失態合わせた手と手の間で爆発が起きた。衝撃と痛みにグラディウスは目を白黒させたが、小さな手を決して解かない。
第一に、ここが敬愛する若の部屋だから。掃除の役を任されている身なのに金属の破片をばら撒くわけにはいかない。第二に手の中で四散したイヤリングは、昨夜、若のもとへ訪れた女のものであるのが明白だからだ。
ソファの足元で光ったそれを拾って、眺め、持ち主に思い至ったときにはもう止まらなかった。無意識に発動したパムパムの能力でイヤリングがぷくりと膨れ上がり、反射的に両の掌で包み込んだのである。
やってしまった!
焦りと羞恥、痛みと混乱。能力の制御を難しくさせる感情ばかりが身体の内側で爆ぜる。箒やバケツも放ったらかしのまま、次に取るべき行動を考えつく間も無く、手の中で破片のひとつひとつが再び膨張していく。
「グラディウス」
不意に呼びかけられ、振り返る。部屋の主は跪き、グラディウスに視線を合わせた。
「どうしたんだ? 座り込んじまって……」
囁く声はいつも、耳をくすぐり、それでいて心臓に触れられているような心地がする。グラディウスは、静かに手を開いた。破片は元の姿を取り戻し、血に濡れた掌の上でキラキラと光っている。