冬星は目の前にいる人物に辟易していた。目の前にいる人物から顔を合わせる度に、自分の娘と見合いをしないかと言われるのだ。最初は突然の事で理由を聞いたところ、どうやら街で冬星が一度助けた女性が、その相手の娘だったらしく、いわゆる一目惚れとの形で相手に頼んだらしい。丁度軍服を着ていたからか、すぐに冬星が軍関係の人物と分かったらしい。
最初の時はもちろん断った。自分には婚約者がいるとはっきり言ったのだ。婚約者とはもちろん、美鶴のことだった。それで折れてくれるだろうと思っていた冬星とは裏腹に、今もこうしてしつこく言われている。自分が誰と婚約者なのか、知っている人がいると思っていたからこそ、相手が知らない様子にそっちの方が驚いてしまった。
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