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    はいんのいん

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    はいんのいん

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    先日供養したノイ誕プレゼントのマンガ
    最初ギャグの予定だったんですけどね

    死にネタ注意
    無理なら スルーしてください
    ノイ誕はまた別に書く

    #ハイノイ

    無題「お誕生日おめでとうございます!これを。あなたのために作りました!」
    アルが青いリボンの包みを抱えていそいそと俺のところにやってきた。
    「アル、ありがとう。開けてみていいか?」
    「ええ、もちろん!」
    俺はブルーのリボンをほどいた。
    箱から出てきたのはアルをかわいい感じにデフォルメしたぬいぐるみ。
    よく見ると縫い方がいびつでチラリとアルの手を見るとあちこちに絆創膏が貼られいる。
    「アル、これ自分で縫ったのか?」
    「ええもちろん!あなたに差し上げる物、心を込めて私が縫いました!離れててもいつも寂しくないようにと」
    アルは満面の笑みを俺に向けた。
    ふと、俺は考えた。
    「ちょっと待てよ。アルの作ったものだ、変な機能が盛り込まれているんではないか?」
    「あっ、また何か仕込んであるのかとか疑ってませんか?」
    俺は心を見透かされたようにドキッとした。
    「今まで散々やってきたことはお詫びします。でもこれにはそんな機能は仕込んでいません!もし信用できないようであれば透視検査でもしてみますか?」
    「いや、そんなことはしない。アルを信じてる」
    それからバート君と名付けられたそのぬいぐるみは我が家の一員となり、定位置はテレビの前に置かれたソファーの隅っこ。
    アルが出張の時は話し相手に、一人で寝れない時は抱き枕のようにその後何年にも渡って俺の寂しい気持ちを慰めてくれた。

    それから数年後…
    アルが突然亡くなった。
    アプリリウスのカフェでお茶をしてて、会話から俺がナチュラルだということを聞き取ったのだろう、
    「ナチュラルは地べたに這いつくばって死ね!」
    と叫びながらそばの席に座っていた男がいきなり立ち上がり俺に銃を向け乱射した。
    「アーニィ!!」
    隣に座っていたアルがとっさに俺を突き飛ばし銃弾を浴びたのだ。
    ここに住む人達にもナチュラルに寛容でない人がいるということを一時でも忘れていたのが迂闊だった。
    周りから悲鳴が聞こえ、誰かが救急車を呼んでいる。
    そして銃を撃った男は人達によって地面に押さえつけられていた。
    周りのすべてがスローにモーションのように見えて、まるで悪夢をみているようだった。
    腕の中には血に染まったアルがぐったりしている。
    アルは苦痛にゆがんだ顔で俺に
    「アーニィ……。バートの…に…記録チップ…入って…。財産もく…や…」
    と苦しそうに言った。
    「もういいから!しゃべるな」
    と言うと、最後に微笑んで血で真っ赤になった手で俺の頬を撫でて「アーニィ…愛して…」と言い大きく息を吐くとパタリと頬を撫でていた手が落ちた。
    「ア…アル…?」
    俺はアルを抱きしめ嗚咽を漏らし、しばらく動けなかった。
    捕まった犯人は軍人だった弟をナチュラルに殺された事に恨みを持つコーディネーターだったと後に聞かされた。

    葬儀を終えてオーブの家に戻ると出かけた時と何一つ変わっていない室内にいつものようにバートが俺を迎えてくれた。
    バートを見ていると貰った時の事がまるで昨日のように鮮明に思い出されて涙でバートがぼやけた。
    俺はバートを撫でて抱きしめると初めて声を上げて泣いた。
    「バートの腹の中に記録チップが入っている」
    俺はアルの最後の言葉を思い出したが、バートの腹を開ける気にはなれなかった。
    遺産なんかいらない。
    それかから毎日のようにチャンドラやトノムラが入れ替わりに家に来てくれ、未だ呆然としている俺の身の回りの世話をしてくれた。
    それから数カ月後、いつまでもこうしているわけにもいかないと、アルとの思い出が詰まった家を処分することにした。
    チャンドラやパル、トノムラはもちろん艦長やフラが大佐も引っ越しの荷物をまとめるのを手伝ってくれた。
    物のなくなった家はまるでぽっかり穴の開いた俺の心のようだった。
    ここにアルと荷物を運び入れた日の楽しかった事が思い出された。
    最後のトラックが行ってしまうと俺はひとつ 息をついてバートを抱き上げると、ドアを締め鍵をかけ二人の家を後にした。

    それからさらにしばらくすると、アルの実家から財産分与の申し出があり、なにか聞いていないかとの問い合わせがあってついにバートを開かなくてはいけなくなった。
    胴体の部分にナイフを入れると袋に入ったチップが1枚入っていた。
    リーダーに入れて内容を読み込ませる。
    媒体には財産に関する書類が記憶させてあった。
    何枚かめくっていくと突然懐かしい角張った力強いアルの字が現れた。
    俺は ドキッとした。


    親愛なるアーニィへ
    この手紙を見ているということは僕もうこの世にいないということですね。
    あなたをおいて先に逝くことが辛い。
    あなたと過ごせた事で僕の人生は輝きに満ちた幸せなものになりました。
    僕の想いを受け入れてくれてありがとう。
    それまで感情の乏しかった僕はあなたと生きることで色々な感情があるということを知ることができた。
    あなたの笑ったり怒ったり拗ねたりする表情がとても愛おしく、僕の人生を彩ってくれました。

    今生の別れになりますがきっとまたあなたと出会い恋に落ちるでしょう。
    僕は必ずあなたを見つけます。
    その時まで少しの間さよならです。
    また会える日まで
    愛していますアーニィ、あなただけを いつまでも。

    遺産は僕にできるせめてものあなたへのお返しです。
    どうか受け取ってください。

    愛をこめて
    あなたのアルより


    日が落ちて周りが暗くになったのも気づかずに俺はずっとアルからの手紙を見続けていた。


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