」

    素直に分からないことを言ってから、とりあえずパッと思いついた簡単な確認方法を羅列してみる。けれど他に何かないか考え込んで答えが出るより前に。

    「上出来だ」

    そう言われて振り向くと、シェイムはどことなく満足そうな顔をしている…ような気がした。と思った次の瞬間にはいつものニッコリとした顔を向けられたれけど。

    「君のレポートを楽しみにしているよ」

    「…ガンバリマス」

    苦笑いしつつ立ち上がり、シェイムから荷物を受け取る。
    そうすればシェイムはすぐに黒絣草の鉢と枸杞の鉢を持って会計に向かった。

    「なんか買って貰ってばかりだなぁ…」

    小さく独り言ちたけれどそれならそうと頑張らないとな。
    まずは…レポート、とか。テストは嫌いじゃないんだけどレポートは書いたことが無いし、時々職場である図書館に来る学生達が非常に苦労しているのを見ていたからちょっと自信ないんだよなぁ…。

    「はぁ…」

    「おや、疲れたかい?」

    今日何度目かの突然の声にまた驚きつつ、慌てて首をブンブンと横に振る。それから首を傾げるシェイムに苦笑いしてから、抱えられた鉢に目を向けた。

    「それより、買ってくれてありがとな…?」

    「あぁ。それでは行こうか。街の外まで送ろう」

    「うん。…ん?質屋は?」

    「君を送ってから行くさ」

    確かにこんな大荷物を抱えたまま行くのは大変…か。
    そう納得して一緒に歩いて来た道を戻っていく。その道中もやっぱり一問一答がメインではあったけれども。

    「復習はちゃんと出来ているようだね」

    「良かった〜…」

    「何か質問はあるかい?」

    「ん、んー…あ、枸杞の食べ方で甘くないのってある…?」

    「……。鍋に入れるか、あとは時間が掛かるが酒にするのも良いだろう」

    「お酒かぁ…」

    「君は蜂蜜で戻して食べればいい」

    「そうだな、そうするよ…」

    なんて話もしながら歩いていけば(またちょっとお裾分けは増えたけど)無事天満の街の外に辿り着き、一気に周りは人通りもなく静かになった。ここならもう転移魔術使って大丈夫かな。

    「ふぅ…本当にありがとうな」

    「あぁ」

    「えっと、お裾分け何個か持って帰る?」

    「必要ない。どうせ家の近くでまた渡される」

    「大人気だな…」

    そう苦笑いしつつ、まずは鉢を置いたシェイムに代わりに持っていた小さな箱を返す。それから流石に荷物が多いので魔法文字ではなく転移魔術の術式をその場に書きつつこの1時間程を振り返った。

    「(楽しかったなぁ…)」

    勿論シェイムは早く柊さんの所に帰りたかったかもしれないけども。
    でももし、もし別に構わないと言うのなら。

    「…なぁシェイム」

    「なんだい?」

    「黒絣草についてレポート30枚纏めてシェイムの評価が良かったら今度異世界に薬の素材集めに行く時、同伴させて欲しい。…てのはアリ?」

    見上げて期待した目を向けてみる。
    そうすればシェイムは少し黙ってから「…考えておこう」と言ってくれた。
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