猫の少し特別な朝 意識が浮上した瞬間から、腕の中に心地いい温度があった。料理当番になることが多い司くんなので、平日の朝に、目覚め一番で彼の存在をこうして堪能できる機会はそう多くない。思わず腕に力を入れて、すうすう寝息を立てる彼を抱きしめたら、暖かくて、鼻の奥が少しじん、とした。
窓側に寝てもらっている彼の頭上を越えて、枕の隣に置かれた彼のスマートフォンを拝借し、時刻を確認すると、起床時間までまだまだ余裕があった。ならば、と、黄色いカバーのそれを元の場所に静かに戻してから、曙色に染まったような毛先に、頬を擦り付けた。
小さく開けられている窓から流れ込んでいる朝の空気と、司くんの匂いを一緒に吸い込み、また一つ違う印象の彼を覚えられて、宝物を見つけた子供のように胸が躍った。
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