飛び出す水着の糸師凛 イライラした気持ちを抱えたまま帰り着くと、エプロン姿の同居人が「おかえり〜」と間延びした声をかけてきた。俺の方をちらりと見て手ぇ洗ってこいよと一言。そのままキッチンの奥へ消えた。
今日の夕飯は唐揚げらしい。パチパチと油の跳ねる小気味良い音と、醤油とニンニクの混じった香りが漂っている。俺の腹が思い出したようにぐぅ、と鳴った。
手を洗い食卓につくと、目の前に揚げたての唐揚げが置かれた。そしてサラダに味噌汁、ご飯。
「おかわりいっばいあるから好きなだけ食えよ」
これでも大分減ったんだけどな、という潔は口をもぐもぐさせながら山盛りの唐揚げの大皿を目の前に置く。よく見れば顔が少し赤い。キッチンカウンターの上に飲みかけの缶ビールがあり、料理中からお楽しみだった事が見て取れた。気楽な奴は良いよなという八つ当たりを唐揚げと一緒に飲み込んで、慌てていただきますを言った。
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