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    nekotakkru

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    nekotakkru

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    メイドラゴンパロ

    #実玄
    mysteriousProfundity
    #さねげん
    Mysteriousprofundity
    #腐滅の刃
    sink-or-swimSituation

    不死川さんちのお仕え竜大抵のことには動じず、常に冷静に迅速に対処する。それが不死川実弥の信条だった。しかし、今目の前に起きた現象にはただただ唖然と、目を瞬かせるしかない。

    『やっと見付けた、兄貴!』

    嬉しそうな声音は一体どこから出しているのか、目の前の陶器のように白く鋭い歯牙が覗く口からは想像もできない。アメジストを散りばめたような鱗が巨大な体を覆い、雲を突き抜けんばかりの角は何百年と育った大樹のように見える。頭から背中にかけて伸びる漆黒の鬣が、不釣り合いに穏やかな風によって靡いていた。鱗よりもやや色素の薄い瞳が実弥を捉えている。そこに敵意はないが、宛ら『獲物を前にした肉食獣』のような表情が伺えてしまっては油断出来ない。


    ゲームや御伽噺で出てくるようなドラゴンが、そこにいた。


    相手を刺激しないように、努めて緩やかに自身の頬に手を伸ばす。僅かに摘んで引っ張ってみればピリッとした痛みが走った。夢じゃない。

    「その、」
    『ん?』
    「立ち話もナンだから、中入るかァ?」

    返事は地面を揺らすような咆哮で返された。










    ーーーーーーーー

    「いやぁ、あれから兄貴の家探すのに随分苦労したよ。こっちの世界って、俺が歩いただけですぐ壊れるからさ」
    「……。」
    「俺もちゃんと、兄貴にどこ住んでるか聞いとけばよかったんだけどね。あ、でも匂いはちゃんと覚えてたから、こうして追いかけることが出来たんだけど」
    「……。」
    「もしかしていきなり来たから驚いてる?ごめん、俺、人間との連絡手段もってなくて。兄貴テレパシーとか使えたりする?」
    「……。」
    「兄貴?どうかしたの?」
    「いや服ゥ!!!!」

    目の前を歩く男は細身ではあるものの引き締まった筋肉にスラリと伸びた長身。目つきは悪く、加えて刈り上げた頭は鬣だけを残しどこまでも凶悪だ。極めつけは全身隈無く古傷が走っている。そう、足のつま先から、それこそ普段目にしない箇所全てにおいて、余すことなく見せつけられる。

    「服がどうかした?」
    「着ろよ!なんで全裸なんだよ!」

    目前の男が恥ずかしげも無く実弥を見つめ返す。いくら自身の物を見なれているとはいえ、他人の局部を凝視する趣味はないと目を逸らす。


    思わず招いたものの、どう見ても家の中には入らないドラゴンの大きさに、一瞬沈黙が落ちる。気まずさに頬を掻く実弥に『ちょっと待って』と声をかけると、ドラゴンは眩く光り出した。光に目が慣れる頃には目前に全裸の男がおり、慌てて引っ張りこんで今に至る。


    このままでは話が進まないと、すぐさま寝室に引っ込み無造作に掴んだ服を男に渡す。それでも尚、不思議そうな目を向ける相手に言葉にできない感情を飲み込んで服を着せた。体格は昔ながら鍛え上げた実弥の方がいいらしく、多少大きいようにも見える。しかし腕や足の袖は男の方が長いらしく、若干足りていないようでもあった。

    「ああ、服か!そういえば人間は布や鉄を纏って身を守るんだっけ」
    「いやまぁそれもあるが、それだけじゃねェだろォ。倫理的に」

    疲れた様子で実弥が返す。落ち着くために椅子に腰かけると長々と息を吐いた。向かい合うように男も床に座る。期待を込めたような視線を向けられるがどうにも居心地が悪いので椅子に座り直すように促す。

    「で。えーと、てめぇは…」
    「『てめぇ』じゃなくて、兄貴が名前つけてよ」
    「は?」
    「俺のこっちの世界での名前。本当の名前もあるにはあるけど、人間には発音しにくいからさ。兄貴の呼びやすい名前つけて」
    「いや、待て待て待て。そもそも俺とお前は初対面だろォ?なのにいきなり名前なんざ…」
    「初対面じゃねぇよ!昨日の夜、裏の山で会っただろ!?」

    昨日、という単語に頭がつきりと痛む。痛みに耐えるように腕を組んで意識を集中させ、なんとか昨日の夜のことを思い出そうと唸る。あ、と声を上げると向かいの男は表情を明るくさせた。



    昨夜。上司に押し付けられた仕事を片し、アルコールと呪詛で憂さを晴らしながら帰った道中。まっすぐ帰るのも面白くないとふらふらと獣道を進んで行った先、広がる高原にさらに一山できていた。公園の遊具ほどの大きさのその山は、月明かりに照らされるとアメジストを輝かせながら確かに実弥と目を合わせた。敵意と脅えの滲んだ瞳、低く唸る喉、剥き出された牙。紛れもないドラゴンの姿。
    常人であれば震えながら逃げ出すだろう。だが、その時の実弥は酔っていて、その上機嫌も悪かった。ギロリと睨み返すと有無を言わさずドラゴンの左頬を殴りつけた。突然の衝撃に、吹っ飛ぶことは無かったがドラゴンは目を白黒させて実弥を見やる。大股に近付くと実弥は主従関係を分からせるようにドラゴンの目を覗き込んだ。

    「何ガン飛ばしてんだァ、たかがデカいだけのトカゲがよォ…!喧嘩なら買うぞコラァ…!」
    『え、ちょ…!?』
    「こっちは塵のせいでイライラしてんだァ!縮こまってねぇでかかってこいやァ!!!」

    そこからは一方的な暴力の嵐だった。たかが人間一人の腕力だが、力いっぱい殴る蹴る、それもわざと鱗の少ないところを狙われてはドラゴンも堪らないとそうそうに白旗を上げた。しかしそれでも実弥の猛攻は止まらず、終いには拳だけでなくどこから持ち出したのか太い木の棒を振り回していた。一頻り暴れた頃にはすっきりしたのかドラゴンの上に座り込み、身の上話を聞いていた。内容こそ覚えてはいないが、ただ一つ言い切った台詞がある。

    「んだてめぇ、じゃあウチに来るかぁ?」







    「ーーー……言ったなァ」

    首がちぎれんばかりに男が頷く。その一言が如何に嬉しく、自分に救いを差しのべてくれたのかを朗々と語る男に対し、実弥は自分の失態にただただ肩を落とす。
    いつしか同僚に、『男らしいのは結構だが誰にも彼にもその態度はどうかと思う』と告げられた言葉が身に染みて分かる。ましてやドラゴンとはいえ、酔っ払いの一方的な暴力被害者とあれば申し訳なさで穴があったら埋まりたい。

    「それで、その言葉を信じて今日からここに住む、と。その腹づもりで来たんだな」
    「うん!俺、一生懸命兄貴に奉仕するよ!」
    「その……。俺が悪ぃのはよく分かったんだが、今回の話、なかったことにしてくれねぇか」
    「えっ…」
    「酔っぱらいの戯言だったんだよ。なんの責任も考えず誘って悪かった。本当にすまねぇ」

    深々と頭を下げて歯を食いしばる。殴られる覚悟はあったため、目を瞑り拳が飛んでくるのを待つ。ところが男は手を上げるどころか静かに肩を落とすと、力なく笑った。

    「気にしないで。俺、独りは慣れてるから」

    ぺこりと頭を下げて立ち上がる。項垂れるその背中に罪悪感が募るが、ここで優しい言葉をかける訳にはいかないと心を鬼にする。
    仮に、一緒に住んだとしてこのドラゴンが人を襲わない保証は?それを止めるだけの力は?片時も目を離さない時間の確保は?どれもが不明瞭で不明確だ。人の生死に関わる生き物を簡単に傍に置くほど、自分は責任を負うことが出来ない。
    言い訳にしかならないが、実弥はそう結論づけてドラゴンを見送る。時間、という単語にふと時計に視線をやれば実弥の全身から汗が吹き出した。

    「じゃあ…」
    「ま、待てェ!てめぇ空飛べるか!?」
    「ぅえ!?そ、そりゃあもちろん…」
    「頼む!俺を会社まで送ってくれ!」

    就業開始時刻まで残り十五分。いくら上司に文句があれど、社会人として遅刻や無断欠勤をする訳にはいかない。焦りから思わず男に声をかけると、相手は花が咲いたような笑顔を向け、喜んで答えた。





    ーーーーーーーー

    「っおおおおおお!疾えぇなぁ、おい!!!」

    轟々と風を切りながら空を翔る。靡く鬣にしっかりと掴まりながら、あまりの疾さに実弥は思わず口角を上げ叫んだ。風によって消されると思われた言葉はしっかりとドラゴンの耳に届き、嬉しそうに喉を鳴らす。乗り心地は決して良くない背中だが、それでも実弥を気遣っているのか荒々しい飛び方をしていない。まるで風と一体になるような心地に、日々の鬱憤も吹き飛ばされるようだった。

    「……なぁ」
    『ん?』
    「……いや」





    程なくして会社に着くと、名残惜しみながら実弥は背を降りた。ドラゴンの姿は屈折と次元の魔法をかけているらしく、要約すると触れることは出来るが姿を見ることは出来ないらしかった。
    『兄貴だけは特別』そう言って見せてくれた嬉しそうな表情も、次第に暗く沈んでいく。大きな体を随分と縮こまらせながら、ドラゴンはじゃあ、と声をかけて空を仰いだ。

    「玄弥」

    街の騒音に消されないよう、はっきりと実弥の声がドラゴンを呼び止める。呼ばれたドラゴンは目を見開き、聞き間違いかとおずおずと振り返り実弥を伺った。今度は間違いなく、目を見据えて名前を呼んでやる。

    「玄弥」
    『兄、貴…』
    「今からこれがてめぇの名前だ。出来るだけ早く帰るから、ちゃんといい子で待ってろよォ」
    『じゃあ…!』
    「うちに来い。玄弥」

    目を細めながら手を伸ばし、慰めるように鼻先を撫でる。ドラゴンの薄いアメジストの瞳は、水分の膜を張って今にも零れ出しそうだった。もう一度名前を呼んでやると、喜びに満ちた返事が地面を揺らした。











    帰宅後、長身で筋肉質な男がメイド服を着て出迎えてくれるのを実弥はまだ知らない。











    ──────────────────
    オマケ与太話

    【帰宅後】

    「地獄かここは」
    「おかえり兄貴。帰ってくるなりへたり込むなんて、よっぽど疲れたんだな」
    「仕事もだがてめぇだよ。なんだその格好。なんでメイド服だ」
    「人間は位の高い人間に仕える時はこの格好をするんだろう?それに人間の男はこの姿を見ると興奮して元気になる、て俺の知り合いが教えてくれた。」
    「その知り合い連れてこい。倫理ってもんを叩き込んでやる」
    「兄貴は元気でねぇの?」
    「元気も何も、野郎じゃあなァ…」
    「やめた方がいい?」
    「…………………クラシックタイプなのは評価してやるよォ」





    次第に見慣れてきて違和感をなくす実弥





    【呼び名】

    「気になってたんだが、なんで兄貴なんだ?」
    「何が?」
    「別に名前で呼べばいいだろォ?実弥って」
    「そんなっ!名前なんて簡単に教えちゃダメだよ兄貴!名前を呼ばれたら魂を掴まれて永遠にそいつの下僕として服従しなくちゃいけなくなるんだから…!」
    「現時点で俺はお前を恐怖の対象として見る。近寄んじゃねぇ」
    「俺は兄貴にそんな酷いことしねぇよ!でもまぁ、そんな訳で名前は簡単に呼んじゃダメだろ?だったら愛称で呼ぶしかないなって。俺、こっちの世界の書物沢山読んでこの呼び方見つけたんだ!」
    「………ちなみに何読んだんだ?」
    「チャン〇オン」
    「チャン〇オン」




    後に玄弥はジャ〇プ派になる




    【呼び方②】

    「兄貴は、なんで俺に玄弥って名前付けたの?」
    「ん?あぁ、昔のな。可愛い弟分の名前なんだ」
    「え、もしかしてそいつ、もう……」
    「ああ。とっくに、な」
    「ご、ごめん。俺こういう時、どうしていいか分からなくて」
    「気にすんなァ。あいつは安らかに逝けたんだからな」
    「兄貴……」
    「老衰だったから天寿を全うしたんだろうな」
    「…………ん?老衰?」
    「ああ」
    「弟なのに?」
    「弟じゃなくて、弟分な」
    「は?」
    「前の玄弥ってのはァ犬だからな」
    「犬!?」
    「ああ」
    「俺犬から名前貰ったの!?何だそれすげぇ屈辱的!」
    「なんだと。いい名前じゃねぇか、玄弥」
    「そうだけどそうじゃねぇ!」
    「心配しなくても、てめぇもちゃんと面倒見てやるよ。弟分二号として」
    「嬉しいこと言われてる気がするけどなんかヤダ!!!」




    本当は『ゲン』だけど、自分の一文字をあげたのは内緒




    【会社】

    「………………上司コロス」
    「任せて!」
    「いや、半分冗談だァ。てめぇがやったら洒落にならねぇ」
    「俺にそこまでの力はないよ。せいぜいこの辺一体を火の海にするぐらい」
    「俺とお前はどうにも常識に差があるなぁ」
    「そう?んー……。じゃあ呪いは?」
    「呪い?」
    「少しなら俺できるよ。『目玉が徐々に飛び出して落ちる呪い』『体が腐ったまま生きる呪い』『くしゃみする度に骨が折れる呪い』」
    「いやぁ…」
    「『少しずつ体毛が退化していく呪い』」
    「それだ!!」




    後日、トイレで頭頂を気にする上司を見て小さくガッツポーズする




    【来たばかりの頃】

    「玄弥、なんか好きなものあるかァ?」
    「玄弥、欲しい物あったら言えよォ」
    「玄弥、疲れてねぇか?家のことは俺がやるからお前はテレビでも見てろよォ」
    「玄弥、風呂湧いたから先入れェ」





    「兄貴さ」
    「あん?」
    「なんかやたら優しくない?」
    「そうかぁ?」
    「そうだよ。今だって俺の鬣乾かしてくれてるし。元々は俺がお世話する予定だったんだけど」
    「いいんだよォ。黙って世話されてろォ」
    「もしかして酔っ払って俺のこと殴ったの気にしてる?」
    「………………………………………………。」
    「そんな気にしなくていいよ。人間に殴られたり殺されそうになるなんて日常みたいなもんだったし、仲良くなれたと思ったら食事に毒仕込まれたりさぁ。俺、腹が頑丈だから助かったんだけど」
    「………………………………………………。」
    「ああでも、手足縛られて槍やら銃剣やらで滅多刺しにされた時はさすがに死を覚悟したなぁ。よく生きれたよなぁ、俺。あはは」
    「………………………………………………。」
    「あ、でもたまーに子どもが同情してさぁ、俺にパンの欠片恵んでくれたりするんだよ。自分だって食べるもの少ないのにさ。だから俺、人間は嫌いだけど子どもは好きなんだよなぁ」
    「………………………………………………。」
    「もちろん兄貴も好きだよ!…あれ?兄貴、泣いてる?」
    「………………………………………ナイテネェ」




    子どもと動物ものの映画に弱い実弥




    【食べ物】

    「兄貴、今日は何食べたい?」
    「…………肉以外」
    「えっ!?」
    「毎日毎日、肉肉肉。いい加減飽きたし胃がもたれる」
    「なんで!?肉美味いだろ!」
    「美味いがたまには魚が食いてェ」
    「そんな……。鱗を剥がしたり毒を抜いたり骨を柔らかく煮たり、こんなに試行錯誤して練習してるのに」
    「待て待て待て。鱗ってなんだ」
    「俺の鱗、ちょっと硬いから」
    「……食わせたのか」
    「まだ」
    「まだ!?」
    「これは特別な日に食べてもらおうかと」
    「食わせんじゃねぇ!そもそも自分を食ってもらいたいってどういう事だァ!」
    「俺の身も心も兄貴のものだから、全部を使って恩返ししたい」
    「気持ちだけ貰っといてやる」
    「じゃあ何が食べたいんだよ?」
    「んー……。玄弥の好きな物は?」
    「兄貴」
    「そうじゃなくて」
    「あるにはあるけど、こっちの世界にあんのかな」
    「言うだけ言ってみろォ」
    「毒々しい緑に、血を混ぜたような赤い中身をしていて、中に虫みたいな小さな粒が沢山あって、全体は稲妻みたいな模様が走ってるんだ。しかも、気候や地域の関係でなかなか手に入らない幻の食物って言われてる」
    「なんだそりゃあ。そっちの世界だけの食い物か?」
    「人間たちは『スイカ』て呼んでて…」
    「五分待ってろォ。用意してやる」
    「え……えぇ!?そんな簡単に!?」

    ーー五分後ーー

    「何これ」
    「スイカバー」
    「スイカ……なの?」
    「夏になったら食わせてやっから今はこれで我慢しろォ」
    (!………それまでいてもいいんだ)





    この後スイカバーにハマって買い貯める



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