🐳🍁🍋🍠のバレンタインデー延長戦 きさらぎの中旬。身を切るほど冷たく澄み渡った空気の中、仄かに甘い予感が香りとなって漂う。地下にある本部にもチョコレートの芳香が届いているようだった。特に強く香るのは、巻戻士たちの自由に使える調理スペースだ。猫も杓子もチョコ作りに熱心であった。きゃらきゃらと賑わう催事場のような空間の中、ぽかりと一箇所だけ穴が空くように静寂が満ちている。クロホンと二人がかりでアカバの調理を修正していたため、シライはその違和感にようやく気が付いた。奇妙な静けさの中心に、弟子の姿が見えたのだ。隣にはレモンもいるようだ。
「素手で適当に砕いたあとは強火で加速じゃー!!」
「焦げるっつか焦げてる!? 直火でいくんじゃねえ! オイ止めろシライ!」
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