My Breeze「憂太いつでも皆殺しできる力持っちゃったね」
あの日を思い出す程のうだるような暑さと、ジージーとうるさく孤独に鳴き叫ぶ蝉の声が頭に響く。ああ、最悪な言葉を言ってしまった。この夏に頭がやられてしまったのか。冗談で済まされないことは自分がよく分かっているのに。
何を言ってるんだと目を見開いてこちらを見る憂太に、引かれたかなと反省をする。こんな顔されるようなことをお前は聞いてきたんだぞバカ傑め。
心の中で親友に悪態をついていると、憂太はまあそりゃ強くなった自覚はありますけどと、顎から滴り落ちた汗を拭ってから自分の手を見つめた。
「でもしないですよ。したくないですもん」
「先生だってそうでしょう」
自分の体を穏やかな風が通り過ぎたのように感じた。じわじわとした熱い空気を和らげるかのように、その声は柔らかく、優しくて深い音をしていた。
547