義家族でバレンタイン「おじさん、こっちの箱全部売れたよ」
木箱を重ねながら店の中に声をかける。
毎年この時期、バレンタインなる日が近付いてくるとどこの甘味屋も人手が足りなくてめちゃくちゃ忙しくなる。だけどそんな時こそ日々アルバイトで生計を立てるぼくら姉弟にとっては、絶好の稼ぎ時なわけで。
「おぉ!ありがとうよ!」
「おっちゃん、こっちも完売!」
飛ぶように売れて大満足なのか、満面の笑みで駆け寄ってきたきりちゃんから木箱を受け取って片付けていると、店主が「いや~助かった!」と朗らかに笑いながら店内から出てきた。
「あお衣ちゃんもきり丸くんもご苦労さん!今日はもうあがっていいよ、これバイト代な」
「まいどあり!」
「ありがとうございます」
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