弟の心、兄知らず不死川実弥と不死川玄弥は実の兄弟である。しかし、それ以上の関係でもある。世間で言うところの恋人が一番近い言葉かもしれない。決して許されるものでは無いが、法律や他人の目よりも自分達の生き方と気持ちを選び、共に公にすることはなくとも今の関係に満足していた。
そう、決して公にはしていないのだが。
ソファに座りながら、実弥と玄弥は目下の人物達を見下ろしていた。いつになく真剣な顔をしているのは三番目と四番目の弟達、就也と弘だった。床にわざわざ正座をして、下を見たり左右を見たりお互いを見たりと視線が忙しなく動く。そんな二人につられて玄弥も少しそわそわしているが、実弥の方はどっしりと落ち着いた態度でコーヒーを啜っていた。二人から『話があるので聞いて欲しい』と言われた以上、あくまでも実弥から話を振ることは無い。大方、何か悪さをしたか取り返しのつかないものを壊したのだろう。素直に謝るのなら許してやる気持ちを持って、二人の言葉を待つ。
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