限定家族ごっこ(仮)人付き合いの苦手な一松と十四松と言えど、他人との交流が全くないわけではない。
一人ならいざ知らず、連めば怖いものなしの傾向のある現金な二人にはそこそこ心許せる知人が何人か存在している。
そのうちの一人で、稀少な異性の知り合いである老婦人は、散歩の度に顔を合わせていて、ひょんなことから縁が生まれた。
彼女には一松と十四松のように必ず連れがいた。連れは大変可愛らしい、まん丸でコロコロ動くヤンチャなポメラニアンと、ややぽっちゃり目の太々しい顔つきをしたボストンテリアなる犬っころだった。
その犬たちがあわや車道に飛び出すところを助けたことを切っ掛けに、二人は老婦人と言葉を交わすようになった。
そればかりか助けられたことが分かっているのか、犬たちに大層懐かれるようになった。
7439