君のせいにできればいいのに「可愛い養い子に恥をかかせたくないから」
「別に強姦されたわけではないから」
「義息子とはいえ、向こうは妖怪なわけで下手に刺激したら何されるかわからないから」
そんなふうに最もらしい言い訳してお前のせいにし続けられればどれだけ都合がいいか。
あれはお前が小学校を卒業するくらいの頃だったろうか。草木も眠る丑三つ時だった。いつもは仕事の疲れで熟睡する俺の意識がふっと浮き上がってしまった。多分何者かの視線が肌に刺さってくるのを感じたからだ。目を開けなくてもすぐお前だって気づいたよ。長年お前たちと関わり続けて見えないものまで見えるようになって、随分感覚が研ぎ澄まされた。お前たちのおかげで妖怪が出入りすることはあれど、この家にはお前とお前の親父と俺しかいないんだ。お前を他の誰かと間違うわけがない。
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