お揃いー恋人は似てくるのだ、とは何処で聞いたのだったか。
寝室に柔らかな光が差し込む。
丹恒は目を薄ら開け、その凛々しく美しい顔(かんばせ)を左へ向ける。
隣の布団には、胸を上下させながら幸せそうに眠っている景元の横顔が見えた。いつもより幼く見える姿に微笑みながら、丹恒は起き上がり、景元のあちこちに向いている寝癖を右手でそっと撫でた。
丹恒の温い手のひらの感触に気づいたのか、景元はゆっくりと瞼を上げた。
「…おはよう」
「…おはよう、丹恒」
寝起きのためか普段より声が掠れており、丹恒は柄にもなく心臓が少し飛び跳ねた。
景元はまだ眠たそうな目を擦りながら、ゆっくりと体を起こした。
「景元、寝癖がすごいことになっている」
丹恒は景元の頭を優しく撫でながら、髪を整える。
最初は気持ちよさそうに目を閉じていた景元だったが、突如、目を細めながら楽しげに笑い始めた。
「よく見たら丹恒の寝癖と、今君が撫でている、私の寝癖の場所が全く同じだ」
「そんな偶然があるとは、何だか面白いな」
丹恒は慈愛に満ちた顔で、穏やかに笑いながらそうこたえる。
「...............うん、そうだ。せっかくの”お揃い”だ。その証として、髪ではなくて、 お互いの首元に朱を散らすのはどうだろうか。綺麗に映えて、それはうんと美しいと思うよ」
「っ何が〝せっかく"なんだ……それは、俺を誘っているということだろうか」
「ふふっそう思ってくれて構わない。…おいで、丹恒」
景元の豊かな銀髪をまとめている臙脂の髪留めはーー閨事の合図としてーーいつもの習わし通り枕元に除けて。
景元はゆっくりと丹恒を押し倒し、芳しいその首筋に顔を埋めたのだった。