カインの生き様と理想について カインの理想の原点は七歳の時、一人の少年が理不尽に命を奪われるところを目撃したことでした。単なる憂さ晴らしで複数人からリンチを受け、無抵抗でやり過ごそうとした少年。耐えていれば終わる……そう思って戦わず命を落とした少年。それは自分だったかも知れない——カインはそう思ったのではないでしょうか。海の見える丘に手厚く葬ったのは、その少年であり、自分の弱さだったのでは。そう私は思いました。
「こんなところで朽ち果てるなんて……俺は嫌だ!」
それは命に貴賎のあることへの純然たる怒りで、同時に、カインの燃えるような生命のきらめきが生まれた瞬間であったように思えます。
カインにとって「足掻く」とは「生きる」ことそのものを指すのでしょう。だから年相応の落ち着きを見せるテリーやビリーに対し、落胆の気持ちを隠しきれないのだと思います。あの“伝説の狼”テリー・ボガードや、「歩く凶器」と呼ばれた“帝王の右腕”ビリー・カーンでさえ、足掻くのをやめるのか、と。同時に自分もいつかそうなるのだろうかと疑問を持ち、「いや、俺は違う」と、決意を新たにするのだと思います。カインの中にはずっと、あの日葬った少年と、自分の弱さ、黙って陰から見ていることしか出来なかった無力さ、その屈辱が、身を焦がす程の熱量で渦巻いているのだと。
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