大好き俺は、史上最も危機かもしれない
「なあ、大好き」
後ろの席の彼氏から、求愛されている、、、!?
こうなったのは遡ること10分前…
今は家庭科の授業で、テストが直前に控えているということで残った時間は自習になった時だった。流石に赤点は免れないといけないから、勉強しようと机の中を漁る俺。すると、ペンで背中を突かれた。ため息をつきながら後ろに振り向くと、案の定、ニヤニヤとした笑みを浮かべた彼氏がいた。
「なんだよ」
「こっち向けよ」
「なんでだよ」
自習中なのも相まって、声のボリュームを落としながら喋る俺。こいつも周りに迷惑をかけないようにと声を下げる。まあ、そういうとこ、嫌いじゃないんだけどな。
「え、なんでだよ」
「いいから」
こいつと小声で話しているが、さっきから視線が痛い。こいつの後ろの席の女子の視線だ。こちらの女子は頭脳明晰で運動もできる才色兼備の子で真面目だ。俺らが話しているのを時々じとりと静かに睨む。メガネの奥でわずかに細められたその目が、殺されそうで怖い。美人の怒っている姿など、見たくないものだ。
「ほら、向けって」
そして
こいつはそんなことを考えている俺のことなど知らずにそう話しかけてくる。
「はぁ…ったく、しゃーねーな」
俺は体を少しこいつの方に向ける。流石にむしろに向くと彼女と目が合うし先生からもお叱りを受ける。が、その思い空しく。
「体こっち向けて」
と腕を掴まれる。そして半強制的にこいつの方を向かされる。彼女の視線が参考書からこちらに動き、また参考書に戻った。
「え、なn」
「大好き」
突然の愛の告白に、硬直する俺。顔が熱をもつのを感じる。
まずい、やばい
俺の反応に、こいつは口に弧を浮かべて綺麗に笑う。くそ、顔がいい。
「なあ、お前は?」
「は?」
「俺のこと、好き?」
完全に調子に乗っているこいつは、授業中にも関わらず、俺を口説いてくる。
「は、はぁ!?」
「なあ、大好き」
「お前は?」
ニヤニヤするこいつと、後ろから鋭く睨みつける彼女。そしてこちらを気にするようにしている先生。
絶体絶命だ。
誰がなんと言おうが
これは
危機!!!!!!!!
「…ここで言わないといけねーのかよ」
「おん」
俺言ったぜ?
なぜか誇らしげに笑うこいつ。そしてため息を吐いて参考書に視線を移す彼女。先生はというと、スマホを触っていた生徒をお叱り中だ。
ここで言うなんて…
恥ずかしいが、腹を括るしかないだろう
「…俺だって…す、好きだ、よ…」
顔がさらに熱をもつのを感じる。だがこいつの反応はなく、こいつを見ると、顔を真っ赤にして固まっていた。
「なんでお前がそうなってんだよ」
「いや、その、意外に恥ずかしくて…」
そういうこいつ。
つられて恥ずかしくなったじゃねぇか!!
それと…
チラリと彼女を盗み見る。真面目な彼女のことだ。盛大な舌打ちでもかますのではないかと思っていたが、頭を抑えて馬鹿でかいため息をついている。そして手を挙げて先生を呼ぶ。
「どうしました?」
「砂糖吐きそうなんで保健室行っていいですか?あと胸焼けして」
「?」
え、どゆこと?
そんな視線を向けていると、彼女が俺らを見てこう言う。
「目の前でいちゃつかれたので」
彼女の一言に女性陣らの悲鳴が上がる。
「じゃ、そう言うことなので」
足早に彼女が教室を出る。そして悲鳴を聞いて駆けつけた他の先生たち。
俺らは学年主任に呼び出された。
「青春するのはいいけど、時と場所を選びなさいよ」
初めて言われたよ。こんなこと!!