ストップ・メイキング・センス「狂児さん、好きです」
「ぇあ」
挨拶を交わすような気安さで、それでいて急所を外さない鋭さで。それにしたってあまりにも唐突だった。反応して出た声は今まで生きてきた中で発したもののうち、一番間抜けなものに違いない。
聞き間違いの可能性もある。なにしろうたた寝からの寝起きで意識がまだはっきりとしない。午後になると陽射しが差し込む窓辺でうとうと、なんて年寄りのようなことをしていたら本当に寝てしまっていた。長い時間ではないはずだ。窓から吹く心地よい風が聡実くんの前髪を揺らすのを見ていて瞬きをした瞬間、次に目を開けた時は仰向けになっていた。
「寝てた……」
「そんな長い時間やないですけど、おはよう」
「お、はよう、ございます」
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