五夏っぽいお題君と夢を見る3題
1.ただの願いだった
2.帰りたくないな、なんて
3.薄らと明るいまぶたの裏


夕暮れ3題
1.置いてきたもの
2.伸びる影
3.おうちにかえりましょう


小さな世界3題
1.海を見に行こう
2.誰もいないバス停
3.暮れる日を恨む


青に溶ける5題
1.透明な色
2.まるで網膜を焼かれるような
3.全部全部塗りつぶして
4.思い出になんかしないで
5.自分だけの物にしたかった


目を細める5題
1.二重輪郭
2.見えるもの
3.いつも、大切なことばかり分からない
4.見たくないものばかり見えるものでして
5.諦めきれないもの


なんちゃって5題
1.例えば明日死ぬとして
2.例えば立場が逆だったとして
3.例えば出会わなかったとして
4.例えばもう会えないとして

ふんわり100題1.はじまりの季節
2.うたたね日和
3.桜の影
4.やかましい、命の音
5.向日葵を抱く
6.暮れなずむ夕日
7.茜の向こう
8.忍び寄る白銀
9.吐息のヴェール
10.めぐる季節

11.あいしてる
12.いつも通り、ね
13.仕様のないこと
14.鉄の温度
15.涙痕の先端
16.あいしてた
17.いつかの約束
18.死がふたりをわかつまで、なんて
19.てっきり、そうだと思ったのだけど
20.ただ、見送る、だけ

21.空に焦がれる
22.天上なんてない
23.雲の海に飛び込んで
24.掴めそうなのにね
25.全てを見下ろしてやる
26.ぼろぼろの翼
27.イカロスの二の舞なんて
28.帰ってきてくれたらいいよ
29.そうやって、また置いてけぼり

いつか一緒に　昨日知り合ったばかりの男は不思議な家に住んでいる。
　階段は外付けで、外壁は淡いミントグリーン、幼児が積み上げた積み木のように、少し凹凸のある三階建て。
　雨ざらしになっているせいか、ところどころ塗装が剥げていて、鉄さびが滲み出ている頑丈そうな階段を昇りきると、何もない屋上に辿り着く。本当に、何もないわけではない。洗濯物干しと台風でもきたら吹き飛ばされそうなプラスチックか何かでできている白い椅子が一つ、ぽつりと置かれていた。
　朝焼けも夕焼けも似合いそうな建物は、だけど北向きの路地に建っていた。周囲も家屋に囲まれているから、反対側がどうなっているのか、一見するだけではわからなかった。
　悟は目に付くあたりがどうなっているのか、その区画をくるくると歩いていた。平均よりもずっと長身の背丈を活かしても、やっぱりその内情は伺えなかった。