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    Rahen_0323

    @Rahen_0323

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    Rahen_0323

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    完結したシリーズの補完話という名のおまけです。全て幻覚。
    学園に戻って来た時のカキツバタの話、姉弟が戻って来た時のちょっとした話、カキツバタとスグリの和解っぽい話の三本立てです。あんまりしっかり書くとまた長くなりそうだったので全部短い。
    手持ちとの話とかお義姉様との話とかまだまだ書きたい話はありますが、構想固まり切ってないので書かないかもしれない。

    地獄の沙汰もバトル次第 おまけ「たでーま戻りやしたー!」
    退院したオイラがそう部室のドアを潜ると、室内に居た全員が一斉にこちらに注目して。
    座っていた部員は全員立ち上がり、他の皆と一緒に震える。
    「かっ、カキツバタぜんばいいいっっ!!!!」
    「カキツバタ!!!!」
    「ツバっさーん!!!」
    「うおおおっ」
    かと思えばアカマツが号泣しながら突撃してきて、タロやネリネ、ハルト、他後輩達も集った。
    「うわーん!!!帰って来てくれて良かったぁ!!!おかえりぃいーー!!!!」
    「シャガさんや、アイリスさん来て、っ、スグリくんもゼイユさんも休学して……っうう、カキツバタ、もう戻って来ないのかと……!」
    「ネリネも不安でした……怪我も回復したようでなにより」
    「おかえりー!!」
    「うえーん!!」
    なんともまあ熱烈だこと。
    ヨシヨシと順番に宥めて落ち着かせる。連絡は取り合っていたし無事を報せてたが、負傷したのも事実であの姉弟も学園を離れている。祖父や義姉も色々動いてたし、余りにも色々あり過ぎたし、『戻って来ないのでは』と思われててもまあ不思議ではなかった。
    ……こんなに安心されて歓迎されるとは、思ってなかったけど。
    「いやーご迷惑お掛けしやした」
    「迷惑とかじゃない!!」
    「カキツバタはスグリ達を守って傷を負ったと聞きました。……ネリネ達は謝罪を要求していません」
    「んー、まあそこもあるんだけど」
    「だから謝って欲しいとかじゃ、」
    「チャンピオン戦。……スグリと繰り返したのは、迷惑だったろぃ。悪かったな」
    「あ…………」
    「それは」
    冷ややかな目を向けられていると気付いていた。陰口を叩かれていたのも知っていた。しかし、何処をどう取っても悪いのはオイラとスグリだ。それについて文句やらを言うつもりは無い。
    だから謝ったし、出来ることなら償いたいとも思ってる。自分の我儘に沢山の人を、ポケモンを巻き込んでしまったのだから。
    「…………もういいんですよ。カキツバタはスグリくんを、皆を助けたかっただけなんでしょう。確かに大変なことばかりでしたが、でも気にしてません」
    「そうだよ!カキツバタ先輩、ずっと皆の為に頑張ってたじゃん!謝らないで!むしろオレ達こそなんにも手伝えなくてごめん!」
    「ネリネは最大限の感謝を。カキツバタのお陰でスグリは救われた」
    「僕も、今更ですけど尻拭いさせてごめんなさい!スグリを守って、助けてくれてありがとうございます!」
    「んー…………」
    ただこれまた想定外の返答をされて、困ってしまう。三天王とハルトだけでなく、全員が口々に「ありがとう」「こめんなさい」と言うので、その優しさがむしろ心配になってしまった。

    いいのかなあ。こんな風に許されちまって。

    「さ!お互いもう謝るのは無しです!それよりもカキツバタ!」
    「えっはい」
    「またチャンピオンは……リーグ部長はカキツバタに戻ったんです。今度こそは真面目に仕事に取り組んでもらいますよ!」
    「ええ〜〜!ヤダよぉかったりぃよお〜〜!タロの方が向いてんだろぃ!もー疲れた〜〜!!」
    「はいはい、駄々捏ねない!私も手伝いますから頑張りましょう!」
    「オレもやれることある!?」
    「ネリネも協力を」
    「僕も!スグリに代わって四天王になったし、なにかさせてください!」
    手伝うからちゃんとやれ、と言われて、けれどどうせまだポケモン勝負はドクターストップが掛かってるので仕方なくやってみることにした。オイラ達が不在の間も回せてたんだから、タロの方がよっぽど上手く出来る筈なのに……なんでだよぉ怠いよぉ。
    それでも以前に比べると皆は少し甘くなっていて、それもそれで寂しかった。厳しく叱られるくらいが丁度良かったのになあ。

    だけど……幾らか変わってしまっても、やはりこの場所は居心地が良くて。

    早々に「コラ!お菓子食べようとしない!」なんてちょっと怒られながら、自分の努力も無駄ばかりではなかったんだな、とガラにもなく泣きたくなった。










    *****










    スグリとゼイユがブルーベリー学園に復学した。

    その報せはあっという間に学校中に広まって、当然のように皆は不安を滲ませた。
    ただ駆け回り続けていた新四天王ハルトの言葉もあり、とりあえず話を聞くくらいはしようという空気にはなって。
    問題の原因故に責任を取ろうとしてただけなんだろうが、それでもハルトに感謝した。こういう時、オイラは発言の信憑性に欠けてしまうから少し立ち回りにくいのだ。
    帰って来たスグリはハルトの言う通りすっかり暴君の面影を失くし、皆に頭を下げた。

    「迷惑さ掛けて、ごめんなさい。辛く当たってごめんなさい。許して、とは、言わない。でも、それでも俺、償うようけっぱるから……」

    オイラはエリアゼロの後のスグリと会っていたが……本当に元の優しい『普通』の少年に戻ったんだ、とそれはそれは安堵した。
    ……彼は少し暴走し過ぎた。全員が全員手放しに許すとは言えなかった。恨みなんて買いまくってるから、きっとこの先大変なことも多いだろう。

    だけど、ブルーベリー学園リーグ部は、少しずつ元の形へと戻りつつあった。スグリも本気で贖罪をしようと動いている。

    少なくとも、取り戻せたのだ。オイラが求めていた『皆が楽しい元のリーグ部』を。

    同時期にオイラも通院を終えてポケモン勝負も解禁された。あんなことがあったし一応チャンピオンだしで付き合ってくれるヤツは少なかったが、久々に暴れられて楽しくて楽しくて。

    「キミ!!カキツバタくんだよね!?ハルトとスグリから聞いたよ!!ブルーベリー学園のチャンピオンなんだよね!?強いんだよね!?私とバトルしよ!!」
    「勿論いいぜい。アンタ噂のチャンピオンネモだろぃ?期待裏切ったら泣いちゃうぜ」

    特別講師として来たハルトの友人、ネモ、ペパー、ボタンとも何度かバトルして、他の講師とも戦ったりした。

    祖父から話を聞いたというハッサクの旦那にも叱られたり、なんか分からんがパルデアリーグ委員長のオモダカさんに絡まれたりと、色々起きたが。

    戻って来て良かったな、と心から感じた。










    *****










    入院していた頃の分の補講を受けた放課後。
    あの頃の欠席と休学で同じく大量の穴埋めに追われていたスグリと、オイラは何故か部室で二人きりになっていた。

    「「…………………………」」

    それぞれ先生に寄越された課題を黙々とこなしながら、時折お互いの様子を窺う。
    いやなんでこうなった?どうしてオイラ達しか居ねえの?まだ引き揚げるには早えし、多分普通に図られてるよな?なに?気不味いんだけど?
    オイラとスグリは、別に話すことが無いことも無かった。不仲のままで居たいとも違うし、スグリからは度々改めて謝罪をしたいと話しかけられてて。

    ただ、そう簡単に「はい仲直りはい仲良し!」とはならないのだ。
    なにせ本当に色々あり過ぎた。お互いを強くし過ぎた。お互いに感情をぶつけ過ぎた。……周りを巻き込み過ぎた。

    少なくとも以前までの単なる先輩後輩には戻りようがなくて。

    「……………………」
    「…………おい、そこ間違えてる」
    「え、何処?」

    どうしたもんかなあ。このままってのもキョーダイ達に悪いしなあ。和解したい気持ちだけはあるんだがなあ。

    ただ、スグリが嫌なら無理に仲良くする必要は無い。元に戻ったならば今更気にしないんだ。そもそもオイラはゼイユにも好かれてないわけだし。

    しかし皆はどうにか自分達の関係性を修復したいらしい。時々どんな会話をしたかと訊かれる上に今もこうなってるのだから、流石に察していた。

    「………………………」
    「………………………」

    どうしよっかなあ。
    シャーペンを走らせつつ考えていれば、ふとスグリがこちらを見た。
    「なあ、カキツバタ」
    「なんですかい元チャンピオン!手ぇ止まってるでやんすよ」
    「っ……呼び方、じゃなくて。俺、その………」
    なにをソワソワモジモジしてんだか。やっぱ二人きりはキツいのかね。
    移動しようか悩んだところ、彼は意を決したようにオイラの手を掴んだ。
    「カキツバタ!俺!」
    「お、おう」
    まるで一世一代の告白するみたいな勢いと剣幕に怯んで、固まっていたら、

    「俺!!……お前とも、その、ゼロから……!!やり直したくて………!!」

    「………………」
    ゼロから?やり直す?
    ……オイラと………
    「カキツバタと、友達とまでは行かなくても、ちゃんとしたライバルになりたい!また、今度こそ楽しく、ポケモン勝負さしたい!だから……!!」
    「『だから』?」
    「あ、あぅぅ……」
    ここまで言ってしどろもどろになんだから、なんだかおかしくなってきた。
    いつもの揶揄いスイッチを入れ、隣の柔らかい頬をつつく。
    「へっへー!元チャンピオン様はそんなにツバっさんと仲良くしたいんですかーい!?可愛いねーい!」
    「うぅ、そ、そうだよ!!仲良くなりたい!!」
    「お?」
    「沢山嫌な思いさせて、話も聞かないで、怪我までさせて……我儘だってのは、分かってんだ。でも……!!カキツバタのこと知りたいし、出来ることなら一緒に笑っていたい。このままずっと気不味いままとか、あんまりだべ……」
    ふーん。意外だな、オイラのこと結構好意的に捉えてんのか。謝られた時点で凄く嫌いとかではないとは悟ってたけど。
    でも、『ライバルになりたい』『一緒に笑っていたい』とまで言われるのは想定外で、驚いた。随分な口説き文句だねい。
    「だから、今まで、ご、ごめんなさい!!本当に!!」
    「……………」
    「……カキツバタが嫌なら、嫌って言って……そしたら、俺諦めるから…………もう必要最低限しか関わらないって、誓うから」
    勉強そっちのけで頭を下げてくる後輩の頭頂部を暫く見つめて。
    やがてオイラもペンを放り出し、彼の顔を無理矢理上げさせた。
    「良いこと教えてやろうか」
    「へ?」
    「意外かもしれねえが、オイラは心底嫌いな人間に構うほど優しくねえんだ」
    「!!」
    「オイラこそ色々悪かったねぃ。お前の話ちゃんと聞いてやれなくて」
    「やっ、それは俺が……!!」
    「まあなんだ!……どっちみちお前もオイラも直ぐに仲良しこよしっつーのは無茶だろい?焦らずちょっとずついこうや」
    「……………そ、れって!」
    「皆も言ってっけど、許すかどうかは今後のお前次第だなあ。ま、応援くらいはしてやるよ!ドラゴンエールってね!」
    まだ張り付けたモンだったが笑みを浮かべてやると、スグリはみるみる顔を輝かせた。
    「う……うんっ!!ありがとう!!俺、けっぱるよ!!」
    「おーけっぱれけっぱれ!」
    頭をぐしゃぐしゃ撫でながら茶化すと、「わや〜!」と叫ばれた。「髪型崩れる!」なんてポカポカ叩いてくるのが愉快だった。
    「さてと」
    スグリに笑顔が戻ったのを見てからオイラは立ち上がり、部室の出入り口を開けた。
    「「「あ」」」
    「おーっす皆。いやあわざわざこんなセッティングまでするたあ驚きだぜい。なあ、キョーダイ?」
    ずっと自動ドアが反応するギリギリで盗み聞きしていた後輩達は、気不味そうに目を逸らした。
    「お礼にツバっさんとスグリで勉強を教えてやろう!さー入れぃ!」
    「わーーーっ!!オレ勉強苦手なのに!!」
    「ごめんなさいツバっさん!!許して!!」
    「二人はともかく、私達からすると本当にお礼みたいになっちゃいますけどいいんですか?」
    「チャンピオンからの教示……カキツバタとはいえ、期待しましょう」
    「あたしはパス………バトルは当分いいわ」
    「問答無用!リザードン!」
    「それはズルよ!!ハルト、なんとかしなさい!!」
    「僕よりツバっさんの方が強いから無理だよ!!」
    「にへへ……カキツバタ、俺にも色々教えてな」
    「ほらほら、スグリもやる気十分なんだぜーい!」
    すっかり大所帯になっていた手持ち達も使って仲間を部室に引き摺り込んで。

    その後は日が暮れるまで勉強会をした。真面目な皆は案外熱心だったが、座学が苦手なアカマツとハルトはショートしてひんしになったのだった。
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