出した答え「お前、聞いてなかったのか? 猫柳、辞めるって」
誰から聞いたのか、そんなことよりも、凪は頭をガツンと殴られたような衝撃が走った。自分の上司である八重が辞めると? 凪は体が勝手に動き、創務省内の廊下を走っていた。時刻はとうに定時を過ぎている、まだ施設内に八重がいるか分からなかった。
あてもなく走っていると、見覚えのある背中が見えた。よかった、まだ帰ってなかった。凪はその相手───八重を引き止めた。
「八重さん、辞めるって本当ですか」
嘘だと言ってくれ、凪はそう思っていた。冗談だ、と笑って話してくれ。けれど、凪の耳に聞こえたどこから聞いたんだが、の八重の言葉に息が詰まる。本当に辞める気なのだ、と改めて実感した。
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