淡いプロポーズ 何度目かの、春の知らせを告げる桜の花びらが風に舞う。丁度窓を開けていたからか、桜の花びらがふわり、と中に入り床に落ちる。窓から外を見ると、桜並木が綺麗なピンク色に染まっていた。今、お花見すると気持ちの良いものになるだろう。ぼんやりと窓を眺めている理人に対して、自称真白情報屋の秘書だと言っている九子が鼻血を出しそうな勢いでカメラを向けていた。
「風に舞って花びらが理人様の周りに……素敵ですわ!」
そう言った後、パシャパシャとシャッター音が聞こえる。お前、それ夕日が綺麗な日でも似たような事を言っただろ、と理人は呆れつつチラリと九子を見た。
彼女が高校を卒業した次の日、突然この事務所にやってきたのだ。突然来るのは慣れていたが、彼女から自分の秘書になると言った時は猛反対した。自分はただの情報屋ではない、妖や幽霊関連の事もしている。それらに対して、力も何も無い彼女が踏み込んでいい領域ではなかったからだ。
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