至純「帰ってきてからこっち、あなたったらよくグ・ラハ・ティアの面倒を見ているじゃない? まるで兄弟のようね」
瞠目。ヤ・シュトラが何気なく放った日常に溶け込むはずの言葉がいたく鼓膜を揺らしたのは、罪悪感によるものだ。返事をする間もなく、ちょうど報告に立ち寄っていたサンクレッドがひょいと顔を出す。
「おいおい、どっちが上だ? ……といっても、実際の年齢はともかく、世話を焼いてるのはこいつだな」
「ふふ、あなたがお姉さんぶっているようで私としては微笑ましいわ」
ぽん、と気安く置かれた手も、優しい微笑みも遠くのもののようだった。息を飲む。飲む。飲む。吐き出し方を忘れる前にひゅ、と吐いて、でも、顔がうまくあげられない。「……ねえ、」困惑したヤ・シュトラの声。いけない。だって私が悪い。こんな普通の会話にうっかり動揺した私が、悪い。
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