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    redsoullover

    @redsoullover

    書きかけや設定書きたい話のプロットみたいなものをあげている。
    基本的に父水だが、時々違うのもあるかもしれない。

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    redsoullover

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    大阪無配
    続きを書いているのでここにも上げておく。

    嘘つき男 其の壱ある日の雨の夜、一人の赤子を拾った。
    それは、死んだ女の墓から這い出た子だった。
    普通の赤子はそんな事は出来ない。
    幾ら独り身の自分でもそれくらいは分かる。自分はその赤子は人ではないと察した。だから人の世に出る前に殺してしまおうと思った。
    自分は赤子を抱き上げ、その身体を墓石に叩きつけようとした。
    しかし、出来なかった。
    叩きつけようとしたその瞬間、音が、そして声が聞こえた気がした。
    カランとした乾いた音と、自分の名を呼ぶ男の声を。
    実際そんな音など聞こえる訳はなかった。
    聞こえるのは雨音だけ。
    そう、それは俺自分の頭の中にだけ聞こえた音。
    それが何を意味するのか、その時の俺自分自身には分かるこ事はなかったが。

    赤子を家に連れて帰れば、母親は驚いた顔をした。
    何かを言いたげな様子であったが、ずぶ濡れで赤子を抱く自分の姿を見て結局何も言わずに手拭を取りに部屋に戻った。
    手拭を手にし戻った母親は、自分の手から赤子を奪うと手拭手で濡れた身体を拭きながら言った。
    「お前も早く着替えなさい。風邪をひきますよ」
    「すみません。ありがとうございます」
    「本当に、何をしているのか」
    母親の言ったその言葉は、一体何に対してのものだったのか、それはもうわからない。

    それからは母親の手を借りながら赤子を育てた。
    育てると言っても、自分には仕事があったので日中は殆ど母親が育てていたようなものだった。
    それでも母親は仕事から帰った自分に、少しでも赤子の面倒を見させようと、やれ風呂に入れてやれ、やれミルクを飲ませてやりなさい、やれ泣いているので抱きなさいと言った。
    休みの日になれば、平日は赤子の世話で疲れているのでお前も休みの日くらい家事を手伝いなさいと洗濯や食事の支度を手伝いをさせられた。
    しかし、赤子を拾ったのは自分自身であったので、それに対して文句は言える立場ではなかった。
    そんな日が続いたある日、母親は赤子を抱きながら自分を見ずに言った。
    田舎の母親の姉より便りが来ているのだと。
    商家に嫁いだ母親の姉が、人手が欲しいと母親に声をかけているのだと。
    生活の面倒は見るし、給金も出すから帰って来たらどうかと。
    何なら、男手も足りないとも。
    夫を亡くした母親を、姉は心配しているのだろう。そして、事故に巻き込まれ記憶を無くした自分の事も。
    「ありがとうございます。けど、僕は残ります。この子が居ますから」
    「その子の事も伝えているよ」
    「しかし、この子の両親がここに居ますから」
    「そうかい、好きにおし」
    それっきり母親は何も言わなかった。
    何も言わずに抱いていた子供を自分に手渡した。

    それからすぐして母親が家を出て行った。
    思った以上に伯母の家が大変だったようで早く来て欲しいと言われていたようだ。しかし、自分と赤子が居るため、必要最低限の生活を営むことが出来るまでギリギリまで家に留まって居てくれたようだった。
    その事を知ったのは母親が亡くなった後だったが。
    母親は、自分に必要最低限の家事育児を教えてはくれた。しかし、そうとは言っても、今まで日中に母親が対応していたことを自分自身で行わなくてはいけない。そしてそれは思ってた以上に大変なものであった。
    そもそも、日中仕事に行っているのに、赤子の面倒はどうするのだ。
    それを自分は分かっていなかった。否、分かってはいた。だけども、どうにかなると思い込んでいた。
    そして、どうにもならなかった。
    母親もそれは良く分かっていたのだろう。
    近所に住む独り身の気の良い婆さんに日中子守を依頼できるようにしてくれていたが、それはあくまでも日中の限りある時間である。
    婆さんは婆さんで生活はしているし、幾ら金子を包んだところであくまでも母親の伝で善意での子守であった。
    時間が来れば赤子を置いて自分の家に戻るので、婆さんが家を去ってからそうそう赤子を放置することは出来ず、自分はそうそうに仕事を切り上げるしかなかった。
    幾ら哭倉村での失敗で営業という花形の仕事から事務へと異動させられた身であっても、毎日毎日早退なんぞ出来やしない。定時になるなり仕事を終え家に帰り、無事に生きている赤子の姿を見て安堵の息を吐いた。
    毎日毎日無事かと思いつづけるのは、思った以上にその身と心を疲弊させていたのだろう。
    ある日家に帰れば赤子の周りをうろつく鼠の姿。それを見て自分は嗚呼、駄目だと悟った。
    そもそも独りで赤子の世話をするなんて無理なのだ。
    今はただ寝ているだけの赤子であるが、これから大きくなれば寝返り、這って歩いて・・・。
    嗚呼無理だ。
    独りでは無理だ。
    そう思うともう駄目だった。
    悲しくはないのに涙が溢れ出る。
    「誰か」
    もう駄目だと滲む視界で部屋を見渡すも、そこには誰も居ない。
    そうだ、母親はもう居ない。
    頼れる者はもう居ない。こうなると分かっていたから貴方は一緒に行こうと声を掛けたのだろう。
    しかし、あの時はここから動いてはいけないと思ったのだ。
    赤子を母親から離してはいけないと。もう死んでしまっているにのに。
    その結果がこれだ。
    「なぁ、お前はどうしたい」
    赤子に声を掛けるが返事はない。
    そうだろう、泣くしか出来ない赤子だ。だからこうなっている。
    「なぁ、僕はどうしたい」
    自分に問い掛けるも答えられない。
    分からない。
    分からないから誰かから答えが欲しい。
    「なぁ、誰か・・・」
    答えなんて返って来ない。
    そう思っていたのに、その時小さな声が聞こえた気がした。
    それは自分の名を呼んだ。
    「・・・・・・き・・・」
    「何だ、声が・・・これはもう完全に駄目だなぁ」
    自嘲すれば自分を呼ぶ声が大きくなった。
    「み・・・きや、み・・・ずきや、みずき、水木や」
    今度ははっきりと聞こえた声の方向を見れども、声の持主の姿は見えない。
    「はは、誰か居るのか?居るんなら姿を見せてくれ。助けてくれるならお化けでも幽霊でも、もう誰でも良いよ」
    言えば声が近くなった。
    「水木や、儂はここじゃ。ほれ、下を見よ」
    甲高いその声に導かれるように視線を下げれば、そこには奇妙な物が落ちていた。
    「目玉?」
    よくよく見れば、目玉ではなく目玉に小さな身体が付いた物が自分を見上げ話しかけて来る。
    「嗚呼、幻覚が見える。僕は頭がおかしくなってしまったのだろうか」
    自分に言い聞かせるように言えば、奇妙な目玉は少し怒ったように言った。
    「おかしくなんてなっておらん。儂は目の前にちゃんと居る」
    「うん、しかし・・・本当だ、居る」
    目玉に手を伸ばし突いてみれば、確かに触れた感触がする。
    「これ、突くでない」
    「それで、目玉が一体僕に何か用かい?僕はこの赤子の事で忙しいんだ」
    「赤子、そうじゃ、鬼太郎じゃ」
    目玉は言った。
    「鬼太郎?それは誰の名前だ?」
    問えば目玉は答えた。
    儂の倅の名前じゃと。
    せがれ・・・セガレ・・・倅。
    倅・・・子供か・・・。
    「この赤子は鬼太郎と言うのか」
    「そうじゃ、儂が妻と一緒に考えた名じゃ」
    目玉は言う。
    儂、妻、妻、赤子の母親は廃寺で死んでいた女で、自分が墓に埋めた。
    それを妻と呼ぶこの目玉は・・・。
    「お前はあの包帯の男か。何か姿が変わっているから分からなかったぞ」
    問題はそこではないと、真面な頭であったなら分かるのだろが、その時の自分は慣れない育児に頭がおかしくなっていたのだろう、目玉があの包帯の男だとすぐに結び付けた。
    「水木や、御主鬼太郎の事を何と呼んでおったのじゃ」
    「赤子は赤子だろう、ああ、後はその子とかか」
    言えば目玉の声が震える。
    「御主、何故名を付けなんだ。儂には簡単に名を付けたであろうに」
    「何を言ってるんだ、赤子は赤子だろう。ん、そうか、名前付けるよな。何で付けないでおこうと思ったんだ」
    目玉の言葉に首を傾げる。
    人間なら、子供に名前を付けるだろう。幾ら拾ったとは言え、自分で育てようとした子だ。
    それなのに何故。
    それに、自分はこの目玉に名前を付けたにたのか。
    思い出せない。しかし、それが目玉の嘘とも思えない。
    自分は何を忘れているのだろうか。
    そして、目の前の目玉は何を知っているのだろうか。
    「水木や」
    目玉が自分を見ている。
    「ああ、なんでだろうな。ただ、自分が付けるべきではないと思ったんだ」
    言えば目玉は黙り込んだ。
    黙ってただ自分を見詰めるだけだった。

    その日から、赤子と、否、鬼太郎と目玉姿の鬼太郎の親父との奇妙な生活が始まった。
    目玉の親父は目玉の姿だけあって家事育児に全く役は立たなかった。
    ただ、子守の婆さんが家に帰った後は目玉の親父が鬼太郎を見ているため、何か危ない事になっていないかと心配することはなくなった。
    しかし、親が見ているとは言え、それは目玉。
    鬼太郎がお腹が空いたと泣けども、抱くことも何かを与える事もできず、ただ声をかけてあやすだけしか出来ない。
    「儂に身体があればのぉ・・・」
    小さい身体をもっと小さくして俯き座る目玉の親父に自分は言った。
    「仕方がないだろう、なくなったものはどうしようもない。それより鬼太郎の面倒を見てくれる者を探した方が良いだろう。誰かお前のその姿を見ても驚かない知り合いとか居ないのか?」
    「うーむ、居ることは居る。金か食物を渡せばある程度のことはしてくれるが」
    「金のことならある程度は気にするな。」
    言えども目玉の親父は浮かぬ顔をする。
    「あまり気は乗らぬが仕方がない」
    「そうか、鬼太郎の世話が頼めるのなら今よりもう少し仕事は出来るだろうから気にするな」
    「そうではないのだが・・・」
    「ん?」
    「まぁよい、近々そやつを捕まえてくる」
    そう言うと目玉の親父は窓際に行くと何か分からぬ言葉を発した。
    「これでよい、近日中には新しい子守が来るぞ」
    言うと自分の顔を見た。
    良い方に転べば良いが
    小さく声が聞こえた気がした。


    それから数日して、新しい子守が家に来た。
    目玉の親父にねずみのと呼ばれたその男は、人と妖怪との間に生まれた半妖とのことだった。
    ねずみのと呼ばれた男は、自分の姿を見ると笑って言った。
    「幽霊族の旦那に人間と居ると聞いて驚いたけど兄さんだったんですか。元気でしたか」
    「ん?どこかで会ったのかな?少し記憶が無いところがあってね。えっと・・・ねずみ・・・君で良いのかな」
    言えばねずみ君はその顔に浮かべた笑顔を消した。
    「兄さん」
    「そう言うことじゃ。ねずみの」
    そんなねずみ君に目玉の親父は言った。
    「はいはい分かりましたよ。本当に怖いねぇ」
    「本当に」
    怖い怖いと態とらしく目玉の親父を見ながら震えるいたねずみ君だが、くるりと自分に向かうと言った。
    「それじゃ兄さんお給金分しっかり働かせてもらいますよ。僕はお給金を頂ける方の強い見方なので」
    言いながら笑うねずみ君に自分も知らず笑が浮かぶ。
    「よろしく頼むよねずみ君」
    そして奇妙な生活が始まったのだった。


    「いつもありがとうな」
    仕事から家に帰ればねずみ君が鬼太郎をあやしながら哺乳瓶でミルクを与えていた。
    「いえ、僕はお給金分は確り働きますよ」
    「それでもきちんと給料分働けるというのは立派だと思うぞ。あの時は・・・あの・・・時?」
    不意に脳裏を何かが過ぎった。だがそれが何だったのか直ぐに霧散し分からない。
    「何にしても感謝してるよ」
    「兄さん・・・あんたきお」
    「ああ、そう言えば目玉の親父さんはどうしたんだい?」
    そういえば鬼太郎に父親である目玉の親父の姿が見えない。どこに行ったのかとねずみ君に尋ねれば、ねずみ君は嗚呼と息を吐いて言った。
    「何やら知り合いに会いに行っているらしい。場所までは聞いていませんが古い馴染みみたいで」
    「そうか、烏天狗のところなら美味い酒が手に入るかもしれないな」
    ねずみ君の言葉に思わず漏れた言葉に驚愕した。
    今何を言った。
    烏天狗の酒って何なんだ。
    嗚呼おかしい。
    ねずみ君が家に来てから何かがおかしい。
    そう思いねずみ君を見れば、何か思うところがあるのかくらい顔をして自分を見ていた。

    失った記憶。

    思い出してはまた消える記憶。

    なぁ、お前は・・・否、お前達は何を知っているんだ。
    「なぁ、ねずみ君・・・君は・・・」
    「水木や」
    自分の問いが新たな声に掻き消された。
    見れば今まで自分とねずみ君と鬼太郎の三人だけだった部屋に小さな人影が増えていた。
    「今帰ったよ」
    影は小さな目玉の姿。
    鬼太郎の父親である目玉の親父。
    赤い目玉がにこりと笑った気がした。
    「嗚呼親父さんお帰り。僕も今帰ったばかりだけどな」
    言えば赤い赤い目玉は笑う。
    赤い、血のように赤い、赤い赤い血を纏った。
    嗚呼、赤い目玉、血が血が血が血が・・・。
    嗚呼、鬼太郎、ねずみ君、沙代さん、時弥君・・・ゲゲ郎・・・。
    ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
    忘れてごめんなさい。
    「ごめ・・・んな・・・さ・・・」
    意識が・・・。


    目が覚めると居間で座布団を枕に寝転がっていた。
    「兄さん、大丈夫ですか!」
    「水木や、大丈夫か」
    声をする方を見れば、そこにいたのはねずみ君と目玉の親父。
    「あっ、ああ、一体どうしたんだ」
    「兄さん突然倒れたんですよ」
    「水木や、大事ないか」
    ねずみ君と目玉の親父が心配するように覗き込んで来る。
    「ああ、大丈夫・・・だ。心配かけたな」
    仕事で疲れていたとようだ言えば、二人はまたもや顔を覗き込んで来る。
    「本当に疲れていただけか」
    「ああ、もう大丈夫だ」
    「そうか、疲れはいかぬ。今日はもう早く寝るのじゃ」
    目玉の親父が言った。
    「そうだな」
    言って再び目を閉じた。


    再び目を覚ました時、布団の上にネクタイを取り首もとを寛げた姿で寝かされていた。
    「これはお前がやったのか」
    言って枕元に座る目玉の親父を見た。
    「嗚呼、今の儂ではこれが限界じゃここにはねずみのに運んでもらった」
    「仕方がない、目玉だけじゃ」
    「前の儂なら倒れた御主なんぞ簡単に運べた。否、倒れさせたりなんぞせぬわ」
    「そうか?お前には何・・・」
    「何じゃ、言うてくれぬのか」
    目玉は問う。
    「御主記憶が戻ったな」
    「記憶とは何だ」
    「嗚呼、強情じゃ可愛くないのう」
    目玉は溜息を吐く。
    「三十も過ぎた男に可愛いげなんぞあるわけないだろう」
    「妖からみれば三十なぞ子供じゃ」
    「だが僕は人間だ。人間だから・・・」
    それ以上は言えない。
    人間だから記憶を失いお前達から逃げて助けられなかった。そんな男が今更。
    「本当に強情じゃ」
    「強情も何も僕は目玉の化物と包帯の大男しか知らない」
    「嘘はいかんよ。妖に嘘がばれると報復が待っておるぞ」
    目玉は少し低い声で笑った。その声が少しあいつを思い出させる。
    「報復って」
    「そうじゃのぉ、頭からバリバリと食べてしまおうか。それとも柔らかい腸から喰ってしまおうか」
    「何だそれは、僕は喰われてしまうのか」
    「人が好きな妖も居るからのぉ」
    そうか、それも良いかもしれないな。
    「それならお前が元に戻ったら僕を喰ってしまえよ」
    「嘘を認めるのか」
    「さぁな」
    目玉に笑ってやる。
    「妖に簡単に約束なんてするものではない」
    目玉は怒るがそれを無視した。
    「約束を守れなかった嘘をついた人間なんて頭から腸まで喰っちまえ」
    戻ったらまた酒を酌み交わそうと、奥さんを無事に逃がすと、何があっても逃げるでないとそんな約束を忘れた人間なんて喰らい尽くして忘れてしまえ。
    なぁゲゲ郎、お前が元に戻るまで僕は嘘を重ね続けるよ。
    いつかお前に喰われるその日まで。






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