「ただいまー!お腹すいたぁ…。浮奇はもうごはん食べたよね?私もごはんにしよーっと」
がさがさと袋を鳴らしながら帰宅した恋人は、リビングに入るなりソファーに腰掛け紙袋から新作のバーガーとパイ、更にLサイズのポテトとコーラをいそいそと取り出し始めた。
朝から何も食べていなくて、と疲れの滲む少し掠れ気味の声で語りながらもバーガーの包み紙を手際良く剥く手は止まらず、大きく口を開いてがぶりとかぶりつくと頬を膨らませながら咀嚼する。うんうん、と満足気に頷きながら直ぐに口の中を空にすると、またひとくち、ひとくちと吸い込む様な早さで平らげ、コーラを一気に三分の一程飲んで大きくひと息。豪快ながら口周りを汚すこと無く食べ進める姿に、普段からバーガーをよく食べている事が伺える。
中身の消えた包み紙をくしゃくしゃと丸め紙袋の中へ放り込めば今度はポテトの箱へ手を伸ばし、浮奇の為にこまめに手入れされた爪先で数本のポテトを纏めて摘み口へ運ぶ。
時折唇についた塩を舐め取る仕草がセクシーで、思わず隣にぴったりと寄り添い、カップを握ったままの腕に手を添え頬にキスをした。
「ねぇ、スハ」
ベッドに誘う時の吐息混じりの声で囁くと、少し下からあざとく上目に見つめる。そうすれば、いつもの様に俺に夢中になってくれる。…はずだった。
ちらりとこちらへ投げられた視線に思わず期待し僅かに身を乗り出すも、直ぐに愛おしい瞳はテーブルに乗ったポテトへ奪われてしまった。目論見が外れた事に目を見張り、手を掛けた腕を緩く揺らしながら「スハ…?すーは、…スハヤ」と何度も甘えた声で呼ぶも、ポテトを口に運ぶ手は止まらず何度か咀嚼した後コーラを流し込む。
いくら空腹と言えど、こんなにも可愛く擦り寄る恋人を蔑ろにするなんて、と眉根を寄せ詰る言葉を紡ごうと唇を開くも、それが音になるより早くスハの言葉が落とされる。
「ごめんね、浮奇。私今すっごくお腹空いてるから、とりあえずぜんぶ食べさせて。後で食べるから、君は」
食事の邪魔をするなと咎める様に淡々と告げられた言葉を僅かな間の後理解すると、優しく下手に出る事が大半である普段のスハの物言いとのギャップが凄まじく、思わず喉奥から声にならない声をあげ悶えるしか出来なかった。
そんなの、狡い