意地悪な恋人「おやおや、また不貞腐れているんですか?」
深夜の食堂に聞き慣れた声が響く。のっそり振り返るとジャック、僕の恋人が立っていた。暴飲を咎めに来たのだろうか。
「……別に、いいでしょ」
ぷいっと顔を背けるようにしてまたグラスに手を伸ばすとやんわり手首を掴まれる。離して欲しい。まだまだ飲まないとやってられないんだから。
「一人だけ逃がされたのが余程不服だったようで」
「……そうだよ。試合に飽きた、だってさ。マリーは自由すぎる。僕らは狩られる側だろうけどさ、生きてるんだ。意思が、心がある。それでも彼女にとっては玩具と変わらないんだろうけど」
もう知っているなら誤魔化しや黙りしたって無駄だ。さっさと説明してしまった方がいい。やけくそ気味に話すとジャックの手を振り払ってグラスから酒を煽った。
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