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    ousakarn_

    @ousakarn_

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    DOODLE弟へ ピアス買ったよ オニイチャンより「ピアス、買ってやるよ」

    そうは言ったものの、あれの趣味を把握しているわけでもなく、そのためだけに外へ出る時間が取れるわけでもなく、ずるずると半月ほどが経過していた。「ねえねえピアス何時買ってくれんの」などという催促のひとつもはいるかと思いきや、あの日以来ピアスの話題を出してすらいない。ファーストピアスをつけたままにしているあたり、開けた穴を塞ぐつもりはないらしいが。
    客先からの道すがら、そんなことを考えながら歩いていると1軒のアクセサリー店が目に留まる。派手な主張のない店構えで、店先に展示された商品の値札を見るに、少なくとも流行に敏感な若年層をターゲットとした店でないことがわかる。
    次の客との予定まではまだ時間があったはずだ。手帳を開いて問題のないことを確認した肇は、コツ、とひとつ軽やかな音を鳴らして、アクセサリー店の中へと向かった。

    店内に入ってひとつひとつを眺めていくと、やはりそういった客層を意識しているのか、いずれも年齢や性別を問わないようなシンプルなデザインのアクセサリーが並ぶ。そんな中、この店に置かれるには些か浮いた雰囲気の、しかし肇の気を引くには十分なものがあった。
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    DOODLEオニイチャンも割とふつうの人間ですの話「…………手酷くしてよ」

    熱を孕んだ声が耳元に落とされる。
    耳をなぞったり、甘噛みをしたり、指を絡めてきたり、それから服の上からでもわかる程度には存在感を持ったそれを下腹部に押しつけるように腰を擦りつけてきたり、どうにも常に比べて様子がおかしい。
    これはもしや、と思いながらも「熱でもあンのかよ」と問うてみれば、やはり首を小さく横に振った。

    ――法律事務所の秘書という仕事は、そこらの会社員のように決まった就業時間があるわけでもなければ繁忙期や閑散期といった波があるわけでもない。少なくとも、灰島肇が身を置く灰島法律事務所では。それは代表とその秘書が同時に父と子という関係性を持つからかもしれないし、あるいは灰島が扱う案件の特殊性によるものかもしれない。
    仕事とは、他人に主導権を握らせることを良しとしない肇が手綱を握ることを諦めた、数少ないもののひとつなのだ。

    ……そんなことはさておき。
    このところ面倒な案件を立て続けに抱える羽目になっていた肇は、それを知る由もなく普段と変わらないテンションで家を訪ねる鬼頭彰人に、かと言って「忙しいから来るな」と言うのもその後の反応を考えると面倒だしなと 1181

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    DOODLEうちよそ(北松とむらと椥辻左京)
    役はあくまで役なのか、中の人とは切り離せるか。オタクの課題ともいいますね
    何度目かの椥辻の家。
    私物なんだか持ち込まれたものなんだか判別付き難いものが多い部屋の一角に自分の出演作が並べられているのを見つけたとき、どことなく気恥ずかしさを感じたのを思い出す。
    状況が状況だっただけに何者でもない素の自分をさらけ出した数少ない人物だから、余計に。
    そのせいだろうか、椥辻を相手に殻を被るのが難しい自分がいる。

    ――北松とむらは、一度演じた役を忘れない。
    それらすべてが『北松とむら』を演じる上での引き出しとなるから。

    だから、椥辻の部屋に"ない"作品も、すぐに気づいてしまった。
    せめて買い揃えられた作品に傾向のひとつでもあればよかったのだろう。
    北松が主演の作品だけ、あるいは特定のジャンルだけ。そういった傾向があれば、そういうものだと納得してそれきりだったかもしれない。
    けれどそうではなかった。むしろ逆だったのだ。ある特定のジャンルだけが、置かれていなかった。

    (どっち、なんだろう)

    少なくない数の濡れ場をこなしてきた。
    相手は女性のときもあったし、男性のときもあった。いわゆる「攻め」も、「受け」も、両方した。
    そういえば不思議と、普通に女性を抱く演技だけはし 851

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    CAN’T MAKEうちよそ(灰島肇と鬼頭彰人)
    一個前のやつのオニイチャン視点
    鬼頭彰人。自分にとってあの人間は、いったい何なのだろう。

    「なあ、俺ってあんたにとって何なの?」

    ああ、まただ。
    時折、こうやって勘違いをした女のような振る舞いを見せることがある。その時は決まって『オニーチャン』として振る舞ってやれば、『弟』は満足げな顔をして見せた。
    ともすれば惚気た恋人同士のやり取りにも似たそれは、なかなかどうして、悪くないとすら感じていた。
    だから、形ばかりの兄弟を演じることに、いつしか慣れきっていたのだ。危ういバランスの上で成り立つそれの脆さから、目を逸らしながら。

    「は?カワイイ弟だろ」
    「そーいうことじゃなくてさ」

    終わらなかった問答に、はたと仕事の手が止まる。続く言葉がどうしようもなく己をかき乱すことを予感していたかのように。

    「オニーチャンじゃなくて、灰島肇としてどう思ってんの、って」

    気付けば鬼頭彰人を見下ろすようにして立っていた。「……え?」と怯えた目で見上げるその顔が、どうしようもなく思考をかき乱していく。
    今更『オニーチャン』以外を求められるなど、思ってもみなかった。わかっていてこちら側には踏み込んでこないのだろうと。どうやらそうでは 1025

    ousakarn_

    DONEうちよそ(灰島肇と鬼頭彰人)

    すけべの次に"終わり"を書くの、情緒の振れ幅でバカになりそう

    元ネタ診断メーカー
    https://shindanmaker.com/878367
    灰島肇。人として大切な何かがすこんと抜け落ちたような男。そんな人間の心の隙間に見えたところに、自分はうまくはまり込んでいたつもりだったのだ。

    「なあ、俺ってあんたにとって何なの?」

    ソファでスマホをいじりながら、なんとはなしに口をついて出た、その問い。今にして思えば、なんと言われたかったのだろう。どんな言葉を期待していたのだろう。
    ネットを眺めていたら、たまさかそんな記事が目に入った。だから勢いで、ずっと気になっていたことを聞いてみた。それだけのはずだった。
    後先考えずに放った言葉のせいでこの男には散々な目に合わされてきたのに。甘やかされていると、彼の中に自分の居場所があると、いつしかそう思い込んでいた。

    「は?カワイイ弟だろ」
    「そーいうことじゃなくてさ、オニーチャンじゃなくて、灰島肇としてどう思ってんの、って……え?」

    即答された言葉にどこかくすぐったさを覚えつつも、聞きたいのはそうじゃないんだよなとスマホから顔を上げると、デスクに向かっていたはずの灰島が眼前に立っていた。自分を見下ろすその目は深海のように冷たく、暗い。
    明らかに灰島の纏う空気が変わっている。けれど自分には 921