百年の恋に待ち草臥れて サム・ウィンチェスターの兄に対する激情は、己のものとよく似ているとルシファーは思った。だから器としてもよく馴染む。
刺し違える覚悟でディーンはルシファーに挑んだだろうが、コルトで大天使を倒せるはずもない。指を一つ鳴らすだけで砕け散るだろうが、衣服を汚したくは無かった。首の骨を踏み潰そうと足蹴にする。彼の目に映るのは絶望というより諦めにも近い虚無感だった。可哀そうに。弟の顔をした相手に殺される最後のディーンの表情は抗う気力は既に無くなっている。
しかし、5年前のディーンが現れると、虚しさがこみ上げたルシファーの心情は一変する。一目見て先ほど首の骨を踏み潰した彼とは違う何かを感じた。一言、二言、会話をしただけだったが、ルシファーを睨みつけるその視線と頬を伝う一筋の涙に胸を焦がす想いに駆られた。これには、己の中にいるサムの感情を大きく揺さぶった。ルシファーはほくそ笑む。
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