正体は?
なんだこれ
夢?
いや、寝汚いのは悪魔くんの方だ。正体の分からないものが腹の上に乗っかっていて、朝日が眩しかったのか、読みかけの新書を顔に乗せて寝ている。怠惰極まりない。
「悪魔くん、起きて!」
特定の相手にしか使えない魔力の消費量が少ない力を使い、悪魔くんを起こす。
「メフィスト·····ぼくはさっき寝たところだ」
地獄から甦った死者みたいな声だ。さては昨日から何も口にしてないな。
「素直に起きて、腹に乗ってるやつについてなんか分かることがあったら言えよ。八幡のラーメン行こう」
「朝からか?」
「もう、昼だわ」
「あ?·····ぬいぐるみだよ。みおの忘れ物だ」
「さっき動いたぞ!?」
「夢でも見てたんじゃないか?ほら、こっちがメフィストだと」
ぽい、と投げられたそれは手のひらにおさまるくらいのふわふわしたぬいぐるみだった。
「器用だなぁ、みおちゃん」
「答えたぞ」
「動いてる!!なんかウゴウゴしてる!」
「本当だ、動いてるな。
ああ、こいつのせいか」
悪魔くんは机に所狭しと並んだ本の間から、物入れのようなお香入れの様な物を取り出した。それは銀細工で、花、鳥などがあしらわれていた。
「満月の夜にコレで香を立てると、魔力を取り込んで無機物に仮初の魂を入れることができる。しばらくの間、Johnに見張りをさせようと思ったんだが」
「悪魔くん·····家賃は払う方法考えて欲しい」
俺の手から脱出したフワフワは、また悪魔くんの方に行った。もうひとつのフワフワにくっついている」
フッと悪魔くんが珍しく笑った。
フワフワは、俺と悪魔くんの顔をしていた。