もう一度ヒーローになるなら あれは豪華客船での旅の最中、ヨーロッパ、地中海のとある島に停泊したいたときだ。
大昔は貿易港として栄えていたというその島は、現在いくつかの遺跡が残るだけの無人の島であった。
自由参加型の島ガイドツアーで島に降り立ち、時間内自由行動で島の探索をしていた。
島の大きさは端から端まで車を必要とするくらいあり、時間内に回れるのは島が最も栄えていた港周辺に限られていた。
大型船が入港できる自然と人工物が混ざった岸壁。荷揚げをしたであろう広く取られた広場。内地まで荷を運ぶ役目を負った馬たちの馬屋の跡地。商店が並んでいた大通り。島の小高い丘に残る信仰の跡。
それらを巡り、スミスは不思議なことを考えた。
ここに残る残骸は、もしかしたら大昔のものではなく、先の戦いで壊された人の営みの跡なのではないか、と。自分が守り切れなかった跡なのではないか、と。
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