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    yuno_tofu

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    yuno_tofu

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    アヤがシェイムさんと手を繋ぐ話。
    なんかちょっと暗くなりかけた。

    普通の兄妹何度目かのシェイムさんとの薬用材料調達。
    最初は…というか初回の行先ではまぁ色々と驚くことになったけれど、それ以降の行先はただの店だったり屋台だったりで今のところは問題なくこの外出にも慣れてきた。

    「…よし、お待たせしました」

    いつものようにスマホのメモ帳に購入した材料の名前やその世界の注意事項を書き込み、店の写真を貼り付ける。
    それを終えてシェイムさんを見上げると、どうやら私のスマホを覗き込んでいたらしい。

    「アプリの使い心地はどうだい?」

    「凄く便利ですよ。ありがとうございます」

    アプリ…というのは、今まさに使っていたメモ帳のこと。
    私の使う転移は目的地を思い浮かべるだけで発動可能なのだけども、流石にこう頻繁に異世界に行ってあまりよく知らない材料を買うというのはハルさん程の記憶力が無い私にとっては完璧に覚えるなんて出来るわけも無く、最初は普通に既存のメモ帳アプリを使っていた。けれど写真を貼り付ける機能やメモ内での検索機能がなかったりで微妙な使い心地だなと思っていたところ…。

    『ハウル君に見せる用かい?』

    『いえ、自分で転移使う用です。こうしておけば写真の場所思い浮かべるだけで発動させられるので』

    『ふむ、けれどこのアプリだと写真が貼り付けられないだろう』

    『そうなんですよねぇ。でも写真貼れるアプリ、探したは探したけどそれはそれでメモに文字数制限あったり画質の劣化が酷かったりして…。なので今はメモに日付書いておいて、ライブラリからその日付に撮った写真を探す感じに…。あわよくばフォルダー分け出来て見やすく写真貼れてメモ内の検索機能とかもあれば嬉しいのですが…』

    『それなら簡単だ』

    『え』

    という会話があり、気づいた時にはいつの間にか見知らぬアプリがインストールされていた。…流石シェイムさん。お陰で今では非常に楽にメモを纏められている。

    「何か改善して欲しいことがあれば言ってくれ」

    「はい」

    「それでは次の店に行こうか」

    そう言うとシェイムさんは返事を待たずに歩き出し、私もすぐに隣…から半歩下がった所を歩く。たまに私が何かを聞いたらシェイムさんが答える程度で基本は静かな道中だけれど、不思議と居心地の悪さは無かった。
    しかし、いくら私達が静かでも周りがそうとは限らない訳で。

    「…いつもより人が多いな」

    小さくシェイムさんがそう呟いた通り、まるで何か騒ぎがあったように段々と人の数が増えていく。様子を見るになんだか嬉しそうな人が多いから恐らく有名人がサプライズで来た…とかかな?そう思いつつはぐれないようにそっとシェイムさんの服の裾を掴んだ。…それだけでもなんだか安心出来るから凄い。
    けれどふと前方に目をやるとそこには幼い少女と、彼女と手を繋ぐ姉らしき女性がいて…なんとも言えない気持ちが湧き上がる。

    ─その答えが「羨望だ」と気づくまで、何分かの時間が掛かった。

    自覚してすぐ、思わず表情を歪める。だってそれはあまりにも図々しくて、身勝手で、なんとなく自分に嫌悪感が沸いた。こうして掴ませて貰えるだけでも充分有難いのにどこまで甘えたら気が済むのだと言いたくなる。もしこれ以上甘えて嫌われてしまえば、私は……

    「…アヤ」

    「は、はい?」

    急に名前を呼ばれハッとして顔を上げると、いつの間にか腕にシェイムさんの尻尾が緩く絡んでいた。それに気づいて私は、シェイムさんの顔が見れなかった。

    「何度か呼んでいたのだが…やはり人混みは辛いかい?」

    「いっ、いえ!大丈夫です」

    若干俯きながらの言葉になんの説得力があるのか。
    そうは思ったけれど、私に出来るのは虚勢を張りながらそっとシェイムさんの服の裾から手を離すことくらいで。

    「…すみません、歩きにくいですよね」

    我ながら酷い言い訳だ。面倒な奴だなと思われるかもしれない。─けれど。

    「ふむ、それならこうしておいた方がはぐれる心配が無いね」

    言葉が聞こえると同時に下ろしかけた腕に尻尾が巻き付き軽く前へと引っ張られる。そんな突然のことに驚いて抵抗する間もなく、気づいた時には優しく…けれどしっかり手を握られていた。

    「…えっ」

    「もし君が嫌なのであれば尻尾を掴むと良い。しかし一般的な兄妹関係であればこうしていてもおかしくは無いだろう」

    「っ…」

    普通を切望する私に、その言葉は狡い。
    そう言われたら、離せる訳が無いのに。

    「……ラギさん、怒らない?」

    「弥琴は君に狭量ではないよ。むしろこの場にいれば喜んで君の反対の手を握っていただろう」

    「それは…贅沢、ですね」

    言いながらようやく顔を上げると、シェイムさんは少し安心したような顔をしてからまた前を向いて歩き始める。その「隣」で私もしっかり手を握り返してから、合わせてくれる歩幅に甘えつつ前を向いた。
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