ドゥリビマワンドロライ『スーツ』 きらきらと照明を反射するシャンデリア。モノトーンで構成された重厚感ある調度品。棚に揃えられたアルマン・ド・ブリニャックやルイ十三世といった酒類。
此処はスーツで決めた美男子たちが姫をもてなす場、ホストクラブである。
「ビーーーーマがおらんではないか!」
そんな店に居座る一人の男性客。仕立ての良いオーダーメイドスーツをさらりと着こなし、鍛えられつつ程良く脂の乗った身体と髭の似合う美貌は彼自身も一流のホストではないかと見る者に思わせるが、れっきとした客である。いくつか並べられているソファ席の中でも特に広々とした一角を占拠した彼は、これまた上質な一枚板で作られたローテーブルをばんと叩いた。男性客――ドゥリーヨダナが指名しているホストは他の客の相手をしており、場を持たせるために席につけられたヘルプの新人ホストは冷や汗を流しながら、「ひっ」と小さな悲鳴を漏らす。
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