ズズズ羹を静かに啜る音が聞こえる。
飲み込んで喉を上下させた満寵はそっと口を開いて長いため息を吐いた。器から未だ上る湯気越しにしか彼の顔が見えないが、随分やつれている、と徐晃は思った。身なりがきちんとしていないのは日常茶飯事だがいつも以上にぼさぼさの頭が目立つ。墨や泥らしきもので汚れていた衣服は着替えさせたけれども顔に覇気がないせいか草臥れて見えるのだ。目の下の隈も酷い。美味そうに食事をしているが隠し切れない疲労が表に出ている。
「気が付くと空腹だという感覚もなくなっているんだ」
部屋に閉じこもり考え事や作業に集中すると寝食やその他諸々疎かになってしまうという。徐晃にはその感覚が理解し難いものだったし、賛同し難かった。どれだけ素晴らしい策を練り罠を作り上げたとしても己の身が疲労で満ちて力を発揮できなくなってしまっては元も子もないだろうに。
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