推しができましたよ、お姉ちゃん「お姉ちゃん、お姉ちゃん!次あの店ね!」
「はいはい。引っ張らなくてもでも大丈夫だよ…」
「時間は有限!ほら行くばい!!」
僕と啓悟の休日が偶然重なった日、朝からデートという名の買い物に連れ出された。いや、買い物という名のデート?どっちだ?まぁいいか。
お互いの服をコーディネートしたいという啓悟のおねだりを聞くためにあちこち回ってるんだけど、まだ回るの…?いくら荷物を宅配にしてるからって買いすぎじゃない…?これが普通?ソウデスカ…。
「ん、あれは……お疲れ様でーす!ジーニストさーん!あいるちゃんも!」
「何の用だホークス。私とあいるのデートを邪魔するな」
「つ、維くん!!」
ベストジーニスト?と…隣の女性は誰だろう……というかめちゃくちゃ可愛いな?えっアイドル?モデル?いやでもあんな可愛い子見たことない…。
「ジーニストさんヒドイですwあ、あいるちゃん紹介します。俺のお姉ちゃんです。お姉ちゃん、こちらあいるちゃん。ジーニストさんの彼女さんです」
「は、はじめまして。あいるです」
「…………」
「お姉ちゃん?どげんしたと?」
「…………」
「え、ええっと…」
「お姉ちゃん!?あいるちゃん怖がっとるばい!?」
「っは…ごめんなさい。考え事してました」
「あいるを凝視して?何を考えていた」
「いや…こんな可愛い子見たことないなと…彼女アイドルですか?それともモデル?あ、女優さん?」
「お姉ちゃん…気持ちはわかるけどあいるちゃんはただの雄英生ばい…」
「嘘やろ!?アイドルでもモデルでも女優でもなかと!?こげんあいらしかとに!?」
「ホークスさん、ホークスさんのお姉さん今なんて言ったんですか?」
「『嘘でしょ!?アイドルでもモデルでも女優でもないの!?こんなに可愛いのに!?』って」
「か、可愛いだなんて…ありがとうございます///」
照れるところも可愛い……雄英か…雄英に行くことないから見逃してたのか…今度目良さんに雄英関係の仕事ないか聞いてみよう…。
「…………あ、僕名乗ってなかったですね。申し訳ありません。鷹見朧と言います。よろしくお願いしますあいるさん」
「よろしくお願いします」
「かっわよ」
「「「!?」」」
「…っと失礼、本音が漏れました」
「おいホークス。彼女こんな性格だったか?」
「…前に公安でジーニストさんの写真集読んでる時はこんな感じだった気がします」
「写真集?……それってこの間出たやつですか?限定版が2種類あった…」
「あ、はい。それです。店舗予約限定版とweb予約限定版があったやつです。公安で読んでたのは店舗予約限定版ですね」
「あの写真集よかったですよね!!私10ページの写真がすっごく好きで…」
「わかります。あの真剣な眼差しはベストジーニストでないとできません。まさに芸術…いえ国宝にすべきかと」
「わかります〜!!すっごくかっこよかったですよね〜!!」
さすがベストジーニストの彼女さん…!僕が公安でこういう話すると誰もノってくれないけど、あいるさんは共感して、更に感想まで言ってくれる…!!楽しい…!!
「あー…お二人さん?よかったらどこかでお茶しながらお話します?」
「えっ?あ!も、申し訳ありません!僕お二人のデート邪魔してしまいましたよね!?つい語り過ぎてしまって…!」
「あっ…!そんな私こそ!ホークスさんとホークスさんのお姉さんの邪魔しちゃってごめんなさい!!」
「あいるさんが邪魔など一切あり得ないのでそこはご安心いただければ……あ、僕のことは『朧』でもいいですし、『ホークスさんのお姉さん』を縮めて『お姉さん』でもいいですよ?ベストジーニストも申し訳ありません…」
「いや、構わない。それよりもホークスの言うとおり、どこかでお茶でもしないか?」
「えっ?よ、よろしいのですか?デート中ですのに…」
「あいる、どうかな?」
「もちろん!私もっとお、お姉さんとお話ししたいです!」
「待ってかわいい子がかわいいこと言ってくれとる(ではどこかお店に行きましょうか)」
「お姉ちゃんたぶん心の声と言ってること逆」
「個室のカフェなんて初めて…」
「よく知っているな」
「職業柄、個室がある店は必要になりますから…」
公安でよく使っているカフェが近くにあったのでそこに案内した。個室必要なんだよね…機密情報とか裏社会の話とかするから…。
「職業柄?お仕事は何をしてるんですか?」
「彼女はヒーロー公安委員会の職員だよ」
「公安委員会の!?すごい!カッコいいです!!」
「生まれて初めて報われた気がする…」
「お姉ちゃん…涙拭きなよ…」
あいるさん可愛いなぁ……お店入ってからキョロキョロしてるのめっちゃ可愛いし、コロコロ表情変わるのも可愛いし、小っちゃ可愛いし……ハムスターみたい…………飼うか?
「いや飼うかじゃねーばい!!!!」
「お姉ちゃん!?」
「お姉さん!?」
「…は?朧お前今なんて言った?」
「申し訳ありませんベストジーニスト僕です僕の煩悩が悪いんですひと思いに殺してください」
「潔いな。絞殺でいいか?」
「「二人とも待って!?」」
土下座する僕を啓悟がかばう。止めないで…!僕が全部悪いんだ…!
ベストジーニストの方を見るとあいるさんが説得していた。そんなことしなくていいんですよ…!!僕が…僕が煩悩まみれなのが悪いんですから…!!
このカオスな状態は店員さんが注文した物を持ってきてくれるまで続いた。ごめんなさい店員さん…。
「……はぁ、今回は彼女に免じてやるが…次はないぞ」
「シュア、ベストジーニスト。この命に誓って二度としません。必要とあれば文字通りの『指切り』もいたします」
「いやお姉ちゃんそれただの指詰め!」
「だそうだがしてもらうか?あいる」
「怖いよ!しなくていいよ!!お姉さんも何だかよくわからないけど私気にしてませんから大丈夫ですよ?」
「聖女…?ありがとうございます」
「お姉ちゃん落着きんしゃい。ほらコーヒー飲みな?ケーキ食べる?はいあーん」
あいるさんが優しすぎて涙が止まらんよ…。ああ…ハンカチがもう涙でビショビショに…今度からバスタオル持参しないと…。
「…ん、このケーキおいしい」
「ほんと?じゃあお姉ちゃんのもひと口くれん?」
「いいよ。はい」
「あー…んーうま」
啓悟のチーズケーキをもらったお礼に僕のガトーショコラをあげた。普段飲み物しか頼んでなかったけどケーキおいしいな…。今までもったいないことしたなぁ。頼めばよかった。
ふと、あいるさんを見ると、ちょっと驚いた顔をしていた。えっ?何か変なことしたかな?
「あいるさん?驚いたような顔をされましたが…何かありました?」
「いえ、お二人仲がいいなぁって思って…」
「…と、いうと?」
「その…ご姉弟で『あーん』ってしてたので…///」
「…えっ姉弟で『あーん』ってしないんですか!?僕ら今まで普通にしてましたが!」
「どうでしょう…あんまりしないんじゃないかなぁと…あっでもおかしいことではないと思います!仲がいいなぁって感じるくらいで!ただその…ホークスさんとお姉さんってひと目じゃ姉弟ってわからない人多いんじゃないかなぁ…って…だから…その…///」
「……僕と啓悟が恋人に見えるかも、と」
「……はい」
申し訳なさそうに頷くあいるさん。申し訳ないのはこちらですよ…ほんと……。この店に来るまで結構僕ら距離近かったですよね…?つまりそれも傍から見ると恋人に見えていたと…店に入って一緒にメニュー見てたのも恋人に見えていたと……何それつまり僕らめっちゃいちゃついてる恋人みたいだったってことか…?
「うわ……ごめん啓悟…お姉ちゃんのせいで週刊誌にすっぱ抜かれたらごめん…腹斬って詫びるわ…」
「さっきから詫び方が怖いんだけど…」
「というより今更だな。君ら普段から距離が近かったぞ?無意識か?」
「そう思ってたなら言ってほしかったですねベストジーニスト…僕らが最近和解したの知ってるでしょう…」
「それはすまない。うっかりデニムだな」
「和解…?」
おっと…あいるさんは知らなかったんだった。
「あー…僕ら最近までずっと疎遠でして…こう仲良く買い物とかするようになったのついこの間からなんです」
「公安で意図的に疎遠にさせられたってのが正しいですけどね。だから姉弟の距離がよくわかんないんですよねー。そっか…『あーん』は姉弟だとしないんか…」
「そんなことが…」
「ちなみに私とエンデヴァーが無理やり和解させた」
「無理やりなんだ!?」
「無理やり……まぁ無理やりと言えば無理やりかな…」
「食事会強制参加させて二人で話し合わせて和解は無理やりばい?」
そうだね…あれは無理やりだったね……まぁ感謝はしているけど…。っと……僕らの和解話はどうでもいいんだよ。今は僕らの距離が近いって話だよ。
「どこまでがセーフなんだ…?恋人に見えることがアウト…恋人って何するの…?あいるさん恋人同士ってどんなことやってるんですか?」
「ふぇ!?///え、えっと…///」
「できれば実践していただけるとより精巧に我々のパーソナルスペースの改善ができるのですが…ご協力をいただけませんか…?」
「ええ…///つ、維くん……///」
どうしよう…とベストジーニストに尋ねるあいるさん。チラッとベストジーニストを見ると目を細めて僕を見据えていた。これはアレかな、「お前何を考えている?私のあいるを困らせるな殺すぞ」って視線かな?いえ困らせる気は全くないですよ?健全に僕らの改善を目的としたデータ収集がしたいだけですよ?あわよくばベストジーニストとあいるさんがイチャイチャしてるところが見れたらいいなーぐらいで。あとはほら
(あいるさん優しいから、協力してくださいってお願いしたらいつもよりもっとイチャイチャできるのでは?と思いまして)
(…お膳立てされなくてもする)
(でも事がスムーズに運びません?)
(嫌がる姿を見るのも楽しいんだ。余計なことはしなくていい)
(…はーい。失礼しましたー)
歪んでるなぁ…ドSなんですから…。
「…まぁ、普段通りのお二人を見させていただければ僕としては満足です」
「視線だけで会話完結させんでよ…」
「えっ?えっ?」
戸惑ったように僕と啓悟を交互に見るあいるさん可愛い…。ねこちゃんみたい…なでなでしたいなぁ……したらベストジーニストに殺されるだろうなぁ…。一回だけでもダメかな…ダメだろうなぁ…。む…いかんいかん。またあいるさんを怖がらせてしまう。
真顔でじっと見つめてしまった。反省を込めて自分の頬をムニムニ触る。笑顔笑顔。
「…可愛い」
「?あいるさんどうされました?」
「あっ、いえ、その……お姉さん可愛いなぁって思って…ごめんなさい目上の方にこんなこと…」
「……僕が…可愛い?」
「そ、そんなびっくりした顔しなくても…」
「いえ……その………言われ慣れてないので…」
「待って俺しょっちゅう言っとるばい!?」
「啓悟のは…その……弟フィルターかかったソレかなって…」
「何それ!?心ん底からお姉ちゃんあいらしかって思うとーとに!」
「ホークスうるさいぞ。会話を遮るな黙っていろ」
お姉ちゃんもジーニストさんもひどい!!と顔を覆って嘘泣きをする啓悟を横目に、むー…と口を尖らせながら頬をムニムニ触る。
可愛い…僕が可愛い……可愛い…?当たり前だけど自分じゃわからないな…というか絶対僕よりあいるさんの方が可愛いって。僕の可愛さとは…?あいるさん優しいからそう言ってくれただけなんじゃないかな…?
「…お姉ちゃん、そういうとこばい」
(うんうん)
「そういうとことは…?」
「そういうとこだな、まぁあいるの方が可愛いが」
「維くん!!///」
「あいるさんの方が可愛いです」(うんうん)
「お姉さんまで!!///」
「まぁ何だ、人の目など気にしなければいい。君とホークスがどう思われようが堂々としていろ。それが一番だ」
「…なんか……ベストジーニストめんどくさがってます?」
「心底めんどくさい。お前たちが世間からどう思われようと私とあいるには関係ないからな。心底めんどくさい」
「二回も言った…」
「相当めんどくさがっとるばい…」
優雅に紅茶を啜るベストジーニスト。毎回お世話になって申し訳ありません…。
「はぁ…あいる、ケーキ食べないのか?食べさせてあげよう。はい、あーん」
「ちょ…維くん!どうしたの!?」
「こいつらの面倒をみて疲れたようだ。あいるで癒やさせてくれ。あーん」
「あ、あーん……///」
頬を赤らめてベストジーニストからあーんをしてもらうあいるさん…めちゃめちゃ可愛い…。
「啓悟、あいるさんのファンクラブとかある?」
「あるばい?こん間ファンクラブ会員でカラオケ行ったし」
「入会するわ。ちゅうかベストジーニストとあいるさんの親衛隊とかある?なかなら結成する」
「顔がマジばい…」
「こげなとマジになるやろ…尊いがすぎるもん……」
この後、めちゃくちゃベストジーニスト語りして、連絡先交換しました。楽しかった…ありがとうございましたあいるさん…。今度またお茶しましょう…。最高に良い日だったなぁ…。